28話 トレーニング後のお風呂は最強である
その後、私たちは宿舎に戻り"Shooting Star!!!"とカバー曲の練習をした。私とエリナはあの一件以来、かなり息が合う様になっていたのでトレーニングで躓く事はなかった。
「……はい! ストップ! 今日はここまでにしましょ」
ジェイミーがパンと手を叩く。
「はーっ……疲れた」
私は倒れ込む、相変わらずジェイミーが組むトレーニングは過酷だ。
「はい、マイちゃん」
ハルカからスポーツドリンクを手渡される、私はそれを受け取りゴクゴクと飲み干す。
「ぷはぁ……」
全身にスポーツドリンクが染み渡っていく……
「汗かいた〜……お風呂入りたい……」
練習着をパタパタさせながら床に寝そべる私。
「ねえ! みんなで近くにあった銭湯に行かない?」
と、ハルカからの唐突な提案。そういえば、来る途中に銭湯があったっけ……
「いいね! エリナとジェイミーも行くよね?」
私は2人の方を向く。
「いいわね! ジャパニーズオンセン! 私も気になってたの!」
ワクワクしたテンションのジェイミー。
「わ、ワタクシもですの……?」
反対にエリナは困惑したような雰囲気でそう答える。
「いいからいいから! いこう!」
ハルカは強引にエリナの手を引いて部屋を出ていく。
「あ……ちょっと! まだ行くとは!!」
やれやれ、ああなったハルカは止められない、エリナもご愁傷様だ。
「私たちもいこうか」
「ええ、そうね!」
そうして、着替えなどを持ち銭湯に赴く私達。銭湯は宿舎から徒歩2分ほどの場所に存在した。
「いらっしゃい」
番台にいたのは如何にも熟練的な雰囲気を感じるお婆ちゃん。私達は料金を支払い女湯へと入っていく。
「なるほど……ここがセントウ……勉強になるわね」
と、ジェイミー。一体何の勉強?
そうして身体を流し、シャンプーとリンスで頭を洗い、ボディーソープで身体を洗う。トレーニングの汗をさんざん流した後、私達は湯船に入った。
「ふぅ〜……きもちぃ……」
湯船に浸かりながら私は歓喜の声を上げる。やっぱりトレーニング後のお風呂は最強でだよね。
「ふぅ、やっぱり銭湯は最高〜」
「それな〜……」
満足げなハルカ。一方でエリナは端っこの方に小さくうずくまっていた。
「エリナ〜! 何でそんな端にいるの? こっちに来なさいよー!」
ジェイミーがざぶざぶと湯船をかき分けながらエリナの方に歩いて近づいていく。
「いや……! ワタクシはここで……って! んひゃっ! 何しますの!!」
ジェイミーがエリナの手を強引に引っ張りながらこちらに連れてきた。
「んー……エリナも中々スタイルがいいわね、マイに負けず劣らず、まあ一番は私だけどね!」
ざっばーんと立ち上がり自慢の身体を惜しげもなく私達に披露するジェイミー、私はふとハルカの方を見た。
「……どうせ私は」
自分の胸をペタペタ触りながらそう呟くと彼女。
「大丈夫、まだ成長するって、これからだよ…………多分」
私に出来るのはそんな言葉をかけてあげる事くらいであった……
〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして翌日、私達は予定通りゴーストの遺構調査に向かっていた。
「ここが……」
辿り着いたのは何とも言えない奇妙な空間であった。
「はい、ここが日本でゴーストが初めて観測された場所です」
と、女性の研究員の方が説明してくれた。この人達は私達より後に来たステラ計画の関係者さん達である。
普段私小隊はこの人と接触することはあまりないが、訓練などをはじめとする研究データは研究チームに送られて、ステラ計画を進める為に使われているらしい。
「うーん……なんか凄いわね」
ジェイミーが呟く。
「うん……」
私は周囲を見渡す、立ち入り禁止の道路を少し進んだ先。それが今私達がいる場所なんだけど。突然道路から巨大な結晶のような物がいくつも生え出している。
「これってゴーストに関係あるのかな?」
ふとハルカがそんな疑問を口にした。
「ゴーストの出現と同時に現れましたから、無関係だとは」
と、研究員さん。
「ふーん……」
私は改めて周りを見渡す、一見すると綺麗な光景なのかもしれないけど、ゴーストに関連してると聞かされると一気に気味が悪くなる。
と、その時だった。突然私の頭の中で大きな耳鳴りのような音……
「……っ!」
そして……いっった……!! 頭が……またこれか……!!!
やばい……立ってられない……遠くで私を呼ぶ仲間達の声が聞こえるけど……あぁ……もう無理…………
そうして、私の意識はどんどん遠くなっていった……
〜〜〜〜〜〜〜〜
そうして、私は気がつくと見慣れない場所にいた。
……いや、見慣れない場所でもないか、テレビでよく見るし、アニメのオープニングにもよく出てくる。ウユニ塩湖のようなロケーション。そんな場所に私は放り出された。
……あの頭痛の後気を失ってしまったのだろうか。
「えぇ……なにこれ……」
困惑して辺りを見渡す。地面が空を反射し一面が雲と空に包まれているかのような光景を生み出している。
「……私って今アニメのオープニングの世界に取り込まれてる?」
蒼グレのオープニングに、こういうシーンあったかなぁ……
その時、ふと後ろに気配を感じ振り返ってみると、一人の見知らぬ少女がいた。
「お姉ちゃん何してるの?」
「…………あなた、誰?」




