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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第1章 ミステイク
21/315

21 望遠鏡作り

「第一大隊! 出撃~!」

 表門が開き、第一大隊が出陣していく。

 何の策もなく、いきなり力技で出ていくのか?と思うが、これは陽動作戦で第一大隊の中の三中隊、二百名の下流からの上陸、陣地の確保が目的らしい。下流のフレーブ側に小高い丘がある。その丘の奪取が目的らしい。その陽動に残りの八百名が正面から突撃していく。


 正面突破組の歩兵は、二十人一組くらいで板で筏を作ってそれを前にして幅一キロメートルほどの川の中を進んでいく。

 ラビル川の水量は少ない時期とは言え、兵は膝より上まで水に浸かっている。

 敵軍が弓を構えると、筏の端に取り付けた丸太を数名の兵で支えて、川の中で水しぶきを上げながら筏を立てた。弓兵は筏に開いた穴から敵兵に目掛け弓を放つ。

 仲間の兵士も、敵兵も弓を受け倒れる者が現れる。


 敵の正門が開き、騎馬兵が突撃してきた。川の中央よりフレーブ側の弓の届かない場所で待機していた、ベイグルの騎馬が応戦する。歩兵は、筏をひっくり返して川に流すと、槍や剣を手に騎馬兵を取り囲むように応戦する。

 この流れてきた筏を下流の上陸組が確保し、丘の上に確保した陣地の築城に利用するというのが、今回の作戦らしい。しかも刺さったものや、流れて来た弓矢を、大量に拾える。考えたものだ。墨俣の一夜城並みの作戦だが、上手くいくのか?


 筏を流すと、敗走する体を装いながら、八百名は撤退した。


 戦死者15名、負傷者150名。

 中央の陽動作戦のこちら側の被害だ。負傷者は治癒魔法でほとんどが治るが、死者は帰っては来ない。


 さて、結果から言うとこの作戦は失敗した。彼らは下流の川幅が細くなり二百五十メートル、水深が二メートルほどの場所にロープを四本張り、網をつけて筏を捕獲しようとしたらしい。

 筏は捕獲できた。しかし、水圧に負けてロープが切れてしまったそうだ。

 築城できなかった二百名は、目的を果たせなかったために撤退してきた。

 春先から準備してきた作戦が、あっけなく失敗した。


 サーズカルには、第七大隊までがあり、各大隊が約千人づつで構成されている。後の千人が本部や俺たちのような、特殊部隊、警備兵などだ。


 春先に、六、七大隊が出撃したと言う事で、今年は厳冬期を迎えるまで、第五大隊までが出撃して一周したが、結局のところ成果は得られずに終わった。

 毎年、こんな感じなのだそうだ。


-------------------------


 亜湖さんが説明して探してもらっていた、珪砂、ソーダ灰、石灰が見つかった。

 俺は詳しくはないが、珪砂は河原の白い砂ばかり集めたもの、石灰は鍾乳洞などがある場所で採れる石灰石、ソーダ灰は塩湖のある岩塩が採れる地域から採掘される、トロナ鉱石と亜湖さんは言っていた。砂と石灰石は分かるが、トロナ鉱石って馴染みがない。炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムの混合物でセスキ炭酸ナトリウムのことだというがチンプンカンプンだ。

 まぁ、天然のかんすいや重曹のことだと説明してくれた。かんすいって、ラーメンの麺に入れるヤツで、重曹ってベーキングパウダーの友達みたいなヤツだろ? ガラスの原料って、食えるのか?


 とにかく、石状の石灰石とトロナ鉱石とやらは、粉にして欲しいとのことで、それならお安い御用だ。

 トロナ鉱石をお茶を作るように煎るようなことをして、次は水に溶かして、ろ過させて乾燥して、やっとソーダ灰とやらになったらしい。これが砂を溶かす時の温度を下げるんだそうだ。

 因みにこれは、石鹸の材料にもなると、石鹸も作ってくれた。まぁ、クリーンナップ魔法があるから用はないけど。


 俺と柿沼さんも駆り出され、ルツボという溶けたガラスを入れる磁器容器や、それを焼く窯とガラスを溶かす窯を作らされ、柿沼さんの火魔法でガンガン焼いた。分量を色々試して、やっとこの配分というのが決まるまで、一月かかったが厳冬期で外は吹雪いている季節だが、工場の中は暑いくらいで幸せだ。


 亜湖ガラスの第一号をルツボから、俺の作った金型に流し込み、やっとレンズの原型が出来た。火魔法は、この程度の小さな規模なら一般の火魔法でも可能だそうで、安心だと言っていた。ガラスの製造には沢山の熱が必要で、地球ではコークスや石炭が登場する前は、森を焼き尽くしては移動するというような、森林破壊を繰り返していたそうだ。


 後は、とにかく磨く。この研磨剤も亜湖さんが頼んで探してきてもらったそうだが、銅鉱石が採れるあたりで作られる赤色の顔料だそうで、ベンガラというそうだ。ほんと博識だ。

 地球では先史前からある顔料なので、この世界にもあるだろうと思ったらしい。これでひたすらレンズを手磨きする。もちろん、俺たちではなく、工務部隊の人たちだ。

 銅板で作った筒にレンズを収め、この世界産の望遠鏡、続いて双眼鏡が作られた。

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