23話 名古屋城観光
「んーっ……!」
朝、小鳥のさえずりと柔らかな朝日で目を覚ます私、いつも通りの一日が始まる。
「おはようマイちゃん!」
「ん、おはよう……」
学校の準備を済ませて、食堂で朝食をとる。そうして私達は学校へ。これもいつも通り。
「セリカちゃん、居なかったね」
「ん……まああの娘、他人と馴れ合う様なタイプじゃなさそうだし」
なんとなくセリカには他人を寄せ付けない雰囲気があった。他人と関わりたくないのだろうか。
「最初の頃のマイちゃんに似てるね!」
う……それを言われると痛い。最初の頃は今までのままクールキャラを貫こうとしたんだけど、今じゃすっかりこの通り。誰のせいだと思ってるんだか全く……
と、そこに一台の燃えるようなワインレッドの色をした四ドアのスポーツカーが唸る様な轟音を鳴らしながら走ってきて、私たちの横に止まった。
「すっご……」
ナンバープレートをチラリと見る、本来ひらがなが書かれている所にはTという文字。
そして派手なエアロパーツを装備したその車はまるで戦人機を連想させた。そして目立つ蜂のペイント、このマークって確か……
「2人とも、オハヨウ!」
「え……ジェイミー!?」
窓から顔を出したのはなんとジェイミーであった。
「ジェイミー……その車どうしたの?」
ハルカが尋ねる、するとジェイミーは待ってましたかの如く説明を始めた、彼女曰くこの車は彼女の持ち物、アメリカにいた頃からの愛車で日本にまで持ってきた代物らしい。
「この娘以外にも3台くらい持ってるわよ、全部日本車だけどね!」
曰くジェイミーは大の日本車好きらしい、日本人としては嬉しいけど……
そういえば、今更だけどジェイミーって19歳なんだよね、私達よりお姉さん、なんだか距離が近過ぎてあんまりそういう実感湧かないや……
「2人とも、乗りなさいよ、送っていってあげるわ」
「え、いや……遠慮しておくよ」
なんか凄く運転荒そうだし……
「え? いいの? やったー!」
と、無邪気に後部座席に乗り込むハルカ。はぁ……ホントこの娘は……
そうして、ジェイミーの運転する車で暫く走っていると唐突に彼女が、
「あ、そうだ。今日は放課後基地の司令室に来いって千駄木司令が」
と、そんなことを言った。
「……っていうかそれ言いに来たんじゃないの?」
まさかこのスポーツカーを見せびらかしに来たわけではあるまい。
「アハハ……すっかり忘れてたわ」
軽い調子でそう言うジェイミー。きっと重要な用事だろうに、忘れられた千駄木司令が泣くぞ……
「……ところで、マイ達の学校ってどこ?」
「……え?」「は?」
〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ……こりゃすっかり遅刻だなぁ」
私は時計を確認しながらため息を吐く。私達は今適当なコンビニに止まって状況確認していた。
「うわっ、なんでこんな所に?」
ハルカがスマホのマップを確認する、私もそれを横から覗いてみた。
「……これは酷い」
学校からはかなり離れていた、今から行っても遅刻確定だろう。
「はぁ……なんだかすっかり行く気無くした……」
コンビニで買った紙パックのコーヒー牛乳をストローでチューチュー飲みながら車に寄り掛かる。もう今日はこのままサボってしまおうか。
「……ここから名古屋城まで何分?」
「え? すぐ近くだけど?」
どうせサボるなら、派手に観光してやろうじゃない。昨日一昨日はずって寮で寝てたし。
「それちょうだい」
コンビニから出てきたジェイミーは私の手からコーヒー牛乳をひったくる。まだ少ししか飲んでないのに……
「ジェイミー、これからここに行くから運転よろしく」
私はマップをジェイミーに見せる。
「制服だと目立たない?」
「どこか適当な洋服屋で代わりの服買えばいいでしょ、ほらさっさと行くよ2人とも!」
こうして、学校をサボり名古屋城を見に行くことにした私達であった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「大きかったね〜」
「だね〜……」
実際に近くで見る名古屋城はスケールが違った、寮で遠くから見るのとは大違い。
「ここからの景色も中々風情がありますなぁ」
私たちは見学を終えた後、すぐ近くにある公園からお城を眺めていた。
丁度藤の花が満開を迎えるこの季節、ここからだと藤の花とお城が一緒に見れる、うーんSNS映えする景色だなぁ……
「あれがジャパニーズキャッスル、スケールがダンチね……」
先程からブツブツと何やら呟いているジェイミー、よほどインパクトが大きかったのだろうか。
「なんか平和……こんなのんびりしてていいのかな?」
今まで、過酷な訓練を一ヶ月続けてきたけど、それとのギャップが凄い。
「……今更だけど、私たちって何をするんだろう」
ふと、ハルカが唐突にそんな事を呟いた。
「何って?」
いきなり何を言い出すんだこの娘?
「私達って、やっぱりこれから実戦に出るのかな?」
「まぁ……そりゃね」
実戦、いずれくるんだろうけど、私もあまり実感がわかない。
「私達はパイロット……でも戦乙女でもある。私たちの歌がゴーストを退けて、みんなを笑顔にできたら……」
なんだかいかにも主人公が言いそうなセリフ、ハルカらしいっちゃらしいけど。
「そうね、戦乙女は単なる兵士じゃない。心に響く様な歌とダンスで民間人を守る存在、いいこと言うじゃないハルカ!」
なんだか2人で盛り上がってるけど……でもそうだ、蒼グレだと名古屋の街は凶悪化するゴーストに蹂躙されてしまう。
私は改めて名古屋城の天守閣を見つめる。
……次にこの街がゴーストの手にかかるとき、その時はグリフォン隊と……私達が守ってみせる!