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14話 奪われたファーストキス

 EMPIRE(エンパイア) OF(オブ) AMERICA(アメリカ)


 この世界のアメリカは現実とは少し違う国になっていた。


 そして私の目の前には……


「メジャー少尉、改めて自己紹介を」


 教壇に立つユウミさん、そしてジェイミー。


帝国(エンパイア)からきた、ジェイミー・メジャーシティ、連邦帝国空軍所属、今日から正式に試験小隊メンバーだから、階級は少尉、ヨロシク」


 腕を組み自信満々そうに言うジェイミー。余談だが彼女の胸は私より大きそうだった。負けた……


「メジャー少尉は帝国より日米合同のステラ計画のため派遣された……一応、小隊のメンバーで戦乙女(アイドル)候補になるから」


 と、ユウミさんは説明する。


「米帝軍からもメンバーを1人派遣するというのは決まったいたことでね、高い純度のステラ因子、日本語が喋れる、ダンス経験がある、十代の若い女性パイロット、全ての条件に合致したのがメジャー少尉という訳」


 なるほど、ユウミさんが言ってた"心当たり"というのはこの人の事か。


 私は彼女をじっと見つめる、実はジェイミーの事はすでに知っていた。蒼グレにもいたキャラだ。だけどそれほど出番は多くなかったというか……私達の試験小隊とはあまり関わりのないキャラだったはずなのだが……


「……ワタシの事をじっと見つめてどうしたの? もしかしてワタシに惚れたのかしら?」


 ジェイミーは私に近づき、私の顎をクイっとした……! 距離が近い……!!!


「カワイイ娘ね、今夜ワタシの部屋に来ない?」


 そうして……彼女の柔らかな唇が私の口に触れた……! いやいやいや!!! こ、こ、こ、この人何してるの…………!!!


「ッッッ……!!! マイちゃんに何してるんですか! 離れてください……!!!」


 ハルカがガタリと立ち上がり、私からジェイミーを引き離したのがわかった。だが時は既に遅し。



 こうして私のファーストキスは呆気なく奪われてしまったのである……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「これが……私の専用機……」


 目の前にはかなりゴツい、まるで鎌倉武士を彷彿とさせるような戦人機が立っていた。


「"一式高等練習機 A-43J/T 紫雲・丙型"、自衛軍の一般的な練習機だよ」


 私は機体を見上げる、オレンジのカラーリングをした派手な機体だと思った。



 私達は今、格納庫にいた。ここが第五格納庫が試験小隊専用格納庫らしい。



「本来、候補生が専用機を持つなんてあり得ないんだけど、ステラ計画の参加者の場合は特別なんだよね」


 ユウミさんは手元の資料を見ながらそう言った、どういう事なのであろうか。


「ステラ計画の戦乙女(アイドル)が乗る機体には特別な超高性能AIを乗せた支援モジュールが搭載される、この機体にもそれが載ってるから、実質マイの専用機ってわけ」


 なるほど、そういう事であったのか。私はチラリと隣にあるXA-51を見る。私の紫雲とは違い真っ白なカラーリングだ。


「私はあのままアレに乗るんですか?」


 隣にいたハルカはXA-51を指さす。


「あぁ……ハルカはそのままアレで訓練、正式な戦乙女(アイドル)になった後もあれに乗ってね、ステラ計画はアレの実験データを取るのも目的だから」


 なんという扱いの差、主人公は高性能試作実験機なのに私は練習機、これが主人公とそうでない者の差と言うわけか……



 そういえば、XA-51にはリゲルという愉快なAIが載っていた。私の機体にも同じようなAIが載っているのだろうか。


「ふぅん……話には聞いていたけど、本当に"失敗作"がコッチに来てたのね」


 と、こちらの方に歩いてきたジェイミー。彼女は先ほどまで紫雲の隣にある自機、A-50ピーコック、帝国の最新型機。あのグレーの機体だ。それの調整を整備員とともに行っていた。


「失敗作?」


 私が聞き返す。すると彼女は鼻で笑いながら、


「言葉の通り、そこのピーコックとのトライアルで負けて帝国(エンパイア)で正式採用されなかった機体よ」


 そんな経緯であったのか、失敗作……隣に並ぶこの二つの機体にそんな因縁があったとは。


『失敗作とは聞き捨てなりません!!』


 XA-51から声が聞こえる、リゲルの声だ。


『御言葉ですがメジャー少尉! 性能ではXA-51がXA-50……ピーコックの試作タイプより上回っていました!』


 ジェイミーが上を見上げ「あれがウワサの……」と呟く。


「だけどAIちゃん、汎用性はピーコックの方が上、だからアナタの機体は負けたのよ」


 と強い口調で言い返すジェイミー。リゲルは『ぐぬぬ』と押し黙ってしまった。それでいいのか超高性能AIよ……


「はいはいそこまでそこまで、取り敢えず今日は機体の顔合わせだけだから、戻って勉強と練習!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 そうして1週間、私達は放課後はすぐに基地に向かい戦人機の勉強、及び操縦訓練。そして歌とダンスの練習という過酷なスケジュールを過ごした。


 そして今日は日曜日、今日は珍しく一日中オフであった。出来れば今日中に曲を完成させなければならない。


 私は実家から取り寄せたキーボードの前で項垂れていた。


「うぅ……思い浮かばない……」


 歌詞は既にハルカから渡されていたが……正直抽象的過ぎて何が言いたいのかわからなかった。


 私はゴロリとベッドの上に寝転ぶ。あの()がこんなにポエマーだとは思わなかったなぁ……と、彼女から手渡されたノートをペラペラめくる。


 詩はポジティブなものが殆どであった。ハルカらしいといえばハルカらしいかな、でも、駄ポエムが多いような気が……



 私はハルカの事を思い出す。ハルカって単純だけど芯が強くてポジティブというか。


 ……なんだか私は難しく考えすぎてたみたいだ、こうなりゃ素直に心で作ってみよう!





 でも流石に意味不明な箇所は直してもいいよね……

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