23 マッケル連隊長
「おぉぉ~! 来てくれたか!」
俺たちがリンゲに到着すると、早速、連隊長室に案内されマッケル連隊長と謁見した。
マッケル連隊長の話しだと、ラビル川のこちら側の湿地帯の道はなんとか目途が立ったそうだが、フレーブ側の工事に難攻しているらしい。
リンゲの南、つまり川の上流は川の合流地点となっていて、ベイグルの中を西へ流れるノビル川とラビル川本流の間の三角地がベイグル側の湿地帯になる。ラビル川本流の東のフレーブ側も同じように湿地帯が広がっており、その北にパストゥールの南端がある山地が居座っている。
今期は、この湿地帯を通り抜ける道をつけ、その山地の南、続いて山地を抜けるパストゥール南の攻撃用道路を作り、防御力の弱いパストゥールの側面から攻撃する計画らしい。
元々、正面からは難攻不落のパストゥールであるから、兵の数は三千ほどしか常駐しておらず、問題の湿地帯へは、パストゥールから山地を回り込むため、馬でも二日はかかるという場所だ。
定期的に巡回する、一個中隊程度の兵しかいないのだが、その兵と戦闘をしながら川向こうの湿地帯で道路工事を行うというのは、自殺に等しいことなんだそうだ。
そこで、土を自在に操る、土の勇者の俺がいるというミステイクの噂を聞きつけ、白羽の矢が立ったらしい。
サーズカルのホフマン連隊長にすれば、俺たちは全滅しても良い隊なので、この助成要望に気を良く答えたようだ。
「三日の猶予をいただけますか? その間で作戦を練ります」
海野少尉が回答する。
「うむ、わかった。君たちが頼みの綱だから、リンゲでは安心して過ごしてくれ」
亜湖さんが口を開く。
「望遠鏡の製造についてですが、こちらはどうなっているでしょう?」
「うむ、その件については工兵隊技術部のテクニ少尉が担当する。彼と相談してくれ。良いかな?」
「では、海野少佐と亜湖大尉には残ってもらい、ヒルトン中尉、彼らを宿舎に案内してくれ」
「ヒルトン中尉です。よろしくお願いします。では、こちらへ」
「おぉ~!」
亜湖さんと柿沼さんの目の色が変わった。俺たちに敬礼したのは、部屋に入った時から気になっていた、ステラに負けず劣らずのダイナマイトバディの小顔美人だった。おっぱいより顔の方が小さいのでは…
この二人の反応に、アリサは拳を握りしめ俯いてワナワナと震えているが、まぁ、気づかなかったことにしよう。
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三日後、作戦会議室に再集合した。地図を囲み海野さんが計画を説明する。
先ず概要を簡単に説明します。先ず我々に二個中隊二百人の工兵を預けてください。彼らは柿沼さんの火魔法で守ります。パストゥール真北の山から山の裏側までは、我々の元の世界の単位で一キロメートル、この世界では十ペクト。同じく湿地に作る道路も十ペクトです。
この山は、硬い岩盤で出来ています。この山をくり貫きトンネルを掘って、パストゥールまで通します。その掘削の岩を使って湿地に道路を作ります。
誰もが、そんな工事何年かかるんだと思う顔をしている。海野さんは無視して続ける。
今は、川の水量が多い時期ですので、湿地も水嵩が増えています。そこで、ラビル川本流を東方向に曲げて、パストゥールの裏側のフレーブを水浸しにします。
湿地は小高い丘でその方向を阻まれているので、丘を抜いて川にすればパストゥールへの街道は水浸しになり、補給路が立たれます。水はそのまま、下流の支流フラドル川に流れて行くでしょう。
この工事で湿地工事を阻む巡回も無くなり、湿地の水は抜け工事はスムーズに行えるようになるでしょう。
「それが出来るのなら世話はないわい!」
とうとう、マッケル連隊長がキレた。あまりの大工事。しかも水攻め。トンネル工事。あまりの大口、ホラにしか聞こえないのだろう。これが成功すれば、二十年間鉄壁だったパストゥールが、あっさり落ちる。
「出来ますとも、それが我々勇者の集まり、ミステイクですから」
海野さんが淡々と言い返す。
「七日下さい。パストゥールの水攻めをご覧にいれましょう。二個中隊の話はその後で」
俺たちは、翌朝、亜湖さんを置いてラビル川本流の上流に向けて徒歩で出発した。
言われるまでもなく、俺が川を掘るのだ。三キロほどだと聞いているので、川を掘るだけなら一日もあれば十分だ。撤退と川の氾濫を考え、フレーブ側から掘り進むことになっているので到着までは、二日ってところかな?
ヒルトン中尉とリンゲの将校五人がついてきている。
どうも海野少佐の話を眉唾だと思っているようで、スカした態度でいるのが気に食わないが、まぁ、工事を始めれば納得するだろう。




