88 水着
ミリムセイコウは、順調に滑り出し、裕介達はグレッグ研究所の開設に向けて動き始めた。
土地については、アリサの家の私有地がまだまだあると言うことで、それを借用することでゲルト郊外のグレッグ孤児院に近い場所に決定した。
「いい場所だな」
少し小高い丘にある建設予定地からは、アミル達が育ったグレッグ孤児院と、スライム飼育場の地表の運動場が見渡せる。こうして見ると、自営の農地もあり、領地と呼べるほどでは無いが、なんだかんだ言っても、元貴族なのだなと裕介は思う。
裕介とセフィアは、五日をかけて、地下室付きの研究所社屋と、パイロットプラント用の大きな工場を作った。アミル達三人も、土魔法は使えるので手伝おうとしたが、裕介とセフィアの大掛かりな魔法の前には、出来る事はほとんど無かった。
「やっぱり先生達は、すごいです」
「多分、今はミリムの方がすごいぞ。俺たち二人のいいとこ取りをしたからな」
「キミ達は育ち盛りだから、きっとまだまだ伸びるさ」
「ステラに頼んでおいたから、キミ達の経営のノウハウを教えながら、会社の経理をやってくれる先生が近いうちに来るハズだ」
「ありがとうございます」
「で、それはなんだ?」
アミルが額縁を持っている。
「コレは、この会社の理念です」
「どれ?」
もっと高く
もっと遠く
もっと深く
「ふーん、シャレているじゃ無いか! 研究所らしい」
「そうですか? ありがとうございます」
グレッグ研究所もひと段落着いて、いよいよ裕介とセフィアは出発の準備に取り掛かる。
準備と言っても釣りの旅であるから、身の回りの整理と釣り具の作成。旅は、馬は裕介が乗れないのでバイクで行く事にした。バイクならば、いつでもアイテムボックスに仕舞えるので、何かと便利なのだ。
それでもセフィアとずっと二人乗りというのは、無理がある。裕介は、マカロンに相談して、サイドカーを作った。
こう言う準備と並行して、ミリムも準備しなければならなかった。
裕介達は出発したら、先ずは北のベイグル海を目指すらしい。裕介は、店の商品開発に役立てるために、ミリムに海釣りを経験させておきたいらしい。
「一緒に行って良いのですか?」
「海までだけどな、増水期の終わりの川を釣りながら海まで降ろう」
店も軌道に乗り始めたので、一ヶ月くらいなら、ミリムが店を開けても大丈夫だろうと従業員達も言ってくれ、ミリムは嬉しくて仕方がない。
しかも釣三昧だと言うのだ。ミリムは鼻歌を歌いながら、毎日準備をしていた。
「ミリム姉ちゃん、ミリム姉ちゃん」
「どうしたの? アミル君」
「海に行くんだろ? コレ、僕からのプレゼント」
「何をもらえるのかな?」
「うっほん! 海では海水浴って泳いだり、砂浜で遊んだりするらしいんだ」
「そうなの? 初めて海に行くから知らなかった」
「それでね、サファイア樹脂で作った繊維布の試作品をベラママが縫ってくれたんだ。その時に着る服らしいよ」
ミリムは、もらった包みを開けてみる。カーッと恥ずかしさで真っ赤になった。
「コレってビキニじゃない!」
「うん、ベラママが言うには、海はあまり布地の多い服で入ると、溺れて危ないらしい」
「で、でも、こんなのを着るのぉ〜?」
「こんなのって言っても、ベラママだと普段着だよ?」
「あの人は特別!」
「せっかく作った、最初の製品なのに」
アミルは悲しそうな顔をする。
「わかったわよ。着ればいいんでしょう? 着るわよ」
「ほんと! ありがとう。感想聞かせてね。で、こっちがセフィア先生と裕介先生の分。姉ちゃんから渡しといてよ!」
ミリムは、裕介とセフィアにもらった水着を届けに行く。ちょうど、ステラも準備の打ち合わせに来ていた。
「あら、あらあら。コレはベラさんとお揃いですか?」
「海では、こう言う服の方がいいらしいです」
「おう、ビキニか! うん、基本的にベラさんの服は海で着るモノだもんな」
「そうなのですか? では、ミリムちゃん、ちょっと着てみましょうか?」
「えぇ! 今ですか?!」
「サイズが合わないと直しておかないとダメでしょ?」
奥に行って、セフィアとミリムは水着に着替えてきた。
「どうですか?」
長い黒髪に、緑の冷ややかな目、ピンクの薄い唇、濃紫色の水着、白すぎる肌、肩の魔法マエストロの紋様、大きすぎない胸、細いウエストに細いヘソ、小ぶりなお尻、長くて細い脚。
「おぉぉ! いい! いいぞぉ! セフィア!」
裕介は大興奮だ。
「サイズを測った訳でも無いのにぴったりです」
次はミリムだ。恥しそうに顔を赤らめている。
編み込みにした金髪、ボーイッシュな小顔に青い目が輝く発展途上正統派美型、肩の土の魔法使いの紋様が小さな肩を悪びれて見せる。色白はセフィアと同じだが、小ぶりな胸を包む黒い水着。細いウエストにアンバランスな大きめのお尻を、フリルのミニスカートタイプの水着が覆っている。
「かっ! 可愛いじゃ無いか、ミリム!」
「おっ、お兄さん…」
ミリムは恥しそうだが、裕介は、大興奮だ。
「なんだか、海が楽しみになって来たなぁ〜」
「どうして、私のが無いのよ!」
ステラが怒り出した。
「グレッグ研究所ね! うちから、人材も出しているのに! 明日、文句を言ってくるわ」
「イヤ、ステラ。お前のは凶器だから…!」
「何が、凶器よ! ここで出さなくて、どこで出すのよ!」
「仕事とプライベートはきっちり分けるとか、言って無かったか?」
「だから、コレは仕事よ! 新素材の布をテストするの!」
「お前のおっぱいでか? それは、テスト条件が厳し過ぎるだろ」
あわよくば、テストでポロリの不合格になれと、ちょっと思う裕介だった。




