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15話 熱血ジェイミー

「……」


「……ふぅん」


「ど、どう?」


 私の手にはスマホ、そしてそのスマホからは私が作った曲が流れていた。


 私達は小隊の隊舎にいた。結局作り上げるのに3日ほどかかってしまった。


「まあいいんじゃない……?」


 曲が終わり、ジェイミーがそう言ってくれた。


「凄い! マイちゃん!」


 ハルカも嬉しそうにそう言った。気に入ってもらえたようだ。思いの外、作曲中に調子に乗ってカッコ良さを重視した曲調になってしまったが満足してもらえたならそれでよし。


「振り付けは私が考えてくるわ」


 と、ジェイミーさん。この人、かなりダンスが上手い。プロなんじゃないかと思うほどで軍人としてだけではなく間違いなくその方面でも食べていけそうなレベルだ。


「お願いします少尉」


「マイ、私たちは軍人ではあるけど戦乙女というチームよ、いい加減、階級なんかで呼ばないでファーストネームで呼んで」


 ジェイミーは怒ったような口調でそう言った。


「は、はい、ジェイミー……さん」


 流石に呼び捨てはどうかと思いさんを付けた。


「ジェイミー! いい振り付けを期待してるからね!」


 と、呼び捨てで気楽な事を言うハルカ。この娘はやっぱりコミュ強、というか随分上から目線だけど……


「ハルカ、あなたは……まず歌をなんとかしなきゃ」


 そう、切実な問題。ハルカは歌が実に下手であった。一応ここ一週間の練習でかなりマシな方になったんだけど……


「それにしても、初ライブっていうのに観客が身内だけってのも味気ないわね」


 ジェイミーが不満を漏らす。そう、一週間後に迫る初ライブ、これは基地内で行われるのであるが、観客はほぼここ中京基地の関係者……つまり身内だけと事前に教えられていたのである。


「その方がいいでしょ……無名の私達に民間のお客さんが来ると思う?」


 基地の人達とはここ一週間で随分と顔馴染みになった。整備班の人達や管制室の人たち、みんなからは「中京基地の星!」「期待してるぞ!」と声をかけてもらっている。


「身内だからって、下手な失敗はできない……戦乙女の試験でもあるんだから」


「分かってるわよマイ」


 とその時、ふとハルカがなにやら真剣な表情で考え込んでいる姿が目に入った。


「えっと……ハルカ? どうかした?」


 私は気になって声をかけてみた。


「無名……無名……」


 ブツブツとつぶやく彼女。そしていきなり立ち上がり……


「私たち、無名だよ!!!」


 と、大声で叫びだす。いやいやそんな事わかってるって。


「ハルカ、どういう事?」


 ジェイミーがそう質問する。するとハルカはビシィ! と天井に向かって指をさしながら「私達、ユニットの名前決めてないじゃん!」と大きな声で言った。


 ユニット名……ユニット名……


「あれじゃないの?」


 私はそばのホワイトボードに書かれていた文字を指さす。そこには「第一試験音楽小隊」と書かれていた。


「あんな可愛くないの嫌だ!!」


 と、子供のように喚くハルカ。


「なにかいい名前でもあるの?」


 と、ジェイミー。何かすっかり名前を決める流れになってきているような気がする。


「考えてきたよ! これ!!」


 ハルカはポケットから紙を取り出し私達に突きつける。そこには……



 ハルカと愉快な仲間たち



 と書かれていた。


「ボツで」


「ボツね」


 私とジェイミーの声が重なる。


 その後、不満そうなハルカを放置して話し合ったが特にいい案は思い浮かばなかった。そうして議論を切り上げ練習を再開しようとしたその時。


 ウゥゥゥゥン……


 というサイレンが基地内に響き渡る、またか……と、私は窓から遠くの滑走路を見みた。


「今週で二回目……」


 緊急発進(スクランブル)していく小隊規模の晴嵐。第101戦人機飛行隊だ、多分ユウミさんもいるだろう。


「一週間で2回は珍しいペースね」


 いつの間にか隣に立っていたジェイミーがそう呟く、ハルカもいた。二日前にもゴーストの出現が観測されグリフォン隊が対処にあたったばかりだ。


 私は飛び去っていく戦人機を眺める、向かう方向は海の方角であった。前回は海洋上に現れた。今回も同じパターンなのだろう。


「……私たちも頑張らないとね」


 と、ハルカ。私はその言葉に静かに頷いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 その翌日、私とハルカはもうそれが当たり前のように基地に向かう。ここ最近は学校より基地にいる時間の方が長いかもしれない。


「え……! もう振り付け考えてきたの!?」


 驚いたことにジェイミーはもう振り付けを考えてきていた。私は曲考えるのに3日かかったのに……


「当たり前よ、今から曲の振り付け見せるから、とっとと練習始めるわよ」


 さらりと言ってのけるジェイミー、やはり彼女は只者ではない。彼女が考えてきた振り付けは完璧だった、ただ……


「激しいね……」


 ジェイミーのダンスを見終わったハルカがそう言った。たしかにかなり動きがあるものだった。私たちの体力持つかな……


「今まで基地の中走り込んだり、きついダンスの練習してきたけど、いけるかなこれ……」


 私は弱音をこぼす、それなりには練習を重ねてきたつもりだが、練習を始めて一週間ほどしか立っていないのも事実、私の心には不安が宿った。


「なに弱音吐いてるのよ、やるしかないでしょ!」


 と、熱い言葉をぶつけるジェイミー。ハルカもそれに同調し「練習始めようよ!」と元気な声を出す。すっかりやる気を出してしまったみたいだ。



「やるわよ!!!」


「そうだね……うん! 頑張ろう!!」



 2人の熱気に私もすっかり当てられてしまった。初ライブまであと5日……頑張るしかない!!

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