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35話 夢の終わり

「……あれ?」


 意識が戻る、なんだか眠りから覚めたような気分だ。


「やっぱり夢?」


『……GPS信号をキャッチ、座標特定、現在地南沖島です』


 み、南沖島? いつの間にそんな場所に戻ってきたの……?


「すう……すう……」


 私の上にはあの赤髪の少女。覆い被さる様にして眠っている。身体の感じからして機体は仰向けになっている様だ。何故か電源が落ちていて周りを確認できないけど……


『非常用電源に切り替えて再起動を行います』


 と、シリウス。電源が落ちていても、シリウスが搭載されている中央管制コンピューターだけは生きていた様だ。


「夢じゃない……」


 再起動がかかったコンソールパネルで私は機体状況をチェックした。破損状態は先程の夢らしき体験と全く同じ、飛行ユニットも何処かに消えていた。


「なんだったのあれ……」


 モニターを確認、あたりを見渡す。どこかの砂浜のようだ。


 私の紫雲は砂浜に打ち上げられる様な形で仰向けに横たわっていた。時々波によって機体が洗われていくのを感じる、私はハッチのロックを解除、プシューと音を立ててハッチは開く。コックピット内に空からの日差しが差し込んだ。


「……はぁ、涼しい」


 赤髪の少女を傍に退かし、私は外に上がった。胸部に乗っかり機体を見渡す。腹部装甲は大きく破損していた。


「……綺麗」


 ふと海を見る。太平洋は夕陽を受けキラキラと煌めいていた。空を見る限り、作戦終了からまだそれ程時間が経っていない様だ。体感時間的にあの不思議な空間に三十分ほどいた様な気がするけど。

 

「しっかし酷いやられかたしたなぁ……」


 改めて機体を見る。腹部だけでは無くあらゆる箇所に破損が見られた。特に斬撃の衝撃をまともに受けた腕部はかなり状態が悪そうだった。


「これ……あの娘がやったの?」


 コックピット内ですやすやと眠っている少女を見る。可愛い顔してとんだ化け物だなぁこの娘。


『マイ!! 聞こえる!?』


 と、そこに通信が入った。ジェイミーの声だ。


「あ……うん聞こえるよ!」


 そして米軍機特有の甲高い排気音が聞こえてきた、コックピットを覗き込み再起動したレーダーを確認する。島の方からジェイミーのピーコックが向かってくるのが確認できた。


『アナタ今まで何処にいたの!!!』


 と、ジェイミーの怒鳴り声、かなり心配させてしまった様だ。


「ごめん……」


 素直に謝るしかなかった。



〜〜〜〜〜〜



 結論から言うと、私は一時間ほど「消えていた」らしい。帰投中、突如紫雲ごと消失。小隊のみんなやファフニール隊の皆さんが捜索を行ってくれていたとの事。その捜索中、突如南沖島東海岸に私の機体の反応が出現。近くにいたジェイミーが急行したところ私を発見したとのこと。


 その後ジェイミーと合流。彼女のピーコックに乗せてもらった、赤髪の少女も一緒だ。私の紫雲は飛行不可能状態だったのでひとまず海岸に置いてきた。


 基地に戻った私はおもいっきりハルカに抱きつかれた。エリナも少し涙目だった。なんだか本当に申し訳ない……


 その後、私が体験した全ての事を報告した、最初は「何言ってるんだこいつ」状態であったみんなだったが、機体のログには確かに漆黒の紫雲との戦闘データが残っていた。シリウスも同じ証言をしてくれた。そして何より……


「お姉ちゃんの歌また聞きたいなぁ〜」


 私と一緒にいたこの少女。その存在が私の言葉を裏付けてくれた。


「この娘……何者なの?」


 私達は今、南沖島基地の一室にいた。部屋には私とジェイミーと謎の少女の3人。


「私に聞かれても……」


 今、基地ではこの少女の処遇が話し合われている。中央にも私の不可思議な体験とともにこの少女の報告が上がっている筈だ。一体これからどうなる事やら……


「けど、聞けば聞くほど信じられない体験よね……まあ全部ログに残っているし、アナタがそんな嘘をつくとは思えないから本当のことなのだろうけど……」


 ジェイミーが少女のことを眺めながらそう呟く。


「まあ、私だって夢だと思ってたけど」


「初出撃でそんな奇妙な体験したのなんて、多分世界を探してもアナタだけよ」


 そりゃそうでしょ……


「それにしても、派手にやられたわね、この娘そんなに強かったの?」


 ジェイミーがそう聞いてきた。


「……言っておくけど私はスナイパーだから、格闘戦は専門外だから」


 と、言い訳。だって仕方ないじゃん……狙撃勝負なら勝ってた、多分。


「それにしても戦闘ログを見る限り、一方的にやられすぎよマイ」


「す、すみません……」


 説教されてしまった、やはり私はパイロットとしてまだまだ未熟だ。




 そうして暫く時間が経った。ハルカとエリナもこの部屋に合流して、私達は次の指示を待った。


一時間ほど時間が経ち……


「お待たせしてすまない」


 部屋に基地司令がやってきた。隣には……何故かステラ計画に参加している研究員さんもいた。


「結論から言わせてもらう、その娘の処遇についてだが……」


 そこで言葉を切る基地司令。


「君たち小隊に預けることが決まった」



 なん……だと……?

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