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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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187 パパ大好き

 残った問題の魔力伝達が、どのくらいの距離可能かと言う実験だ。裕介が面白いことを言い出した。

「リーズに手伝ってもらおう」

「リーズにですか?」

「俺が片方のダイヤを持って、船で沖に出て魔力を送る。セフィアはもう片方のダイヤを付けた、このライトが光るかどうか確認してくれ」

「はい、それでリーズは?」

「光ったら、『パパ大好き』と念話を送らせてみてくれないか。『パパ』は、しょっちゅう言うから光ったかどうか分からないからね。ちゃんと大好きまで言わせてよ」

「出来ますかね?」

「出来なければ、何回光ったかだけを数えてくれていればいいよ」


 最近リーズは、大好きと言う言葉を覚えたようだが、裕介はまだ、パパとセットになったのを聞いていない。まだリーズの中では、組み合わせて使うと認識されていないのかも知れない。裕介は、単純に娘にそう言って欲しいのだ。


 裕介は、先ずは島から一キロ地点で魔力を送った。家にいるセフィアとリーズの側のライトが点灯する。

「リーズ、『パパ大好き』と言ってあげて下さい」

「パパ… パパ…」

「大好きですよ」

「だー、しゅき」

「パパ大好きです」

「パパ、だーしゅき」


「キター!!!」

 裕介は船の上で、天を仰いでガッツポーズをしていた。

 セフィアの側のライトが高速点滅する。

 次に二キロ地点。

「パパ、だーしゅき」

 更に五キロ地点。

「パパ、だぃしゅき」

 八キロ地点。

「パパ、だいしゅき」

 十キロ地点。

「パパだいしゅき」


 結局、二十キロ地点まではダイヤは魔力が飛ばせることが分かった。それから後は、魔力の送信と関係なく「パパだいしゅき」が聞こえるようになった。


「リーズ、ただいまぁ〜」

「パパだいしゅき」

「パパもリーズが大好きだぞ〜」

 もはや、テストはどうでもいいとさえ思えたが、とりあえず二十キロは確認出来たので、次はこれをどうやって伸ばすかだ。スレブに発電所を作るのなら百キロは飛ばしたいところだ。


 ダイヤの粒を大きくすれば、飛距離が伸びるのかと言う実験だ。裕介はもう錬成魔法でダイヤも作ることが出来る。先ずは石を粘土にして、バレーボール大の大きな球を作ったが、球とか単純な形だと偶然に他に転送される可能性がある、かと言って複雑すぎると複製が難しくなる。

 単純であまり世の中に無いもの。そうだ、メビウスの輪にしよう。


 五十センチくらいの厚肉のメビウスの輪のモニュメントを作る。空間魔法で型取りして複製、そして二つをダイヤに変える。

「不思議な形ですね」

「メビウスの輪と言うんだ」


 そう言いながら、裕介は紙で同じものを作る。

「見ててよ、こうやって表面をなぞって行くと、いつの間にか裏側になっていて、そのままなぞるとまた元の位置に戻ってくるんだ」

「不思議ですねぇ」

「そうだから、裏表も無い無限や永遠の象徴とされる形なんだ。半永久の魔力発電所にぴったりだろ?」


「はい!」

「この大きさで百キロ飛べば、これで完成だ」

 大きくすれば、魔力の飛距離が伸びるのかどうかは知らないが、まっ、実験してみれば分かる。

「明日カダラ灯台の研究所から、魔力を送ってみるよ。またリーズにお手伝いしてもらおう」


 裕介は、水先案内列車と緊急停止装置の試作品とメビウスの輪を持って、翌日カダラ灯台の試験路線研究所に行った。家からだとほぼ百キロだ。

「ユースケさん、大変だったらしいですね」

「うん、えらいものが出て来ちゃったよ、お陰で路線も勾配をつける事になっちゃった」


 とりあえず、魔力伝達の実験だ。裕介はメビウスの輪を、アイテムボックスから出してテーブルの上に置き魔力を込める。

「パパだいしゅき」

「キター! いや行ったぁ!」

 これで百キロ実験は完了だ。魔力伝達装置は完成した。


「何ですか? それ?」

「魔力伝達装置だ。百キロ飛ぶ」

「百キロって、千ペクト? マジで?」

「うん、これだけ飛ばせなきゃ魔力発電所が出来ないんだよ」

「相変わらず、凄いこと思いつきますね。日本人ってみんなそうなんですか?」

「どうだろう? でも、便利な物を沢山知ってるし、沢山作っているのは確かだよ」


「それより、今日きたのはこっちの用だ。懸案だった安全対策だ」

「おっ、期待していいですか?」

「もちろん。実際の路線でテストしてくれ」

「待ってました!」

 レア君もニヤニヤ笑いながら寄って来る。アルバスで雇った工員達も集まって来た。


「魔力電池の実用化の目処が立ったからな、中央山脈横断鉄道ベイグルスレブ線は、すべて魔力電池で走らせる」

「運転士の魔力は必要ないんですか?」

「そういう事だ、魔力電池一つで運転士十日分の魔力が使える、しかも魔力も俺並みに強い」

「かぁ! そんな便利な物が出来るんですか?!」


「安全対策だけど、その魔力を使って運行する列車の三ペクト前を、無人の水先案内列車を走らせるんだ。コイツが脱線したり衝突したりすれば、自動緊急停止させる」

「なるほど! それだとほぼ百パーセント安全ですね」

「そうだろ? 三ペクトの間、ほぼ時間にして二十秒の間に物が落ちて来るのなら、それは崩落が列車を直撃した事になり、いくらなんでも不可抗力だ」

「二十秒ですか… そりゃぁよっぽど運の無い奴ですね」


「だからこの研究所では、緊急停止を確実にするテストを行なって、この二十秒以外の事故は無い様に煮詰めて欲しい」

「了解です! やっぱりユースケさんと仕事するのは楽しいですねぇ〜」

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