↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/325

58 山上湖

 シャツとベストにズボンと帽子。

 動きやすい恰好になったセフィアは、裕介の後をついて山を登っていた。


「川の上流に湖があるって聞いたんだ、一緒に探しに行くか?」

 夫にそういわれ、「ハイキングですね!」と浮かれたセフィアだった。

 サンドイッチを作り、夫のアイテムボックスに仕舞ってもらう。


 いつもの森の小道を抜けると、そこからは、魔物がいつ出てきても何もおかしくない、鬱蒼とした大木の森となる。

「あなた、魔法陣を書くので、それと私に魔力を通してくれませんか?」

「おう、いいぞ。何の魔法陣だ?」

「魔物が近づいたら、分かる魔法陣です」

「そんな便利なものがあるのか! すごいな、セフィア」


 拾った平たい小石を置いて、裕介はセフィアの腰を抱いて魔力を流した。

「あん…!」

 なんだか、魔力の受け取りが、どんどん気持ち良くなってきているセフィアから、思わず甘えた声が出る。セフィアは、その魔力で小石に魔法陣を焼き付けた。

「これに魔力を通して手に持っていてください。魔物がいれば石が赤く点滅します。点滅が早くなれば直ぐ近くにいるということです」


「魔物レーダーだな」

「レーダーって、一度聞きましたね」

「うん、前の世界にあった、遠くで標的を見つける機械のことだよ。同じような機械で、船の上から魚の群れを見つける機械もあったんだ」

「すごい道具があるんですね」

「そりゃ、宇宙から見て天気を予想することも出来る世界だったからな」


 セフィアは、裕介のこの前の世界の話しが大好きだった。それはまるで、夢がいっぱいのおとぎ話のようであったからだ。

 魔物レーダーがゆっくりと点滅をはじめた、近くはないが、やはり魔物がいるようだ。

「セフィア、側から離れるなよ」

「はい」


 しばらく行くと崖に出くわした。

「仕方がない、魔法で階段を作るよ」

「待ってください、私たち二人が乗っても大丈夫な平らな岩を作れますか?」

「おやすい御用だ」

「崖、ギリギリに作ってください」

 裕介は一畳ほどの平らな岩を作り出した。

「また、私に魔力を下さい」

 セフィアは、別の魔法陣を作った岩に転写した。

「じゃ、これに座ってゆっくりと魔力を通してください」

 セフィアの言う通りにすると、二人を乗せた岩はゆっくりと上昇し始めた。


「すごい、エレベーターじゃないか!」

「まさか、そういう機械もあったのですか?」

「あったぞ、高い建物の上下を行き来するんだ、百階とか」

「ひゃっ! 百階ですか?」

「うん、でも、これで、前に進めたたら空が飛べるじゃないか!」

「残念ながら、魔法陣では決められた動きしか出来ないんです」

「そのうち、俺がこれを使った空飛ぶ乗り物を考えてやるよ」

「はい! 出来たら乗せてくださいね」

「もちろんだ」


 崖の上まで来ると岩は水平移動をして止まった、そこからは、なだらかに下った岩と草原の斜面になっていて、そのまま山上湖になっていた。崖は山上湖の土手だった。

「すごい! 綺麗~!」

 二人は、エレベーターから飛び降りると、その土手からの景色に目を奪われた。

 緑の草原に、ポツリポツリと転がる、大きな白い岩。たぶん石英だろう。ところどころに、針葉樹の灌木があり、その先に青い透明な水を湛えた山上湖が広がる。遠目で見るので、湖は雪を湛えた中央山脈の山と空をリフレクションさせて、その湖の先はまだ細い沢で険しい山へと繋がっていた。


「魚はいますかね?」

「いや、たぶん、いないだろう。水が綺麗すぎると魚は住めないんだ」

「そうなのですか?」

「森も無くて、山の養分が溶ける要素がないから、餌もいないからね」

「でも、何か動いていますよ」

「ほんとだ。なんだろう?」


 湖の岸辺がなにやら、ウニャウニャしている。

「行ってみよう」

 近づくにつれ、魔物レーダーが激しく点滅し始めた。魔物であることは明らかだが、かと言って害があるようにも思えない。近づいてみると、それは青色のスライムだった。

 スライムの有効利用は、トイレに使うプープスライムで良く知られている。

「セフィア、このスライムは何か知ってるか?」

「これは、サファイアスライムですね。とても珍しい?ですよ。粘液がモノをくっ付けるノリとして使える他、それが固まると青い宝石みたいになるんです」

「そうか、それでこの湖が青いのか」


「きっと、そうですね。捕まえて帰りましょう」

「アイテムボックスは生き物でも入るのか?」

「ボックス内には空気がないので普通は無理ですが、スライムならば、あなたの魔法で密閉容器を作って水で満たしておけば、半年くらいは大丈夫だと思います」

「なるほど、じゃぁ、そうしよう」


 裕介は側の岩を使って、一抱えほどののツボを作った。それに網でスライムを十匹ほど掬って入れ、水魔法で満水にし、蓋をして密閉した。アイテムボックスに入れる。


「じゃぁ、お昼にしましょうか」

 お茶を沸かし、セフィアと裕介は並んで座ってサンドイッチを頬張った。

 青い空、青い湖、白い山の頂、緑の草原を吹く風。

「幸せですね」

 セフィアは裕介にもたれ、肩に頭をつけてそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。