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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第1章 ミステイク
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42 停戦条約

「グハハハ! ついにルルドを落としてやったぞ!」

 ザイス・ホフマン連隊長、いやここからは、将軍と言い換えよう、は上機嫌だった。

「バルドス、よくやった! これでこそ、カザット族の戦士だ」

「ハッ! 有難きお誉めに授かります!」

「ウミノ、そなたらも良くやった!」

「ハッ!」


「貴様にルルドとサーズカルを任せる! 少将として兵、千五百を持ってここを守れ!」

「それは…!」

 不服そうにバルドスが口を挟む。

「なんだ、バルドス? 不服か?」

「いえ…!」


「謹んで拝命いたします」

「ウム、フレーブとの交渉もそなたに任せる」

 海野は、これは左遷だなと思った。たったの千五百人で、フレーブと停戦協定を結び、このルルドを守れというのだ。ここに、ミステイクを釘付けにし自分達は王都を攻め政権を取ろうとしている。革命政府に自分達は邪魔なのだ。しかも、散々破壊したルルドの復興をも、自分達にやらせようとしている。海野自身、このホフマンのあからさまな行動に、実際のところ辟易していた。

「まぁ、いいさ。好きにやってみろ」

 海野は、心の中でつぶやいた。


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 俺たちミステイク六人は、今回の功績で一階級づつ昇進し海野さんは、少将、俺たち四人は大佐、アリサは中佐になった。

 その初仕事として停戦交渉のためにフレーブ軍の本陣にやってきていた。

 交渉だから、他の隊員はルルドにおいて、最小人数の六人で来た。例によってアリサは自分も行くと言って聞かなかった。

「停まれ~!」

 弓兵がずらりと合図を待って弓を引いて構える中を俺たちは進み、八千のフレーブ軍の前で敵の将の声で止まった。さすがに、この状況では俺たちも軽口を叩く余裕はない。俺は馬を降りてアリサを後ろに庇いながら立った。


「何用だ?!」

 フレーブの将が大きな声で聞く。

「ベイグル軍第一師団ミステイクの海野少将だ! 停戦の話し合いに来た!」

 海野さんが、答える。

「ベイグルが一方的に侵攻しておいて、停戦だと? 何を勝手なことを!」

「パストゥール、続いてルルドが落ちベイグルはいつでもフレーブに侵攻が可能となった! ここで一度停戦しようと提案しているのだ。フレーブにとって悪い話ではなかろう!」

「ぐっ!」

 応答していた、フレーブの将が歯ぎしりをする。


「そちらの司令官と話がしたい!」

「六人でか?!」

 わははは、とフレーブの兵たちが笑う。

「我らは、ベイグルによって召喚された勇者の集まり、この六人でもこの軍団にひけはとらぬ! 我らに攻撃の意図はない! 弓を収めよ!」

「いいだろう、勇者の力とやらを見せてみよ」

 将は、兵に弓を収めさせた。こちらの手の内を見てからでも遅くはないと判断したのだろう。


「じゃぁ、俺のを見せてやろう!」

 ニヤニヤしながらフレーブの兵達が見守る中、柿沼さんが前に出た。手を振りかざすと特大の火柱が、フレーブ兵の横並びの陣形に沿って兵の端まで立ち上がった。

 ニヤついていたフレーブ兵達は、火柱のスケールの大きさに途端に顔色が青ざめ、前の方は腰を抜かしている。

「分かってもらえたかな?」


「まっ、待て! 今、司令官に話しを通して来る」

 横柄な態度を取っていた、フレーブの将はこの場から逃げる様に司令官の元へと立ち去った。

 残された兵達は、五メートルほど後退し、最前列が盾を並べて構えている。


 間も無く、物腰の柔らかなフレーブの士官が兵の中に道を作りながら現れた。

「フレーブ第四連隊参謀長のピルケです。我らフレーブ司令官のぺリスボール侯爵がお話を聞くと仰せですので、ご案内いたします」

 フレーブの兵は後ずさりして、俺たちの前に道を開けた。柿沼さんの火魔法がかなりの衝撃だったのか、人でないものを見るような目つきで俺やアリサを見ている。その、痛いほどの視線が集まる中を俺たちは、司令官の幕舎に通された。


「私がフレーブ軍ベイグル方面総司令を任されているぺリスボールです」

「ベイグル軍第一師団ミステイクの海野少将です。フレーブとの停戦交渉を任されてきました」

「そちらは、ルルドを落としたばかりだと言うのに、なぜ今、停戦の話しが出るのですか?」

「こちらにも色々と事情がありましてね。これが、サーズカルのホフマン将軍とリンゲのマッケル将軍が署名した調印書です」

「策略ではなく、本気で停戦を望むということですか?」

「まぁ、策略だったとして、正直に話すハズはありませんが…」


「そりゃそうですね」

「停戦の話は、本当ですとだけお伝えしましょう」

「それで、そちらの条件は?」

「パストゥールとリンゲは、今のところお返しすることは出来ません」

「ふむ、そうでしょうね」

「その、捕虜については、全てお返しいたしましょう。残念ながら戦闘で亡くなった方も多数おられますが」

「ふむ、代わりにこちらは何を差し出せば良いのでしょうか?」


「そうですね、二年間の食糧援助でどうでしょうか?」

「数は?」

「二万人分では、どうでしょう?」

「出来ない相談ではありませんが、それではあまりにこちらに有利すぎませんか?」

「そうですね。但し、この休戦協定はこの通り前線司令官二人の署名でのみ有効なものです。国としての保証ではないということを、ご理解いただきたい」

「なるほど、そちらの事情というわけですか?」

「そうです。現状では、とお伝えしておきましょう」

「なるほど、損な取引きでは無いようです。前向きに検討いたしましょう」

「それでは、お互いが良き方向に…良い返事をお待ちしています」

「では! お帰りだ!」


 俺には、海野さんがどうして、こんな悪徳商人みたいな会話が出来るのか分からないが、聞いていて胸が悪くなるような交渉はうまく行ったようだ。

 その証拠に、後日、停戦提案はフレーブに承認され調印式を済ませて、フレーブ軍はパストゥールとリンゲの捕虜を回収して陣を撤廃し、国境警備だけに置き換えた。


 そして、サーズカルとパストゥールは、それぞれ兵千五百人づつを残し一万二千余りの兵を率いてゲルトに向けて出発していった。海野少将は、パストゥール、ルルド、サーズカル、リンゲ全部を任され、兵三千を束ねるフレーブ方面指令長官となった。

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