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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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186 緊急停止装置

「フリーマン教授、遺跡の魔道具って言うのは無人で動くんですよね」

「はい、仰る通り、遺跡に住人はおりませぬからな」

「ってことは、センサー、つまり人が入って来たことを感知する道具とか、そのフラグを受け取って別の魔道具を作動させるプログラムのようなものがあるって事ですよね」


「センサーとプログラムですか? その言葉は初めて聞きましたな。仰る内容から推測すると、魔力を持つ生き物が、そこに立った事を条件に作動する魔方陣と言うものはあります、そういうものでしょうかな?」

「例えば扉の前に人が立つと、自動的に扉が開くというような?」

「そうですね。魔法陣についてはセフィア様の方がお詳しいでしょう。古代遺跡の中はそのようなものだらけです。どこから魔力を供給しているのかと思っていましたが、件の魔力電池なのでしょうな」

「ひょっとすると、もっと凄い古代魔道具があるのかも知れませんがね」


「簡単なものなら、直ぐに作れますよ」

 黙って聞いていたセフィアが、飲んだくれて後輩を家に連れ帰った時、みたいな事を言いながら立ち上がり、部屋の隅に置いたランプを持って戻ってくる。裕介が作ったホタルブクロの形をあしらったスタンドだ。

 セフィアは床に魔方陣を描き、ランプの魔方陣を書き替えた。

「ランプに魔力を注いでみてください」

 裕介は魔力をランプにかけるが、ランプは何も変化しない。

「床の魔方陣の上に魔力を持った人が乗ると、ランプの魔力電池が起動するのです」

 リーズがヨチヨチと歩んで来て床の魔方陣の上に来ると、床の魔方陣が一瞬光りスタンドのライトが点灯した。

「ぱあぁ~!」

 リーズは自動点灯に喜んでいる。魔方陣から出るとライトは消え、また乗ると点灯する。


「そうです、こういう魔法陣です。素晴らしい!」

「すごいにゃ、そんなに簡単に出来るものにゃ!」

「なんだ、セフィアに聞けば良かったのか」

 裕介は、頭をかいて笑った。

「この床の魔方陣は、小さな魔力にでも反応するので、セフィアノートにはありません。魔力電池は基本は普通の魔力電池です、それに連動式とランプの魔方陣を加えました」


「古代遺跡の魔道具も、基本は同じだと思いますよ。魔力電池自体が古い魔方陣で、一般の人の魔力では充填出来ませんから」

「そうか、龍石を用いる事を前提にしていたから、古い魔方陣には魔力が沢山必要だったのかもな」

「あっ、そうかも知れません。セフィアノートの魔方陣はそう言うものばかりですから」


「となると、これから魔力発電所が出来て魔力電池が普及し始めると、セフィアノートの魔方陣も一般の人に使えるようになるって事だよな」

「おぉ、ユースケさんの仰る通りです。遺跡の魔道具も一般的に使えるようになると言う事ですな」

 フリーマン教授が平手を拳骨で叩き、ガッテンガッテンしている。


「あなたは、どうしてそのセンサーとプログラムが必要なのですか?」

「うーん、マカロン君達と鉄道の安全運行についてトンネルを掘りながら、良い方法を考えることにしているんだけど、センサーやプログラムがあれば、自動で停車させるような事が出来そうな気がしてね」


「たとえばだけど、三ペクト先の線路上に障害物が有れば、自動でブレーキが作動するとか、そんな感じですね。だから遺跡から、何かヒントがもらえればと思ったんです」

 裕介はフリーマン教授に質問の意図を説明する。

「三ペクトですか? 随分距離がありますな」

「ええ、列車が緊急停止するのに二ペクトは必要なんです」


「ふむ、間違えた石を踏むと、矢が飛んでくる仕掛けは、せいぜい二十メルですな」

「えっ?! 古代遺跡ってダンジョンなの?」

「選択する通路を間違えると、後ろから石が転がってきて挟まれる仕掛けも、せいぜい五十メル」

「それって有名なやつじゃん!」

「下から炎が立ち上がって来る飛び石は、部屋の入り口に魔方陣がありましたから、あれで一ペクトほどですな」

「そんな飛び石を百メートルも飛び渡って行くの?」


「そう思えば、最奥の間の奥の石像の目から光線が出る仕掛けは、ニペクトほどありましたかな? 一緒に行ってみますか?」

「いえ、遠慮しときます」

「申し訳ありませんな、お役に立てなくて」

「いえ、フリーマン教授、立派な勇者ですよ」

 古代遺跡って、めっちゃ怖いところじゃんか!


「確かフリーマン教授の著書の中に、そう言う遺跡探査の為に魔法人形を先行させると言うのがありましたよね」

「そうですセフィアさん。我々は先ほどお話しした様々な危険を知る為に、魔法人形を使って先行調査させます。幾通りも人形で先に試して、危険を潰してから前に進むのです。でないと、命が幾つあっても足りませんからね」

「それはどう言うものなのですか?」


「魔法操り人形ですね。木で作った人形の駒に魔方陣を描いて後方から魔力を送って動かすのです」

「それは最大どのくらいの距離で操作出来るのですか?」

「それだと、魔力を送るだけですから三ペクトくらい離れても大丈夫なんじゃないでしょうか? 魔力の強さによっても違います。でも見えないので実際にはそんな距離では使いませんよ。せいぜい、五十メルですかな」


「人形が壊れたり動かなくなったことは、分かるんですか?」

「魔力が変わるので分かりますが、基本は目視です」

「それは魔方陣でも出来ますか?」

「単純な動きなら、元は遺跡の石の衛兵を動かしていた魔方陣です。入って来た魔力に対して槍を構えてにじり寄ると言う単純な魔方陣で、倒されると次のが動き出す仕組みでした」


「それなら私も知ってます。一組の人形を一個の魔力電池で動かす仕組みでした」

 セフィアも頷く。

「ダイヤも使わずに魔力を飛ばせるのか?」

「私が杖で描く魔方陣照準に、魔力を飛ばして爆裂させるのと同じです。でも、話しておられたセンサーのような物では無いですよ」


「なんか使えそうな気がして来た。三ペクト前を走る無人の列車はどうだろう? それをその人形みたいに、本体の列車から魔方陣で自動操作するだろ?        

 真っ直ぐ同じ速度で走るだけだから、遺跡のと同じレベルかな? その無人列車が何かにぶつかって止まり魔力に変動を生じたら、自動緊急停止させるとか?」


「なるほど、センサー代わりの水先案内列車を伴走させると。確かに前を走る列車の後をついて行くのであれば安全ですな」

「にゃるほど! ユースケさんやっぱりウチで教鞭をとってくれにゃいかなにゃ?」

「それなら、アルバスでもお願いします!」

「いや、俺はただの釣り師ですから、遠慮しときます」


 数日後、フリーマンとミケネス、ステラは戻って行き、裕介はセフィアと二人で、この水先案内列車の魔方陣と緊急停止装置について設計と実験を繰り返したのだった。

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