番外編 湯島ハルカ
私はまず、ホテルや旅館、泊まる所に来ると一番にお風呂に入る。なんか昔からの習慣だった。だからあの寮に着いた時もそうしたんだけど……
脱衣所についた時、お風呂場の中から歌声が聞こえた、聞いたこともない歌だったけど、凄く綺麗な声だなぁ……と思った。
どんな娘がいるのかな?ワクワクしながらお風呂場の中に入ったんだけど……
もにゅん
柔らかい感触が思い浮かんだ、私より随分と大きかった……格差社会を感じた。
あの娘の第一印象は、なんだか凄くピリピリとした印象を感じた。まず見た目からして不良みたいな人だったし。
髪はツインテールの金髪、多分染めてるんだろう。背は私と同じくらいかな……でもでも胸は……
目つきも悪かった、なんだか重いモノを背負っていそうな目つきたった。ギャルで不良、正直ごく普通の女の子である私にとっては、あまり関わるべきではないのかも知れないと最初は考えてしまった。
でも、せっかく同じ寮で、唯一の同じ学年の娘なんだから、友達になりたいなぁ……なんて。
おばあちゃんが言っていた、人は見た目によらないと。外見じゃなくて中身で人を判断するべきだと。
東京府は葛飾区の下町で生まれ育った私にとって、江戸訛りの私のお婆ちゃんは大切な存在だ。私も生粋の江戸っ子としてお婆ちゃんの教えは守って行かなければならない。
あの"アクシデント"の後、私はすっかり不機嫌になってしまった彼女と、なんとか仲良くなろうと朝食の間色々な話をした、どうやらあの娘は同じ東京府出身らしい、しかも荒川区、近い、何という偶然だろうか……とっても親近感を感じた。
話してみると意外とそこまで怖い人じゃないというのがわかった。そして朝食が終わった後、荷物の整理のため部屋に戻ってみると。彼女の部屋から歌声が聞こえた。む娘
マイちゃん、歌うのが好きなのかな?私はその歌に聴き入った。人を惹きつける様な歌声だと感じた。上手だし……何より心がこもっている気がした。本当に歌うのが好きなんだなって。
それから数日間、私はできる限りマイちゃんと一緒にいようとした。彼女はウザがってたけど、なんだかんだ文句も言わずに一緒に行動してくれた。
一緒に軽く街を散歩してみたりした、派手に名古屋観光でもしようと提案したけど、流石にそれは却下された。名古屋城の金のシャチホコ見に行きたかったのに……
そして、入学式の日。マイちゃんが通学路で変な人に絡まれた。財布を猫に取られた愉快な人だった。そして謎のライバル宣言。変わった人だった。
それから一週間、私は随分とマイちゃんと仲良くなれた……と思う、私が勝手に思ってるだけかもしれないけど。
そしてあの日……あの日は本当に大変だった、まさか私が軍隊のロボットに乗ることになるなんて思いもしなかった……
飛行機の中に入って、ロボットを見つけて、ゴーストに目を付けられる。色々な事が立て続けに起こって私は混乱した。
でも、マイちゃんが手を引っ張ってくれた。あの時、あの娘が私の手を引っ張ってくれなかったら、私は動けなかったかもしれない。
そして、やたら人間くさいリゲルと出会った。「あの娘、本当にAI?」なんて思ったりした。人間が演じてるんじゃ……
あの謎の化け物が現れた時、マイちゃんは震えていた。強そうに見えたけど。やっぱりこの娘も怖いんだ、なら今度は私が何とかしてあげなくちゃと、手を握って励ました。
あの娘は勇気を取り戻したみたいでリゲルの指示に従って歌ってくれた。
……あぁ、やっぱり私、この娘の歌大好きかも。
そうして危機はさった、化け物は消えていった。その後現れたユウミさんに基地に連れてかれたりしたけど、何やかんや捕まることもなく寮にも帰れた。
寮に帰った後、私はマイちゃんにお礼を言わなきゃと思って部屋を訪ねた、彼女は窓から街を眺めていた。
……この娘、凄く美人だよね。なんて、素直にそう思った。月夜と街の明かりに照らされなんだか落ち着いた雰囲気なので余計そう思ってしまった。
「……何?」
いけない、怒らせてしまったかな。私は彼女の隣に立って遠くの名古屋城を見つめる。
「今日はありがとう、マイちゃん」
と、お礼を言う。すると彼女はお礼を言われる様なことはしてない、むしろこっちこそありがとう。と、返してきた。
やっぱりこの娘、見た目ほど悪い子じゃない、そう思って私はマイちゃんの手を握った。マイちゃんの手は暖かかった。
……私はもっとこの娘と仲良くなりたい。そう決意した瞬間であった。




