22話 転校生は元アイドル
試験の結果は「合格」であった。ハルカの機体操作は水準以上であったらしく、ジェイミーとの連携も悪くは無かったそうだ。
私の狙撃はヘボだったけど、許容範囲であったとの事。相手が悪すぎた。的確な陣地転換や機体操作が評価された、前者はほぼシリウスのおかげだけど……
そんなこんなで私達は正式な戦乙女になった。そして試験の翌日……
「……これがウィングマーク?」
私の手には翼を模した徽章、これはパイロットの証であるウィングマークというものだそう。
「で、こっちが戦乙女バッジ……」
ハルカの手には音符を模した徽章。こちらは戦乙女の証であるもの。もちろん世界において戦乙女は私達しかいない、世界初の戦乙女徽章だ。
「ん……感慨深いわね」
戦乙女徽章をつけそう呟くジェイミー、彼女は元からパイロットなのでウィングマークは持っているが勿論こっちの徽章は初めて手にする。
「ハルカ、マイ、あなたたち2人には正式に階級が与えられます、これからは自衛軍の一員として気を引き締めてください」
真剣な表情で私たちにそう告げる千駄木司令。私は制服に徽章をつけてみた、うん、身が引き締まるなぁ……
そうして私たちは正式な戦乙女兼戦人機パイロットになったのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そして翌日、朝ハルカと共に登校、教室に入り机に座り……
「うぅ〜〜……」
私は机に突っ伏した状態になる。この一ヶ月流石に疲れた。
考えてみれば平日は学校に行き、そのまま基地で夜遅くまで訓練、休日は一日訓練。多少の休みはあったが、かなり疲れが溜まってる……
幸い今日は金曜日、今日の放課後と土日はオフを貰っている。多分一日中寝てるだろうなぁ。
「マイちゃん、大丈夫?」
ハルカからの声かけ、私は「んー」と返答。ハルカはあまり疲れてなさそう、タフだなぁこの娘。
「そういえば今日転校生が来るって知ってる?」
ん、初耳、どんな娘なんだろうか……
「いや……知らないけど、一年のこんな時期に転校とか珍しいね」
「うん、そうだよね……で、それがね、その転校生なんと…………」
と、その言葉を切るかの様にガラリと教室の扉が開かれる。
「はいみんな席に座って〜」
教室に入ってくる担任教師。ハルカは自分の席に戻っていった。
「今日は皆さんに新しいお友達を紹介します、入ってきて」
新しいお友達……本当に転校生来るんだ。こんな時期に、どんな娘なんだろうか…………
そうして、教室に入ってきた1人の女の子。
「…………代々木セリカ、よろしく」
一気にざわつく教室内。入ってきたのはなんと……
「あれって代々木セリカだよね……?」
近くから聞こえるヒソヒソ話。代々木セリカ……三ヶ月前に解散した超人気アイドルユニットのセンターだった娘だ。あまり芸能に詳しくない私でも知っている。
「はいはい静かに、じゃあ代々木さん、席はあそこね」
と、これ見よがしに空いていた席を指さす担任、セリカは気怠そうにそこに行き席に座る。すごい、芸能人って初めてみたけど、すっごい美人。遠目で見てわかるくらいスタイルいい。人気アイドルユニットでセンターを務めてたのも納得がいく。
どんでもない転校生がやってきたなぁ……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「マイちゃんたちのクラスに代々木セリカちゃんが転校してきたってホント!?」
興奮気味のユキさん。私とハルカは寮に帰宅、リビング兼共用スペースに入った途端、彼女の質問攻めに合う。曰く彼女はセリカの大ファンだったの事。
「えぇ、まあ」
「でも、セリカちゃん、テレビとイメージ違ったね」
そう、彼女、あの後近寄るなオーラ満載で凄くピリピリした雰囲気であった。
「まあ、芸能人ってああいうものでしょ」
テレビの中と現実じゃ印象がまるで違うなんてよくある話だ。
それにしても代々木セリカ……実は蒼グレでもチョイ役で出てたんだよなぁ、でもうちの学校に転校してくるとか、ホント色々展開違いすぎでしょ……
「はぁ〜……会ってみたいわね〜」
ユキさん、多分あなたもリアルのセリカに会ったらイメージ崩れると思いますよ。
「みんないる〜?」
と、そこに管理人のユイさんが入ってきた。
「ユウミさんがいません」
私は答える、多分あの人は今日も基地にいるんだろうけど。最近緊急発進も増えてるし大変そうだなユウミさん…………私たちも早く何かしら力になれないのかな。
「そう……まあユウミちゃんにも後で紹介しておけばいいわね……入ってきていいわよ」
手招きするユイさん。すると部屋に1人の女の子が入ってきた。
「え……」
入ってきたのはなんと、今話題に上がっていたばかりの元アイドル、代々木セリカであった。短いショートの黒髪、モデルかと見間違うほどのスタイルの良さ、胸は……勝った……!
「なにジロジロみてんの」
いきなり喧嘩腰の彼女。やっぱり性格最悪でしょこの娘……
「今日からこの寮に入ることになった代々木セリカちゃん、みんな仲良くしてね」
「ふん……」
そうして、私たちの寮に新たな住人が増えたのであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぅ……」
あの後、自室に戻った私は制服のままベッドにダイブ、今日の出来事を振り返る。
元アイドルの転校生。蒼グレには無かった展開……改めて考えるとXA-51への初搭乗イベント以降、色々な展開にかなりの相違がある。
ジェイミーやセリカ、彼女達も蒼グレのキャラではあったが、ここまで深く関わってくるキャラではなかったはずだ。
そして一番の大きな違いは、アイドル要素。そんなものは蒼グレには欠片も存在しなかった。
「でも、大体は一緒だよね……」
初搭乗イベント、試験小隊への配属、そしてパイロット試験。となれば次に来るのは……
「気を引き締めていかなくちゃ……」