表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/67

39話 海の向こうの帝国

「えっと……それで、これから予定だけど」


 話題を切り替えるエリナ。


「マイの機体があんな状態だし、戦人機の訓練は無理ね」


 と、ジェイミー。私の機体はあの後、戦人機回収用の専用航空機によって回収され今は南沖島基地の格納庫にある。飛行ユニットの喪失や機体の損害からしてあの状態で訓練を行うのは不可能であろう。


「はぁ……エリナにまだ借りを返してないのに……」


 まともに狙撃が通れば絶対に勝てる……と思う。


「何回やっても結果は変わりませんわよ」


 なんだと。


「じゃあその分、ライブの準備に割けるね」


 ハルカがそう呟く。ライブまでは後三日、準備にさける時間が一日増えるのはありがたい。


「お姉ちゃん達ライブするの!?」


 興味津々な様子を見せるアカネ。


「アナタも見ておくといいですわ、私たちがどんな活動をしているのかを!」


 偉そうに胸を張るエリナ。小さな娘相手でも彼女のノリは変わらないなぁ……




 そうして、その日はそのまま次の日からの練習にそなえて休む事にした。なんだかとてつもなく大変な一日であった。


「……」


 隣のベッドをチラリと見る。ハルカはもう寝てしまったようだ。


 私は暗闇の中で天井を見つめながら今日のことを考える。やはり蒼グレとは展開が違う。ここまでも大きく相違があったしある程度覚悟はしていた事だが……


 この世界って一体なんなんだろうか。登場キャラクターとか、大まかな世界情勢とかは蒼グレそのものだけど。


「……パラレルワールドってやつかな?」


 パラレルワールド、無数に存在する可能性の世界。ここは本編から枝分かれした蒼グレとは別の世界なのであろうか。


「だとしたら詐欺じゃん……」


 あの女神……蒼グレの世界に転生させるとか言いながら微妙に違う世界に転生させやがって……!


「……だめだ、寝れない」


 考えれば考えるほど頭がこんがらがってきた。


 私はベッドから起き上がる。そういえば宿舎のすぐ目の前はプライベートビーチだったっけ。気晴らしに夜の砂浜にでも行ってみようかな。


 そうして私は宿舎を出て、ビーチに向かう。


「ん〜……夜は涼しい……」


 砂浜に座り海を眺める。夜の海は昼や夕方とはまた違った顔を見せていた。暗く沈んだ雰囲気……だけど月明かりで少し煌めいている。


 海も綺麗であるが、何より特筆すべきなのはこの夜空であろう。南沖島は都会と違って夜は明かりが少ない、なので満点の星空が堪能できる。


「……そういえば、ゴーストって宇宙から来たなんて考察があったような」


 ゴーストの起源について蒼グレ内で詳しく解説されたことはなかった、その辺りはぶん投げで終わってた気がする。


 でも幾つかの考察サイトにはそんな説が載っていた様な……資料集にはなんて書いてあったっけな……


「あれ、マイ?」


 ふと、後ろからジェイミーの声がした。


「アナタも夜空を楽しみにきたの?」


 私の隣に座る彼女。


「う、うん。ちょっと寝れなくて」


「まあ今日は色々合ったからね」


 どうやら例の謎の空間に飛ばされた事を言っているみたいだ。まあそれもあるんだけど、寝れないのは色々考察を始めてしまったからであって……


「この方角だと、この海の向こうには私の母国、帝国があるわね」


 と、唐突にそんなことを言うジェイミー。


「……アメリカ帝国ってどんなところなの?」


 この世界での一般的な知識は頭に入っているけど。実際アメリカ帝国がどんな国なのかはイマイチ、ピンとこない。


「良い国よ、帝国に生まれたことを誇りに思ってる、私には帝国軍人の一員としてアメリカ帝国を守る覚悟と責務があるわ」


「へえ……」


 私と四歳程しか違うのに、こうもしっかりとした考えが持てるなんて。というか普段のチャラチャラしたイメージとは大違いだ。


「……まあ、今はもっと他にも守りたいものができたけど」


 そこで私を見るジェイミー。


「えっと、ジェイミー?」


 なんだか私を見つめる目が色っぽい様な……


「えい!」


 そうして私は彼女に押し倒された……って、何で!?


「じ、ジェイミーさん!? なにをしてるんデスカ!?」


「相変わらず隙だらけねマイ」


 な、な、な、なにがどうなって……


「顔真っ赤よ? 相変わらずこういうの耐性ないわね……アナタのそういう所が好きよ、大丈夫、星の数を数えてる間にすぐ終わるわ♡」


 星の数を数える……って、それいつまで経っても終わらなくない!?



「あ、アナタ達なにをしてるんですの!?」


 エリナの怒鳴り声が聞こえる。宿舎の方を見ると彼女がこちらに歩いてくるのが見えた。


「はぁ……タイミング最悪よエリナ」


 私の上から退くジェイミー。


「ジェイミー……! あなたとうとうマイに手を出しましたわね!?」


 ジェイミーに詰め寄るエリナ。いや、未遂です、まだ手を出されてはないです。


「とうとう? この娘のファーストキスは私が貰ったのよ? 今更じゃない?」


 よ、余計なことを……!


「な、な、な、何ですって!?」


 そうして、言い合いを始める2人。どうしてこうなった……!?




 ……2人に気がつかれない様に部屋に戻ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ