27 パストゥール陥落
「本当にやりおったの」
知らせを受けて、マッケル連隊長自らが確認にやってきた。
「この工事を完了させただけで、二階級特進だわい、大きな借りを作ったのう」
マッケル連隊長は、俺たちを前にして、そう褒めた。
この連隊長は、サーズカルのホフマン連隊長と比べると実力主義で公平な人のようだ。何度も会ったわけではないが、俺は好感が持てた。
「よし、戻って作戦じゃ、パストゥールを落とすぞ! 海野少佐、おぬしも作戦会議に参加せよ!」
「承知いたしました!」
海野さんが敬礼する。
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「長年の悲願であった、パストゥールを陥落させる日が来た! 勇者ミステイクの働きにより、パストゥールへの進路が我々の前に開いた! 皆の者! 臆するな! 今夜は手柄と褒賞が目の前に転がっていると思え! 出陣じゃぁ~!!」
一週間後の深夜。リンゲの広場でマッケル連隊長、いや将軍としての激が飛ぶ。夜襲で、パストゥールを攻撃することになった。たぶん、パストゥールの兵たちは、どこから敵が沸いてきたのかも分からないだろう。
俺たち勇者四人が先陣を切ることになった。パストゥールの目の前の壁、南壁を崩すためだ。
亜湖さんの闇魔法で、俺たち四人が壁まで近づき、俺の土魔法で南壁を砂に変える。
池宮さんの風魔法でその砂を吹き飛ばし、パストゥールに砂嵐を巻き起こす。
柿沼さんの火の手が上がったら、全軍突撃の合図だ。兵は南のトンネルからと、正面の両方からリンゲ全軍を持って一気に襲い掛かる手はずになっている。
「では、行ってきます」
トンネル内に四列横隊でずらりと並んだ兵たち。先頭にマッケル将軍、その後、リンゲの主力将校達がずらりと並んでいる。明かりは点けていない。
俺はトンネルの最期の壁を砂に変え、砂を出口に落としてトンネルから飛び降りた。
俺たち四人は手を繋ぎ忍び足で、山を下り南壁に辿り着いた。若し足音が聞こえたとしても俺たちは闇魔法で見えない。
城壁の上にに見張りの兵がいる。俺は兵ごと壁を砂に変え一気に崩した。
兵は何が起こったのかも分からず、転がり落ちてくる。そして「ゴォォ~!」という風の音と一緒に砂嵐に飛ばされていく。池宮さんの風魔法だ。
風が止み、吹き飛ばされた砂の場所から要塞内への突破口が開く。柿沼さんの大きな火が要塞内の建物の木製部分に火をつける。続いてトンネルからの進路を示すように、火の壁が立つ。
「突撃~!!」
「おぉぉ~!!」
ベイグル軍がトンネルから次々と飛び降りてきて、パストゥールになだれ込んだ。
剣のぶつかり合う音、何かが砕ける音。
物が焦げる匂いに混ざってどこからともなく血の匂いが鼻をつく。
叫び、悲鳴!
弓の弦の音。
何もなければ、普段は気のいい兵士たちが、命のやり取りをしている。
戦争とは、こういうものか。
俺は剣を構え、兵に交じって要塞に飛び込んでいった。
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朝が来て、パストゥールがベイグル軍に制圧されたことが、誰にもわかった。
リンゲに対面する正門は開かれ、中央の広場の焼け焦げた柱を中心に集めら蹲るフレーブの兵たち。
俺は、ミステイクの面々を探す。
グレッグ中尉が、俺を見つけた途端に抱き付いてきた。
「ご無事で良かった…」
「アリサも…」
「おうおう、朝から見せつけるねぇ」
柿沼さんと、池宮さんだ。
亜湖さんは、ヒルトン中尉と一緒に現れた。
海野さんは?
探すと、マッケル将軍やその取り巻き将校達と一緒だった。
マッケル将軍の勝利宣言が始まる。
「皆! ご苦労だった! 良く戦った! 悲願が今日、達成された、今日は勝利の美酒を酌みかわそう!」
「おぉぉ~!!」
「マッケル! マッケル!」
兵たちからマッケルコールが起こる。
手で、合図をして、皆を黙らせる。
「今日の勝利は、第一連隊から応援に来てくれた、勇者部隊ミステイクの多大な貢献による! 彼らに感謝を!」
「おぉぉ~!」
「ミステイク! ミステイク!」
今度はミステイクコールに変った。
俺たちは、なんとなくはにかむ思いで、このコールの中に立っていた。




