16話 初ライブ!!!
そうして、時間はあっという間に過ぎていった、私たち三人で完成させた曲とダンス。放課後はほぼレッスンの時間に費やされた。心配だったハルカの歌声もなんとか形にはなってきた。
「ワンツー! ここで左右のステップ! ハルカの入り遅い!!」
ジェイミーの指示、彼女も私とハルカと一緒に指示を出しながら踊っている。私達は汗を流しながら彼女の指示に食らい付いていく……正直かなりきつい……!
「ラスト!! ここでターン!!」
彼女の指示通り動き……最後のターン!!
「…………っはあ!!」
終わった、私は地面にへたり込む。もうかれこれ3、4セットくらいはぶっ通しで練習を続けていた。汗だくだくだよホント……
「マイはいい感じ、ハルカはもうちょっとね」
私達より余裕そうな様子で的確に評価するジェイミー、やっぱり軍人っていうのはタフなんだなぁ……と、改めて感じる。彼女に比べたら私なんかまだまだだ。
「あと2日か……」
私はボソリと呟く。基地内模擬戦技までもうわずかしかない。
「私、模擬戦技が成功したらスイーツをたらふく食べまくるんだ……!」
と、寝そべっていたハルカがそんな事を言った。なんともまあ縁起の悪いことを言ってくれちゃてるんだこの娘は。
「ハルカ、それフラグって奴だから」
私が冷静に突っ込む、変なフラグを立てて失敗、なんて事になったら嫌すぎる。
「そういえば、衣装ってどうなってるのかしら?」
スポーツドリンクをごくごくと飲み干し、ジェイミーが私達にそんな事を聞いてきた。
「自衛軍のほうで用意してくれるって聞いてるけど……」
私が答える。でも冷静に考えると軍は用意してくれる衣装なんて凄くお堅いものな感じがしてくる。
「大丈夫かしら……」
ジェイミーがそう呟く、おそらく私と同じことを思ったのであろう。
そうして、その後も練習を重ね、時間は過ぎて行き、その日は午後9時に帰宅。疲れた私はシャワーを浴びたあとすぐに眠ってしまった。
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「これが……衣装ですか?」
目の前には、かなりのアレンジが施された自衛軍の女性用制服が掛けられていた。なんというか、予想外であった。
「へぇ、結構いいじゃない」
お堅い衣装が出てくると思ったけど、これならアイドルの衣装と言われても違和感はない。
「ちょっとカッコいい系だから、今の曲とダンスに合ってるね」
ハルカが衣装を自分の身体に当てながらそう言った。
「気に入ってくれたみたいで何より何より」
近くで私達を見ていた千駄木司令がそう言った、衣装はこの人が隊舎に持ってきたのだ。この人意外と暇なのかもしれない。
「いよいよ明日は戦乙女試験の本番だからね、その戦闘服をきて頑張って頑張って戦技してね」
一応、この人なりの応援なのだろう。ってかこの人一応責任者だったっけ……
「じゃあ私はこれで、今日もレッスン頑張ってね」
そうして隊舎を去っていく千駄木司令。
「じゃ、今日も始めようか!」
本番は明日、今日は軽いリハーサルも兼ねて基地内にある仮設ステージで練習を行う予定だ。私達はさっそくその仮設ステージに行ってみた。
「ここが……」
仮設のステージとはいえ結構立派なものであった。
「明日、ここで戦技するのね」
ジェイミーが感慨深そうに呟く。
「まさか私がアイドルみたいな事するとは思わなかったなぁ……」
ステージを見たハルカ、まあ正確には戦乙女なんだけど。
「お客さんどれくらい来るかな?」
「……千駄木司令が言ってたでしょ、ほぼ身内だけって」
見に来るのは、基地で待機や作業中ではない手が空いてる者だけだが、戦技は基地内全域で生中継されるので実質この基地のほぼ全員が見ることになる。
「頑張ろうねマイちゃん、ジェイミーちゃん!」
ハルカの言葉に私は静かに頷くのであった。
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そして、迎えた当日。
「け、結構いるね……」
ステージの端から客席の方を確認して震えながらそう呟くハルカ。
「この上、基地内で中継だからね」
流石に緊張してきた。大勢の人前で歌って踊るなんて人生で初経験、しかも戦乙女になれるかなれないか……これがここで決まるし。
「そういえば結局名前決まらなかったね」
そう、ユニット名は最後まで議論していたが決まらなかった。私はチラリとステージの看板を見る。
第一試験音楽小隊(仮)
そこには、そう書かれていた。だってしょうがないじゃん……思いつかなかったんだから……
「まあ、あれはあれで味があるというか……」
私はそうフォローする、多分私の表情は苦笑い状態だと思う、流石にあれはない……
「時間より二人とも、さぁ! みんなに見せてあげようじゃない!」
と、すっかりリーダーのような立ち位置になったジェイミー、その言葉に私とハルカは頷き。私たち三人はステージに駆け出す。
「ヒュー! 待ってたぞー! 中京基地のアイドルー!!」「頑張れ3人ともー!!!」
客席からの声援。ほぼ身内だけで固められている戦技ではあるが、緊張の度合いは半端ではなかった、チラリと後ろの方を確認すると千駄木司令と数人の研究者の様な人たちがいた。何やら高そうな機材もある。
あの人達は私達の歌とダンスを観測し正確なデータをとり戦乙女としての適性を図る試験官の様な人たちであるらしい。
彼らの手にはグラスのような物、あれは高尾のある天才少女が開発した戦乙女力を測る装置らしい。
「えーっと……私たちは第一試験音楽小隊(仮)です! 戦乙女になるために今日は頑張ります! よろしくお願いします!!」
そうして私たちの戦技が始まった。