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26話 小隊、南沖島へ

日本皇国 統合自衛軍 統合幕僚会議



「それで、試験小隊の方は?」


 幕僚の1人厳しい顔つきで問いかける。


「はい、既に初期メンバー3人の訓練は完了、追加メンバーの方も調整中です」


 問いかけに返答する研究員らしき人物。


「5人目についても現在策定を進めています、有力な候補が1人、現在アプローチ中です」


「ステラ計画には莫大な予算を注ぎ込んでいる、失敗は許されない」


 厳しい声色でそう言い放つ幕僚。他の幕僚もその言葉に一様に頷く。


「計画を第二段階に移行しろ、彼女たちをあの遺物と接触させるのだ」



 背後のスクリーンにある島の全景が映し出される。青々とした綺麗な海に囲まれた緑豊かな島。この島こそ試験小隊が初めて実戦を経験することになる島であった……



〜〜〜〜〜〜〜〜



「南沖島……ですか?」


「そう、試験小隊には訓練、及び研究調査の為にこの島に行ってもらうわ」


 放課後、基地司令室に呼び出された私達招待メンバーを待っていたのは、唐突な離島への派遣命令であった。


「えっと、その南沖島って言うのは?」


 ハルカが問いかける。千駄木司令は詳しく説明を始めた。


 南沖島は南洋に存在する孤島。人口2,000人ほどの自然豊かでのどかな島であり、島には自衛軍の基地も存在する。


「ここは日本で初めてゴーストが出現した場所でもあってね、それに関する遺構も存在するんだよ」


「なるほど……」


 頷くハルカ。


 南沖島……ついにきたのか。実を言うと蒼グレにおいても全く同じ展開があった。島のゴーストの遺構調査。そしてそこで初の実戦。


 私は身構える。


「期間は一週間ほど、申し訳ないけどその間学校はお休みして欲しいわ、あと島では民間向けにライブもするからよろしく」


 え……ライブもするの? 蒼グレには無かった展開、だって向こうはアイドル要素なかったし……


「ワタクシにとっては初ライブですわね、腕がなりますわ!」


 やる気満々のエリナ。


「……ちゃんとしたライブ、私達にできるの? 一曲しかオリジナル曲持ってないのに」


 ……! それは考えてなかった……流石に一曲だけではライブは出来ない。最初のライブはほぼ身内向けのテストだったし。


「と、ど、ど、どうしよう!」


 慌てるハルカ。いや、待てよ……?


「この前ハルカ、エリナと練習したあのアニメのED、使用の許可取ってカバーって事で使えない?」


 唐突にあの時のことを思い出した私、あれなら練習済みだ、4人用のフォーメーションもすぐ組める。私ってば冴えてるなぁ……


「それでも二曲……最低でもあと一曲は欲しいわね……」


 考え込むジェイミー、確かに、後一曲かぁ。


「あー、お取り込み中のところ悪いんだけど。ライブは最終日だから、まあそれまでになんとかして」


 千駄木司令……なんともまあ無茶を言ってくれる……



〜〜〜〜〜〜〜



 そして出発前夜。私達は寮の私の部屋に集まっていた。勿論最後の一曲について話し合うためだ。


 〜♪


「……どう?」


 キーボードで曲を弾き終える私。実は前々から暖めていた曲があったのでそれを披露した。もちろんこの時間帯なので音は出来るだけ小さめだ。


「悪くないけど……ちょっと可愛過ぎない?」


 ジェイミーの指摘。まあ確かにその通りなんだけど……普通に作ってるとどうしても可愛げな雰囲気になってしまう。


 だって、本当は私こういう曲調の方が好きなんだよね。


「私は好きだな! いいと思う!」


 褒めてくれるハルカ。


「……思い付いてしまいましたわ!! この曲に相応しい歌詞を!!」


 突如立ち上がりそう叫ぶエリナ。


「じゃあ作詞はエリナにお願いするわ」


 ジェイミーはポンとエリナの肩を叩く。


「任せなさい!! この私にかかれば! 最高の歌詞を作ってきてあげますわ!」


 ……大丈夫かなぁこれ。



〜〜〜〜〜〜〜



 そうして、南沖島への派遣命令が出てから三日後……



『名古屋コントロールより、滑走路クリア、第一試験小隊発進どうぞ』


 管制から離陸の許可がでる。今日はいよいよ南沖島へ出発する日だ。


 南沖島へは、戦人機で直接行く事になる。おおよそ名古屋から400kmほど離れている。戦人機の巡航速度なら一時間足らずですぐに到着する距離ではあるが、流石に初めての長距離飛行は緊張する。



 私はモニターの左側をチラッと見てみた。そこには私の機体と同じオレンジ色の塗装をした"一式高等練習機 紫雲・丙型"、エリナに暫定的に支給された機体だ。肩には猫のパーソナルエンブレム。


 暫定的……私たち2人には後ほど正式な機体が与えられるらしい。蒼グレではマイは"晴嵐"に乗り換えていた、果たして同じ展開なのだろうか……


『みんな忘れ物はない?』


 ジェイミーが冗談混じりで私たちに通信を入れる。


『あ……おやつ忘れた! 私の300円分のおやつ!!』


 ハルカの返答。


「そんなもの向こうで調達できるでしょ」


 私も冗談で返す。そのうち機体のチェックを終える。チラリとモニターを見ると地上整備員の人がグッドラックのジェスチャーをしてくれたのが見えた。私もコックピット内でそれを返す。



『じゃあ行くわよ! 小隊! 全機発進! 南沖島へ!!』

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