表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/67

12話 ステラ計画

「はぁ……」


 と、重いため息。隣を歩くハルカは苦笑いしながら私の事を見ていた。


 あの"アクシデント"の後、何故かエリナは私の事を痴女呼ばわりしながら走り去っていった。


 何で私が悪いみたいに言われなきゃいけないのか、むしろ私は被害者なんだが……


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


中京基地



「二人とも、そんなに緊張しなくていいよ、リラックスリラックス」


 ユウミさんが私たちを見てそう言った。私たちは今中京基地の基地司令室前にいた。あの後、学校の正門でユウミさんと合流、そのままバスでここまできた。



「はい」


 私はむしろ緊張というより、待ちに待ったぞ! という雰囲気で答えた。


 何しろ四日も待たされた、こっちは情報にない"ステラ計画"とやらの全容を知りたくてたまらなかった。


「失礼します」


 ユウミさんがドアをノックし、開けて中に入る、私達もそれに続いた。


「し、失礼しまひゅ……」


 噛んでしまった……


「やあ、きたね二人とも」


 部屋の奥、窓辺の机に千駄木司令はいた。窓からは中京基地の全景が見えた。基地は今日も慌ただしく忙しい様子であった。


「見ての通り、色々と戦闘の事後処理があってね、まあそれより早速本題に入ろうか」


 本題……アニメ通りなら私達はこの後、自衛軍で次世代戦人機開発計画に携わる事になる。XA-51およびリゲルと搭乗員登録はセキュリティの関係上、簡単に変える事が出来ず最上位のコマンド権限が必要になる。


 そんなんでパイロットをハルカから変更する事が難しいのでそのままアルバイト扱いでお手伝いする事になる、みたいな展開だ。



「千駄木さん、それでステラ計画って……」


 私は開口一番にそれを尋ねる。そう、ステラ計画。こんな言葉アニメには出てこなかった。


 すると千駄木司令は手元にあった紙の束を掲げる。


「これは代々木レポートといって……甲武大学の代々木教授がまとめたものです」


 代々木レポート、何やらいかにも重要そうなものであるけど……


「彼は、自衛軍と共同で"ゴースト"について研究していました、結論から言います。彼のレポートによれば……」


 そこで言葉を切る千駄木司令、随分と勿体ぶるな……一体どんな衝撃の事実が待ち受けているのだろう。


「異星金属生命体"ゴースト"は歌と踊りを感知する器官が存在します」


 ……歌? 踊り? いったいどういう事であろうか……


「専門的な話をここでしても理解できないでしょうから、凄く簡単に説明します」


 そうして千駄木司令は"ゴースト"についての基本的な知識を教えてくれた。


 ゴーストは、四十年ほど前からこの世界に現れ始めた敵性生物で、何処からともなく前触れもなく現れる生き物らしい。


 その前触れもなく現れるという特徴、さらに蟻のようだったり、カマキリのようだったり独特な形状をして、空を飛んだり地を這ったり独特の機動をする。


 そのような特徴もあって、特に市街地などに発生した際は対処が難しい、そうしてゴーストに対抗する為に、編み出された兵器が格闘戦(ドッグファイト)に特化した戦人機というわけであった。


 戦人機は航空機でもあり、陸戦兵器でもある両用兵器で、戦人機の登場でゴーストへの対処が格段に楽になったという。


 と、ここまでは私も把握していた知識、問題は……


「それで……歌と踊りを感知するっていうのは?」


 私は気になっていた点を質問する。


「言葉の通り、ゴーストは歌と踊りを感知します、体内に存在するある機関がそれを検知すると活動が大幅に減衰します」


 完全に初耳の情報だった。


「しかしながらただの歌声では効果はありません。必要とされるのはステラ因子という特別な因子を体内に保持する者の歌声でなければなりません」


 説明を続ける司令、リゲルによれば私とハルカにはその因子の存在が認められるらしい。


「特に、綾瀬マイさん……貴女には高純度の因子が認められます」


 千駄木司令は私の方を見てそう言った。


「えっと、つまり……?」


「貴女の歌声はゴーストに効くという事です」


 なんとも突拍子のない話だ、それにこれは完全に蒼グレになかった設定。どういう事なのか……


「湯島ハルカさん、貴女にも彼女ほどではありませんが少量のステラ因子が認められます」


 その言葉にピクリと反応するハルカ、ていうかこの娘今まで無反応だったけどちゃんと話聞いてるのかな……


「で、ここからが重要。貴女達には支援音楽ユニットを組んで戦乙女(アイドル)として活動してもらいたいの」


 戦乙女(アイドル)……え? 何それ……


 司令の口から出てきた予想外の単語に私の空いた口は塞がらなかった。


「2年前、代々木レポートが発表されてから日米共同で進めてきた計画、それがステラ計画です」


 説明によれば、近年、ゴーストが謎の進化を遂げており、人類に対する脅威度が増しているらしい。


 そこで高い純度のステラ因子を持つ少女を集めてゴーストを封じる音楽ユニット……新たなる人類の(つるぎ)の設立が日米の共同計画として進められてきたという。


「あれ……でも、それって戦人機と何の関係が……?」


 アメリカから送られてきた試作実験戦人機、それが音楽ユニットと何の関係があるのだろう。


「ゴーストの前で生身で歌うつもりですか? 戦人機は戦乙女(アイドル)の鎧になるのよ」


 つまり戦場に出ろって事!?


「この計画には日本の次世代戦人機開発計画も関わっています。戦人機と戦乙女(アイドル)は切っても切り離せない存在なのです」


 分かったようなわからないような……


「ちなみに、貴女達二人には計画に参加するかしないか選ぶ自由があります」


 司令は言う、なら辞退してしまおうか……なんかすごく大変そうだし、辞退したらバッドエンドも回避できるかもしれない。


戦乙女(アイドル)といえ、立派な軍人であり、パイロットでもあります、ゴーストとの戦闘も経験する事になるでしょう」


 そうして司令はクルリと椅子を回し後ろの方を向く。


「自らの力を生かしたいと考えているのなら、是非この計画に参加していただきたいです」




 これがステラ計画、その全容であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ