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40話 流れ星

 そうして翌日、私は南沖島基地の格納庫、愛機、紫雲のコックピット内にいた。


『……ここで記録は途切れています、もう一度再生しますか?』


 と、シリウス。


「うん、お願い」


 正面のモニターに漆黒の紫雲との戦闘の記録が再生される。


「しっかし……改めて見るとホントとんでもないなぁこの動き」


 あれにアカネが乗っていたなんて今でも信じがたい。


『彼女なら町屋少尉ともいい勝負をしそうですね』


 たしかに……アカネならユウミさんとも互角に戦えそう。


「はぁ……」


 私は映像を止め、座席にもたれかかる。


『マスターの動きも悪くはありませんが、やはり旧型の紫雲だと機体反応に限界があります』


 確かに紫雲はかなりの旧型機。それも丙型の練習機タイプだ。


「はぁ……私もハルカみたいなワンオフの専用試作機に乗りたいなぁ」


 愚痴を溢す。まあ、ああいうのは主人公の特権なんだろう。


『XA-51は確かに高性能な試作実験機ですが、私的にはそれ程良い機体とも思えません』


 と、シリウス。


「どういう事?」


『あの機体は動きが過敏すぎます、実戦配備用に幾らかダウングレードされていますがそれでも機体反応に難アリです』


 え、初耳なんだけど……


『それに、エンジン配置に問題を抱えてます、このような点が評価を落としXA-50、試作型ピーコックとのトライアルに敗れた機体です』


 なるほど、良い所ばかりではないということか……


『ちょっとー! 聞き捨てならないわね!!』


 と、そこに突然XA-51に搭載されている支援AIリゲルの声が聞こえた。


『隣に私がいるのに気にせずディスるなんてどんな神経してるのシリウス!』


 隣……チラリと左のモニターを確認する。そこにはXA-51が。そういえば一緒の格納庫にいたっけ。


 はぁ……相変わらず騒がしい娘だなぁ、ハルカにそっくりだ。


『マスターはこの後何を?』


 シリウスがリゲルを無視して唐突にそんな事を聞いてきた。


「……ライブに向けての準備だよ」


 ライブまではあと三日、時間はまだあるがのんびりはしてられない。


「……といっても、お祭りの余興みたいな感じなんだけど」


 当日は南沖島で1番盛り上がるらしい地元のお祭りが開かれる。私達のライブはその出し物的なアレだ。


「さて、そろそろ宿舎に戻らなきゃ、じゃあねシリウス」


『はい、お疲れ様でしたマスター』



『ちょっとー! 無視しないでよー!』



〜〜〜〜〜〜〜



 そうして、格納庫を後にして私は宿舎に戻る。


「あっつ……」


 太陽から降り注ぐ日差しが厳しい。まだ6月だというのに、さすが南国の島は気候が名古屋とはまるで違う。


「海入ったら気持ちいいだろうなぁ……」


 宿舎の目の前のプライベートビーチ。どうせならあそこで遊んでみたいなぁ、でもそんな暇ないか……


 そんなことを考えながらとぼとぼ歩く。



「ただいま〜……」


 ふぅ……宿舎は冷房が効いてて涼しい。



『来月末に来日が予定されているエメリア王国の第二王女……』


 テレビつけっぱなし……てか誰もいないんですけど。


 私はテレビを消し宿舎内を回ってみた。宿舎は見事にもぬけの殻であった。みんな一体何処に行ったのだろうか。


 窓からビーチの方を覗いてみた、するとそこにはアカネを含めたメンバー全員が揃っていた。私は宿舎を出てビーチに向かう。


「あ、マイちゃーん!」


 ハルカがブンブン手を振りながら私の名前を叫ぶ。


「みんな何してるの?」


 私はみんなの元に歩いて行った。


「うん、すごーく重要なことを話してたの」


 重要なこと? 一体なんの事であろうか……


「ユニットの名前ですわ」


 さらりと答えるエリナ、ユニットの名前……そういえば今までずっと放置してた。



 第一独立試験小隊(仮)



 これが今の私たちのユニット名。初ライブからずっとこの名前を使っているけど流石にもうそろそろ、まともな名前に変えたい。


「うーん……中々思いつかないわね」


 砂浜に座り込み唸るジェイミー。


「マイちゃんは何かいい案ない?」


 と、ハルカ。


「……ごめん、全く思いつかない」



 そうして、私達は議論に議論を重ねた。いつしか私達の周りには木の棒で書いた名前の候補だらけになっていた。


「うーん、これといってしっくり来るのがないわね〜」

 

「だね……」


 結局、ユニット名は決まらず、三日後までの宿題となった。何かぴったりな名前が思い浮かぶといいのだが……


 その後は歌とダンスのレッスンを行った、今一度ライブで歌う曲の確認。詳細な振り付

け。などなど……




 そして時間は流れていった。


 ライブ二日前、この日は午前中は練習。午後はアカネを含め小隊のみんなでビーチで遊んだ。残念ながら水着を持ってきていなかったので海に入って本格的に遊ぶなどは出来なかったがそれでも十分楽しめた。


 そしてライブ前日、この日はお祭りの設営をお手伝いしたり、前日の最終確認をしたりで忙しかった。夕方から最後のレッスンを始め、時間もそこそこで切り上げ、地元の人から聞いた小料理屋で夕食を取ることにした。


「で、結局誰かいい名前思い浮かばないの?」


 と、ジェイミーが。


「……ひとつあるよ」


 ハルカがボソリと呟く。


「最初に私たちで作った曲をそのまま名前にしちゃうってどう?」


 と、彼女は自信満々げに提案した。


 最初に作った曲……"Shooting Star!!!"。流れ星か……


「……あれ? 結構悪くないかも」


 何となくしっくりくる。


「まぁ、いいんじゃないですの?」


 と、エリナ。隣にいたアカネは「なんかカッコいい!」とはしゃいでいた。


「まさしく灯台下暗しってヤツね……」


 ジェイミーは感嘆の声を上げる。



 そうして、私達のユニット名も決まった、明日は本番。エリナが加わってからは初めてのライブだ。


 気合を入れていかなければ……

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