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81 ミリムセイコウ

 裕介はミリムとの話しをアリサに説明してアリサの承諾を得た。

「釣り具屋さんねぇ〜 閑古鳥が鳴かなければいいけど」

 アリサも心配そうだ。

「確かに、いきなり釣具屋を初めても、多分、ほとんど客は来ないだろう。だから、メガネ屋も一緒にさせようと思っているんだ」

「メガネですか?」

「ほら、池宮さんがいつも顔に掛けているだろう?」


「あぁ、あのガラスのレンズですね?」

「あれは、近視と言って目の焦点が合わなくなって、目が悪くなった人の為の矯正具なんだ」

「そうだったんですね」

「うちの父も最近、近くが見えにくくなったと言ってます。治癒魔法でも治らないんです。そのメガネを掛けると良く見える様になるんでしょうか?」


「多分、老眼による遠視ならば矯正出来ると思う。練習がてらにミリムに作らせてみよう」

「それなら、不自由している人もいると思いますので、流行るんじゃないでしょうか?」

「俺の勝手を言ってすまない」

「とんでもない、ミリムちゃんは良く働いてくれましたし、ミリムちゃんのお店が流行れば、うちの子供たちもお手伝い出来る様になると思います」

「それは、ミリムにとって心強い味方だな」


 裕介は、工房兼商店の立ち並ぶ一角で売りに出ていた工房を購入した。ここなら七人くらいは住み込みで働け、店も構える事が出来るだろう。

 石作り部分は、セフィアと二人で、一気に改築と修繕をしてしまい、内装をステラに紹介してもらった大工に依頼する。


「さてミリム、お前の店の屋号は考えたか?」

「えっと、カワハラセイコウでどうでしょう?」

「精工って誰に教えてもらったんだ?」

「セフィアさんです」

「うふふ」


「ハハハ! 精工はいいが、それならカワハラにせず、ミリムセイコウにしとけ」

「で、でも!」

「俺に気兼ねすんな。ミリムの店なんだから」

「そうですよ。ミリムちゃん、ちゃんと自分の店として自覚を持ってください」

「ピェ〜!!」


 セフィアは激のつもりで言っただけだが、ミリムは胃が痛くなるようなプレッシャーに感じていた。こんなにしてもらって良いのだろうか?

 しかし、二人がミリムに託したものは、そんなものでは済まなかった。商業ギルドに登録されたミリムセイコウには、資本資金として金貨五百枚が振り込まれ、ステラの推薦で通いの商売に長けた会計係りと売り子一人、職人見習い二人が用意された。

 ミリムは、社員四人の社長になった。


「まだ誰も釣りをしないのに、こんなに養えませんよ!」

 ミリムは、早速、裕介に苦情を言う。

「もちろんだ。だから、釣具以外にメガネも作ってもらおうと思っている。お客が来ないと面白くないだろう?」


「メガネですか?」

「お前は目が良いから分からないだろうが、世の中には目の焦点が合わなくなった人がいるんだ」

「病気ですか?」

「そう言う人もいるが、大抵は病気じゃない、食べ過ぎて太ったみたいなものかな?」

「でも、見えないと不便ですよね」

「そうだ。だからそれを矯正する道具がメガネだ」


 裕介は、紙に描いて目の焦点のズレとレンズによる矯正後の様子を説明する。

「なるほど、人によってズレ方が違うんですね」

「そう、だから、その人ごとに合わせてメガネを作るんだ。右目と左目でも違うからな」


 裕介は、その検査用レンズとそれぞれのレンズの金型を並べて置いた。近視と遠視には対応出来るが、乱視には対応出来ていない事を伝えた。

 検査用のレンズは石英ガラスだが、サファイア樹脂で作った方が掛けていて軽いだろう。樹脂製は自分も作った事がないので、一緒に作ってみようと平面のレンズ型で、溶かした樹脂に染料を混ぜて作ってみる。サングラスだ。


「あれ? ちょっと待てよ! 表に出て見よう」

 出来たレンズを通して、見ていた裕介が奇妙な事を言い出す。ミリムもセフィアも何があったんだろう? と怪訝な顔をするが、裕介はお構い無しだ。

 とは言うものの、外は晴れてはいるが氷点下の世界で寒い。

 裕介はレンズを通して見たり、外して見たりを繰り返して言った。


「やっぱりそうだ。これは偏光レンズだ。ミリムもセフィアも見てみろ、雪やツララの太陽のギラつきが抑えられて、くっきり見えるから」

「あら?あらあらあら!」

「師匠! 本当です!」

「これはいいものを発見したぞ! 釣りに持って来いなレンズだ。目の良い人でも必要になるぞ」

 セフィアは結婚して何度か経験したが、ミリムには初めての、裕介が新商品を思いついた瞬間だった。


「釣りをしていると、水面が光って目を開けているのも眩しい時がたまにあるだろ?」

「はい、あります」

「このレンズのメガネ、偏光サングラスと言うんだが、これを掛けているとそれが抑えられて、水中までもがある程度なら見えるようになるんだ」

「まさか…!」

「あなた、それは魔法ではないのですか?」

「ハハハ、魔法みたいだろ?」


 今度は、偏光レンズの仕組みを紙に描いて二人に説明する。

「あっちの世界では、そう言うフィルターをレンズの間に挟み込んだのだけどな」

「光も波だったのですね?」

「うん、一応な。波の長さで色が違うって言うな」


「釣り以外では、この季節に雪の中でも乱反射を抑えるから、このサングラスはいいんだぞ」

「ミリム、こりゃメガネと釣具を繋ぐいい発見が出来たな。練習がてらに、アリサパパの老眼鏡と一緒に、俺たちのサングラスも一つづつ作ってくれ」

「僕の初仕事です!」

 ミリムは楽しそうに笑った。

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