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84 ダイヤ

 バイクとのタイアップが決まった事で、ミリムセイコウは開店もしていないのに忙しくなった。

 裕介は、そんなミリムを助けようと魔動モーター式の研磨機とグラインダーを作った。


 メガネ型の種類が少ないので、ほとんど金型での一発加工なのだが、どうしても微調整と研磨が必要になる。研磨剤はダイヤを裕介の魔法で粉状にして砥石の粉と油に混ぜた。それを固めたものがグラインダーの刃だ。

 なんと、驚く事にこの世界ではダイヤの加工方法が無いために、宝石としてでは無く砥石と同じ工具の扱いなのだそうだ。しかも、鉱山で結構出るらしい。それを知っていれば、小麦粉や、ベンガラで気長に磨く必要も無かったのだ。


 それを聞いた裕介は、ダイヤを沢山買ってきて粘土状にして、見様見真似のブリリアントカットを施し大粒のイアリングを作って、セフィアにプレゼントした。

 セフィアが喜んだのは、間違い無いが残念な事に、この世界では砥石の扱いしかされていないダイヤであるから、なんだかパチ物をプレゼントした感が裕介の中に残った。


「綺麗だとは言え、砥石の加工品のイヤリングをもらって喜んでくれるセフィアは優しいよな」

「そんな事は無いですよ、あなた。こんな綺麗なイヤリングを頂いて、私は全力で喜んでます」

「ダイヤってのは、元の世界では超高価な宝石だったんだ。ダイヤって聞くとどうしてもアクセサリーに加工してみたくってな」


「いえ、本当に素敵ですよ!」

 そばにいたミリムが、羨ましそうに言う。

「なんだ? ミリムも欲しいのか?」

「えっ! そりゃ、ほっ! 欲しいです!」

「ミリムちゃんも女の子ですもんね! あなた、作ってあげたら?」

 セフィアが笑いながら言う。


「セフィアがそう言うのなら、何でも作ってやるぞ」

「いいのですか?」

「うん、何が欲しい?」

「じゃあ、奥様とお揃いで」

「同じ物でいいのか? おまえは金髪だから、カチューシャとかでも映えるぞ?」

「いえ、同じ物が欲しいです」


 同じものを作るのなら、簡単だ。裕介は一時間もかからずに仕上げた。

「うふふ、お揃いね!」

「はい! ありがとうございます」

 セフィアがミリムの耳に付けてやる。ミリムは裕介からアクセサリーを貰えたのが嬉しくて、しかも公認で妻のセフィアとお揃いなのだ。


「アレ?」

 ミリムは、イヤリングを付けた途端に身体に流れ込む魔力の流れを感じる。立っていられなくなり、ペタリとその場で座り込んでしまった。

「どうした? ミリム? 大丈夫か?」

 裕介に抱き上げられ、そばの長椅子に寝かされた。裕介には分からないが、セフィアは何かを感じているようだった。


「あなた、ごめんなさい。少し、席を外してもらっていいかしら?」

「えっ? あぁ、じゃあ、お茶でも飲んでくる」

「ミリムちゃん、ちょっと失礼。見せてね」

 裕介が別の部屋に行ったのを確認して、セフィアはミリムの胸のボタンを外して、彼女の肩を見た。


「やっぱり!」

 ミリムの肩には、新たな紋様が現れていた。

「土の魔法使いね」

「えっ? こんな、紋様、今までありませんでした」

「でしょうね。私が迂闊だったわ。多分、ダイヤには魔力を伝達する力があるのね。きっと同じユースケさんの魔力で作った、揃いのダイヤのイヤリングを付けた事で、私の中のユースケさんの魔力と、私の魔力がミックスしてあなたに流れ込んでしまったのよ」


「そうなのですか?」

「多分。これは私の憶測に過ぎないけれど、あなたは魔力的には、私達の家族になってしまったのじゃ無いかと思うわ」

「家族ですか?」

 ミリムは、そう言われるととても嬉しかった。家族のいないミリムにとって、魔力的の条件付きでも憧れている夫婦の家族だと言われて、嬉しく無いハズが無い。


「お、お二人の家族になれるのなら、僕にとってはそんなに嬉しい事はありません!」

「そうね。私も大歓迎なのだけれども、ユースケさんに二人の妻が出来てしまう事になってしまいそうだわ」

「妻! そんな! 妻だなんて! セフィアさんがいらっしゃるのに、僕、そんな事は!」

「いえ、間接的にでも彼の魔力があなたに流れてしまったもの。あなたは、既にユースケさんに恋してるでしょ?」


「そんな! 許して下さい!」

 感づいていたのだ。ミリムさえ、ハッキリと理解していなかった仄かな恋心を、正妻は既に気付いていた。

「うふふ、許す許さないの話しじゃ無いのよ。私の魔力もあなたに流れて、もう、あなたは私達の家族なのですもの。幸い、この世界では一夫一妻で無いといけないなんて法は無いわ。でも、今はまだダメ」


「ぴえぇ! こ、殺さないで下さい!」

 ミリムは、黒髪の淫魔力の噂を思い出していた。

 それほどセフィアは深刻な顔をしていた。

 怖い! ミリムは怯えきっていた。


「何を言ってるの? あなたは? なぜ、私があなたを殺す必要があるのよ?」

「で、でも。師匠はセフィアさんにとって大切な人じゃないですか!」

「そうよ。とても大切。だから、あの人の夢は叶えてあげたいの。今は、あなたはその一歩を踏み出そうとしている時なの」

「は、はひ!」


「だから、私のお願いを聞いてもらえるかしら?」

「なんなりと!」

「あなたが、軌道に乗るまでは、今始めている事に専念して欲しいの。私がそうだった様に、このままだと、きっと半年もすればあなたは、あの人が恋しくて堪らなくなるわ」

「そうなのですか?」


「ええ、だから私にあなたを治癒させて欲しいの。そうしたら、多分、三年くらいはその気持ちを抑えられると思う。その間にこの仕事を軌道に乗せて」

「三年ですか?」

「ええ、あなたは土魔法のスペシャリストになった。ユースケさんよりも、強力な魔法が使えるハズよ」

「師匠よりも?」


「そうよ。錬金魔法も使えるんじゃ無いかしら?」

「錬金魔法!」

「だから、三年間頑張って! そしたら、三人で一緒に暮らしましょう!」

「いいのですか?」

「仕方ないわ。私の責任でもあるもの。でも独り占めしたら、やきもちは焼くわよ!」

「そんな! 滅相も無い!」


「じゃあ、治癒魔法を掛けていい?」

「はい、お願いします!」

「ユースケさんには、三年後、あなたを受け入れられる様に、私から良く説明しておくわ」


 こうして、裕介の知らないところで二人目の妻が確定した。

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