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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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189 メスケレフ修道院

 翌日、セフィアを連れてヘイズ枢機卿と面会する。ミリムグラスを外したセフィアを見て、ヘイズはワナワナと震えたかと思ったら、跪き胸の前でトライアングルを切った。

「おぉぉ! 女神メスカリ!」

「いや、枢機卿違うって、うちの嫁さんだって!」

「嫌々、メスカリに違いありません。罪深き人々を許したまえ!」

「違います。私はただの人間です」

「おぉぉ、女神のお声を初めて聴きました。メスカリ〜!」


「枢機卿、しっかりしてください! メスカリ像は俺のイメージで作ったものだから!」

「ハッ、そうでしたね。あまりにメスカリ像とそっくりだったもので、我を失いました。失礼致しました」

「こちらこそ、恐縮致します」

「いや、多分、法皇様でも跪いてしまうでしょうな。庶民に至ってはパニックになるでしょう。それほど、ユースケ殿の作られたメスカリとパミル像は衝撃だったのです」

「ホントに、どうもすみません」

 セフィアが謝っている。


「今日、来たのはセフィアを紹介するためではなく、折り入ってご相談があるのです」

「ほう、ユースケさんの頼みなら、出来る事でしたらなんでも聞きますぞ」

「スレブの新しい産業についてです」

「それは、良い話しですな。ご存知の通り私どもは経済について疎いですからな」

「それについては、パルージャ商会に話を通してあります。彼らを窓口に他国と取り引きすれば、少なくとも損はしないでしょう」


「ありがとうございます。それで、どういった産業なんでしょう?」

「魔力発電所です。スレブに魔力電池の魔力を充填する工場を作ります。詳しい事は言えませんが、魔力を半永久に供給出来る設備を設置します。まっ、メスカリの恵みとでも思ってください」

「メスカリの恵みですか?!」

「工場で働く人は、魔方陣を描いた新しい電池を作り、供給される魔力を電池に充填するだけです」


「魔力電池とはどう言うものですか?」

「石か何かに魔方陣を描いただけのものですが、大人十人分以上の魔力を保有します」

「それは、龍石では無いのですか?」

「龍石ほどの魔力はありません、人が便利に扱える程度ですが、まぁ、人工の龍石だと思ってください。これを一番欲しがるのはベイグルでしょう。それが供給できるスレブを他の国々はおいそれとは扱えなくなります」

「それが、半永久に生産出来ると? それは、まさにメスカリの恵みではありませんか!」

 ヘイズは、またセフィアに向いてトライアングルを切っている。


「それで、その発電所を作る場所は何処か無いでしょうか? 出来ればトンネルからさほど遠くない場所で」

「そうですね。トンネルの入り口近くの山の麓にメスケレフ修道院という古い修道院があります。院長のピストも公正な人物ですし、修道者達も敬虔な者たちですが、いつも粗末な暮らしに耐えています。メスカリの恵みがあるとすれば、そういう者たちにもたらされればと思うのですが」

「あぁ、あの修道院ですか、修道院なら秘密も守れるし、人材もあるというのであれば良いかも知れません。一度見学させていただいてよろしいでしょうか?」

「もちろんです。では明日にでもメスケレフ修道院に参りましょう」


 翌日、裕介とセフィア、ヘイズはメスケレフ修道院に到着した。裕介とセフィアだけでは、簡単に中に入れる場所ではない。

 修道院長室に通され、セフィアは初めてミリムグラスを取る。セフィアを見て驚く修道院の人たち、全員がその場に平伏して、「メスカリ~!」と昨日のヘイズのように、トライアングルを切っている。

「まぁ、こうなるわな」

「皆さん、私はメスカリではありません。お顔をお上げください」

 セフィアが言うと、みんなそうなのか? という顔をするのだが、裕介やヘイズが言っても聞かないのだ。


「ペンテコステの丘のメスカリ像は、夫のユースケが私と娘をモデルにして作ったメスカリ像です」

「いやいや、あのメスカリ像は自分で動いてあの場所に鎮座されたのです。あれは本物のメスカリに違いありません」

 製作者とモデルが違うと言っても、信じないのだ。ユースケもセフィアも段々面倒くさくなってきた。

「今日は、この修道院とスレブに女神メスカリの恵みを届けるために参りました」

「なんと! 我々にご加護が頂けると! やはり、あなた様は本物のメスカリに違いありません」

 セフィアは苦笑している。


「この修道院に魔力発電所を作ろうと考えています」

「ヘイズ枢機卿、その魔力発電所というのは?」

「私も計画を聞いただけですが、人口の龍石を作る場所であるそうです」

「人口の龍石ですか? そんなもの初めて聞きました」

「魔力電池というものです。魔法陣を描いた石に、大人十人分の魔力が封じられたものだと理解していただければ」

「大人十人分ですと?!」


「その作った魔力電池を、パルージャ商会を通じて市販します。今、ベイグルやオスタールのアミザでは私とセフィアが作った魔動モーターで動く、馬の代わりになるバイクや船を生産しています。今、私が工事を行っている中央山脈横断鉄道の列車も同じ魔動モーターで走ります」

「馬が不要になるどころか、船も動かせると?」

「そうです、これらの魔力は普通の人の魔力では八時間稼働が可能ですが、魔力電池を用いればその十倍の稼働が可能になり、魔力も強いので電池を二つ装着すれば、今は勇者しか動かせない、例えば空飛ぶ船や馬車も動かせるようになります」

「空を飛ぶ船や馬車ですか?」


「魔力電池を使うことで、これまで不可能だったことが出来るようになります。いかがでしょうか?」

「それをあなたは、ベイグルではなくこのスレブで作ろうと? それは、確かにメスカリの恵みに違いない!」

「メスカリ~」

 ピスト院長以下のその部屋にいた修道者達全員が、跪いてセフィアを向いて祈りを捧げた。


「まだ、私以外の枢機卿や法皇様の許可を頂いてはいないので、許可を頂いてからの話しになるが、どうだろう?」

 ヘイズがピストにやる気はあるかと聞く。

「是非、お願いします。メスカリの恵みを世界中に伝道することが我らが務め。それが、メスカリの恵みだと知れば信者も増えることでしょう!」

 裕介は、ああそうか、そっちに行っちゃうかと思うものの、逆に暴利を貪るということもないだろう、後はステラに任せておけば適正な取引を行ってくれるだろう。と思った。

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