11話 不機嫌なお嬢様と二度目のラッキースケベ
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1982年 異性侵略金属生命体、通称"ゴースト"の出現が観測され始める。
1987年 アメリカ帝国は作業用人型重機を転用しゴーストに対抗可能な戦人機の開発に着手。
1991年 初の戦人機、A-40が配備。
1994年 欧州やソ連においてゴーストが大量出現、大きな被害をもたらす。
1997年 欧州やソ連での戦訓を基に開発された1.5世代戦人機、A-43の運用が開始される。
2002年 日本皇国において、"A-43J 紫雲"の運用が開始されるか。
2007年 ゴーストの出現が日本国内でも観測され始める。
2014年 世界初の2世代型戦人機、A-45が完成。
2017年 日本皇国、第2世代型戦人機晴嵐を配備。
『蒼き詩のガングレーヴィア』設定資料集より
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「ふぅ……」
私は資料集をパタリと閉じた。そして枕元に置く。
『四日前に出現したゴーストにより、区内の家々に被害が……』
チラリと自室のテレビを見る、ニュースでは四日前に起こった出来事を詳細に伝えていた。
『このゴーストによる死者は幸いにも確認さていませんが、避難時の混乱による負傷者が確認されています、発表によりますと負傷者は14名と……』
私は出窓の方に寄って、この前の墜落現場を確認する。瓦礫の撤去工事が進められていた。
ニュースは続く。
「マイちゃん? 起きてる? 早く学校行かないと遅刻するよ?」
と、ドアの外からハルカの声、ちらりとまた窓から外を見てみた。街はとっくに通常の雰囲気に戻っていた。
「……今準備する! 先にご飯食べてて!」
私はパジャマを脱ぎ捨てる。そばにかけてあった制服を手に取り着替える。
私はニュースをチラリと見る、報道の情報からするに、この街にゴーストが出現するのは初めてではないらしい。
「はぁ……」
四日前、初めて邂逅したゴースト。
「あれと戦わなきゃいけないのか……私」
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「金曜日のあれ、大丈夫だった〜?」
通学路、街を行く学生らはそんな会話をしている、やはりみんなの主な話題は四日前、金曜日に出現したゴーストのことなんだ、と私は思った。
「……なんかみんな緊張感ないね」
私は素直に思った事を隣を歩くハルカに言ってみる。
「まあ、ゴーストが現れるのってそんな珍しくないからねぇ」
ハルカの返答。そう、実はゴーストというのは割とよく色々なところに現れる。私のこちら側の世界の地元となると東京府でも何度か出現した事がある。
「そうだけど……」
ゴーストは速やかに軍によって始末される、民間人がそれを目にする事はあまりない。
「昔はかなり苦戦して……ヨーロッパとかは大変な事になってたけど、今はあの、戦人機?だっけ?すごく強くなってるんでしょ?」
ハルカが空を見上げながらそう言った。私も歴史の授業でサラッと習ったり、この前資料集を読み返したりして知識としては知っている。
戦人機は二世代になってから性能が大幅に向上し、人類はゴーストに対してかなりのアドバンテージを持っているらしい。
「そうは言っても……ああして間近で見るのじゃ、やっぱり怖いかも」
「まあ……たしかに」
私の言葉にそう返すハルカ、実際私がこの世界で、ゴーストというものあんなに近くで見たのは初めてだった。そりぁ蒼グレで見たことあるけど……アニメで見るのと実際に見るのではまるで違う。
「キモかったなぁ……」
心なしかハルカも少し気分が落ち込んでいる雰囲気であった。
「そういえば今日、放課後基地に呼び出されてたよね」
そんな雰囲気を変えようと私は強引に話題を変えた。そう、あの中京基地に私たちは今日行かなければならない。
「ステラ計画……だっけ?私たち何をさせられるんだろ?」
そうして、私達はその謎の計画についての予想を話し合いながら通学路を歩んでいくのであった。
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「マイちゃんって、部活何処に入るか決めた?」
放課後、私の席にやってきてハルカはそんな事を言った。
「いや……まだだけど……」
「じゃあ見学して行かない?」
ハルカは私の手をとりニコニコしながらそんなことをいう、ていうか見学って……私たち基地の呼び出されてるでしょ、と言ってみたが「まだ時間あるし大丈夫大丈夫」と返ってきた、呑気だなぁ。
この学校は部活動が非常に活発らしい、運動系、文化系ともに優秀な成績を残してる部も多く、そこがこの学校の人気の一つでもあった。
私たちは時間まで学校内を回ってみた、でも正直、私は特にこれといってやりたい事もないし……
というか部活なんてしてる暇もなさそうなので適当に流し見した。ハルカは結構真剣に見学していたけど。
「この学校の部活設立の要件って結構緩いんだね、最低三人からでいいらしいよ?」
「ふーん……」
至極どうでもいい情報をありがとう。と、その時廊下の曲がり角から聞き覚えのある声がした。
「どうしてですかお母様! 私は赤坂家の一員として赤坂重工を導いていく覚悟が……! 次世代機だって私が設計……」
いきなりライバル宣言かましてきた変人、エリナの声だった。
赤坂重工……日本皇国にある最大級の重工業メーカーの一つで彼女はその赤坂家の御令嬢、とアニメと資料集の知識を頭の中で反芻する。
しかし、相変わらずテンプレみたいなお嬢様口調だ、本当にこういう人って実在するんだな……
「……向こうから帰ろうか、見つかったら絡まれそうだし」
私はハルカに小さな声でそう伝える。
「!? あ、お母様! 少し用事を思い出しましたので失礼しますわ……!」
しかし、彼女の耳は地獄耳だったようだ。どうやら今の聞こえてたらしい。そしてドタドタと私達の方に駆け寄ってきて……
「ちょっと! 綾瀬マイ! 盗み聞きとは感心なりませんわね!!」
かなり怒ってた、隣のハルカは小声で「私は……?」と言っていた、この人ハルカの事は目に入っていないのだろうか。
「ごめんなさい、聞くつもりは無かったんだけど……」
私はとりあえず素直に謝る。しかし彼女の怒りは収まる様子はなく。
「ごめんなさいで済んだら警察はいりませんわ! どう責任をとってくれるおつもりかしら!」
いや責任って、ちょっと話を聞いちゃっただけじゃん。私はさっさと逃げようと半歩下がった。だがそれがいけなかった。
「逃げるおつもりかしら……!」
彼女は私の右腕を掴む、そして私は突然のエリナの行動に驚いてバランスを崩してしまう。
「んぁっ!」
「きゃっ!」
私が押し倒される形で転んでしまった、そしてエリナは私の胸に蹲るようにしてうつ伏せになっていた……
既視感、どうしてこうなった!




