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25話 意外な一面

『アハハ……そりゃ災難だったわね』


 電話越しに聞こえるジェイミーの声は哀れむような面白がってるような口調であった。


「いや、災難なんてもんじゃないからホント!」


「今日、赤坂さんいなくて良かったね、いたらもっと面倒な事になってたかも」


 隣にいるハルカ、私たちは今学園の食堂で昼食を食べている最中。


「でもちょうどいい機会じゃない? 赤坂さんは小隊メンバーだし」


『そうね、二人三脚なんてピッタリじゃない』


 2人とも簡単に言ってくれる……ダンスであのザマなら二人三脚なんて到底できるはずがない。


「はぁ……憂鬱すぎる……」


 私の心は沈んでいた。



〜〜〜〜〜〜〜〜



 そして放課後、私たちはいつもの様に基地に。もはや基地の隊舎は私達の溜まり場となりつつあり、用がなくても放課後は大体ここに行っている。


「げ……赤坂さん……」


 隊舎にはエリナがいた。まあ小隊メンバーなんだし当たり前っちゃ当たり前なのかな。


「綾瀬マイ! 今日こそは2人でダンスを合わせますわよ!!」


 ……今日もやる気だったのか。


「あー、赤坂さん、体育祭でウチら二人三脚する事になったからよろしく」


 とりあえず報告しといた、知らなそうだったし。


「は、はぁ!? なんで私がアナタと……」


 案の定な反応。


「しょうがないでしょ、休んでたんだし」


 と、私は諦め半分でそう言い放った。


「……フンッ、まあいいですわ。やるからにはトップを目指しますわよ綾瀬マイ! 今から特訓ですわ!」


「え……今から?」


 また唐突な。


 

 そんなこんなで何故基地内で二人三脚の練習をする事になった私達。だが結果はもちろん……


「……2人とも何してるの?」


 後から遅れてきたハルカがなんとも言えない微妙な口調で私たちに声をかける。


「……見てわからない?」


 疲れた。何故だかすごく体力を消耗したような気がする。


「ふ、ふん……これくらいでそんなに疲れるなんて情けないですわね」


 お前が言うな。


 結局二人三脚の練習もズタボロだった、私達はダンスでも二人三脚でも息が合わないみたい。


「2人とも、私に良い考えがあるわ」


 そして、ジェイミーは自分のスマホを操作して画面を私達に向けた。


「……! これって……」


 画面に流れていたのは、昔大流行したあるアニメのED。


「なんですのこれ?」


 これを知らないらしいエリナは怪訝な表情をする。知らないのも無理はない、ちょうど私達の世代が生まれる少し前のやつだし。


「これを踊って動画サイトに投稿するのが流行ってたんだよね〜……で、これが?」


 一体こんなものを見せて何をしようというのか。


「2人にはコレを完璧にマスターしてもらうわ!!」


「え……?」



〜〜〜〜〜〜〜〜



「はぁ……はぁ……全く合わない……」


 案の定、全く合わない。


「困ったなぁ……」


 スマホの方に向かいインスト版の曲を止めるハルカ。


 ちなみに、3人の方がやりやすいという理由で何故かハルカも強制参加させられた、巻き込まれ体質ってやつかな……? かわいそうに。


「赤坂さんも動けてるんだけどね、ほぼ初心者なのに歌いながら踊れてるし」


 まぁ、それは言えてる。彼女はほぼ初心者らしい。


「私、飲み物買ってくるね」


 ハルカは、その場を去っていった。隊舎には私とエリナだけ。ちなみにジェイミーもどこかに行ってしまった。


「……」


「……」


 と、その時。外から猫の鳴き声のような音が聞こえた。


「……!?」


 反応するエリナ。


「……にゃあ」


 私は猫の鳴き真似をしてみた、すると開け放たれていたドアから可愛らしい子猫が入ってきた。


「にゃ〜ん♡」


 子猫は私に駆け寄ってダイブしてきた、私はそれを受け止める。


「よしよし……どこから入ってきたんだろう」


 私は猫に好かれやすい体質なので、鳴き真似で誘惑することもできるのだ。


 ふと、エリナの方をチラリと見ると。彼女は羨ましそうにこちらを見ていた。


「猫好きなの?」


「だ、誰が……!」


 そこで私はある事を思い出した。この人最初に会った時猫に財布をカツアゲされてたような……


「……ぷっ」


 いけない、思い出し笑しいてしまった。


「なにを笑っているんですの!?」


「ごめんごめん……ほら、撫でてみる? 優しくね?」


 私は子猫を抱きエリナの方に近寄った。


「…………」


 すると彼女は遠慮がちに子猫さんを撫でた。


「ふにゃ〜ん」


 気持ちよさそうにする子猫さん。エリナの表情がわかりやすい程に明るくなる。


「わかりやすいね、エリナって」


 あ、しまった。つい呼び捨てにしてしまった。


「し、仕方ないじゃない……好きなんだもの……」


 なんだこの可愛い生き物。


「エリナも同じくらい可愛いよ?」


「〜〜〜ッッッ!!! からかうのはやめなさい!!」


 ……なんだかこのやり取りだけで随分エリナのイメージが変わってしまった。この娘可愛いな……


「ねぇエリナ、せっかく何かの縁でこうして同じ小隊に入ることになったんだし。2人で頑張ろうよ」


 その言葉に、顔を赤くしながらコクンと頷く彼女。


「あれ? 2人ともどうしたの?」


 と、そこにハルカが戻ってきた。


「なんでもない! ほら2人ともやるよ!!」


 そうして練習を再開した私達。私とエリナはこれまでが嘘のように息が合うようになってきた。


 これなら……二人三脚もいける!?







 


 半月後、体育祭での結果は5組中3位であった。まぁそう現実は甘くないよね……


 ともあれ、新たなメンバーとのわだかまりも少しは消え距離も近づいた。ハルカ達とあの子猫には感謝しなきゃね。

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