27話 ゴーストの接触
『南沖島コントロールより、第一独立試験音楽小隊各機、着陸を許可する、ようこそお嬢様たち』
南沖島基地管制室からランディングクリアランス(着陸許可)が出る。私は島の全景を眺める。
「すっごい綺麗……」
南沖島、南国の自然豊かな島。周りの海も透き通った蒼色をしている、私の心は若干浮ついた、だってまるでリゾート地みたいなんだもん。
『マスターの番です、アプローチに入ってください、2番滑走路に誘導します』
シリウスからの指示。私は気持ちを切り替え着陸体制に入る。徐々に高度を下げ滑走路に着地。
『お疲れ様です、マスター』
「んー……」
シリウスの労いの言葉をに私は手をヒラヒラさせて返す。流石に初めての長距離飛行は緊張した。
あたりを見渡す、既に他の3人は着陸を済ませて格納庫の方に機体を動かしていた。
私も誘導員の指示に従い使用する格納庫へ向かう。
『マイちゃん! 海すっごい綺麗だったね!』
「そうね」
興奮気味のハルカ。格納庫に機体を入れた私は、コックピットハッチを開け外に出た。
「……うぉ、暑い」
南国特有の暖かさを感じる、まだ6月半ばだというのにこれほど暖かいとは。
私は機体を基地の整備員の方々に任せて外に出てみた。
「ここが……南沖島」
遠くには緑に覆われた大きな山、空の蒼とのコントラストが美しい。
「ホント、リゾート地みたいね」
近くに来たジェイミーの言葉。他の2人もいつの間にか私のそばに居た。
「ちょっとした旅行みたいだね!」
「旅行というよりは……合宿と言った方が正しいですわね」
まあ確かに、私達はここに演習と研究、さらにライブの為に来ている。合宿という言葉はそれにピッタリであろう。
ふと、ハルカが基地の方を見る。基地の建物や管制塔はウチらのホームと比べて随分とこじんまりとしていた。
「まずは基地の人にあいさつだね」
〜〜〜〜〜〜〜
そしてその後、基地司令室に行き、この基地の司令に到着の報告をした。
そしてこの基地に置かれている戦人機飛行隊の皆さんにも挨拶を済ませ、私達はこの一週間滞在することになる宿舎に行く。
「ここが……」
宿舎とは名ばかりで、基地より徒歩1分ほどの場所に存在するその宿舎は、別荘の様な建物であった。
すぐ目の前にはプライベートビーチ、絶好のロケーションであった。
「いいのかなぁ、こんないい場所で」
私は海を眺めながらそう呟いた。
「まあいいんじゃない、それより中に入ってこれからの予定を確認しましょ」
と、ジェイミー。
その後私たちは入る。建物の中もそこそこ立派で本当に旅行に来ているかのような気分になった。
「えっと、ゴーストの遺構調査が明日、その後2日は島の演習場で模擬訓練、後の2日はライブの準備ね」
中々忙しいスケジュールだなぁ。
「今日は?」
ハルカの問いかけ。
「特に予定はないから、ライブの準備に当てられるわね」
後一週間……まだロクな練習もできてないのにライブ、大丈夫かなぁ。
「……ついに、ワタクシが考えた歌詞を披露する時が来ましたわね!!」
自信満々の表情を見せるエリナ、よっぽど考えてきた歌詞がお気に入りなのかな。
「じゃあ聞かせてもらっていい?」
ジェイミーが促す。エリナはスマホを取り出して私の作った曲を流し始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「……どう!?」
歌い終わり、曲がも終わる。
「……まあ、いいんじゃない」
自信満々なだけあって、披露した歌詞は悪くはないモノであった。ただ……
「何というか……"Shooting Star!!!"とのギャップが凄いわね」
確かに、あの曲はかなりカッコいい系だけどこっちは所謂萌えアニメにありがちな電波ソング的なノリであった。
「まあ、これも悪くないと思うよ!」
ハルカのフォロー。
「ダメとは言ってないわよ……これの振り付けねぇ、まあ明日までには考えておくわ」
「お願いねジェイミー」
私はジェイミーの手を握る、彼女ならうまくやってくれるだろう。
「任せなさいマイ!」
そうして、その後は特に予定も無かったので島を回ることにした。
南沖島は本当にのどかな場所だ、雰囲気が落ち着いている。
「ちょっと! あなた達!」
ふと、散策している途中でお婆ちゃんに声をかけられた。
「は、はい」
「見かけない顔だけど、もしかしてアイドルの娘達かい?」
お婆ちゃんはワクワクしたような表情で私達に問いかける。
「そうですよ!」
ハルカが元気よく答える。
「やっぱりかい、この島娯楽なんて少ないからねぇ、あんた達ライブするんだろ? みんな楽しみにしてるよ」
……結構期待されているみたい。責任を感じるなぁ。
そうして島を回っていると、似たような事が結構起きた。
「これは失敗できないなぁ……」
そして、散策しているうちにふとある場所にたどり着いた。
「ここって……」
道路の先、立ち入り禁止のテープで封鎖されている。看板には「この先、統合自衛軍の管轄区、許可なく立ち入りした者は法律により罰せられます」と、物々しい文言が。
「もしかして……この先って」
ハルカが先の方を覗きながらそう呟く。
「ええ、多分この先にゴーストの遺構とやらが存在するのですわね」
……遺構、一体何がこの先にあるんだろうか。
「戻りましょ、どうせ明日調査するんだし」
と、ジェイミーはさっさとその場から立ち去ってしまった、ハルカやエリナもそれに続く。
私も戻ろう……っつ!!! 頭が……!
キィィィィィィン……
何これ、頭痛いし……! 変な音するし……!
『詩が聞こえますか?』
これって! 初搭乗イベントの時の……
そうして、その言葉が聞こえたとほぼ同時に頭痛は治った。
「……なんだったの?」
私は封鎖されている方を見る、今のは明らかにあの時と同じ感覚。この先には何が……
「マイちゃん、どうかした?」
と、ハルカ。私が戻ってこないから見に来たのだろう。
「えっと、ハルカは何もなかった?」
「何って?」
何もなかったようだ。
「ううん、なんでもない、行こう」
どうせ、何があるかなんて明日にはわかる事だ。今のは明らかにゴースト関係の現象だと思うけど……
そうして私とハルカはその場所を去った。




