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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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180 龍の墓場

「なるほどのう、鉄道というのはこう言う乗り物じゃったか」

「確かに快適で便利ねぇ〜。こんな乗り物が出来るなんて長生きしてみるものねぇ」

「ちょっと感動したにゃ」

「これはアペリスコまで、是非、作ってもらいたいものですな」

 初めて列車に乗った探検隊の面々は、口々に褒めてくれている。


「到着しました」

 鉄道の終着点は、先日トンネルを塞いだあの場所だ。未だ、あの時のままになっている。

 魔力探知が出来るものは、早速始めたようだ。

「確かににゃ、ユースケさんが言う通りこれはキノコっぽいにゃ」

「うん、魚みたいな魔力もあるのう、ユースケの言う強力な魔力だまりまではワシの探査は届かぬが、確かに魔素が濃いいわい」

「ほんと、こんな地中に! 驚いたわ」


 六人は残り五百メートルを歩いて進み、裕介が塞いだ部分まで来た。

「じゃあ、開けますよ!」

 裕介はトンネルを地下空間に開通させる。


 目の前に幻想的な風景が開けた。


 先ずは瑞々しく、清々しい空気だ。トンネルの澱んだ空気から突然抜けたので、空気が美味しいと最初に思った。

 地面を覆うキノコとシダが、オレンジ、黄色、緑、青、紫に光っている。月明かりよりずっと明るく、思っていた以上にカラフルな地面がずーっと続いている。それほど遠くまで見渡すことが可能なほどに明るい。

 天井と壁には天の川のように光る鉱石が散りばめられていて地面よりも明るく輝いている。


 左手つまり西側は大きな湖だ。深さは魔力探知では二十メートルほど、天井や壁の光りを写して輝いて見える。夜光虫でもいるのか、時々、水面の畝りに波打つように青色に光り輝く。畝り? なんで? 風も無いのにと思ったら鳥だ。水際に自分で淡いピンクに光るフラミンゴのような鳥が何羽も立って歩いている。その周りを黄色く光るカモメのような鳥が飛んで着水する。その時に波が立ちそれに合わせて水面が青く光るのだ。


 右手はかなり奥まであるが、天井や壁が天窓のように抜けた箇所が何箇所かある。その穴から差し込む光りがまるでレンブラント光線のように、スポットライトさながらに地面を照らす。その部分のみ気温が高いのか、地面から湯気のように霧が立ち上り、その霧が光線を乱反射させて幻想的に見える。

 奥へはなだらかに登りになっているようだ。つまりは一番低い西側に水が溜まって湖になったのだろう。


 全員が言葉をしばし失った。

「なんともまぁ! これほどの物とは!」

「凄いにゃ、光るシダや鳥にゃんて初めて見たにゃ」

「遺跡では無さそうですが、圧巻ですな」

「ここに俺たちの街を作りたいと思っていたが、この自然はこのままにしておきたいのぅ」

「同感ね」

 グィネヴィアとミルトの意見があっている。


「じゃあ、探検に出かけましょうか」

「こんなキノコとシダの中を進むのかにゃ?」

「いや、船で飛んで行きます」

「飛ぶだと? 船でと言ったか?!」

 ビスタルク夫妻は分かっているが、他の人は見たこともない。裕介は、アイテムボックスからミセスセフィアを取り出した。

「百聞は一見にしかずです。みなさん乗って座って下さい」

 ビスタルク夫妻に続いて、他の三人が乗り込み座る。裕介はミセスセフィアを空中に浮かせた。


「にゃにゃにゃ! にゃんと!」

「空を駆ける船ですか?! こっ、これは古代魔法ですか?」

「こりゃ、たまげた!」

「妻が描いた魔方陣が焼き付けてあるんです。でも飛ばすのは俺の魔力じゃ無いと無理ですが。でも、ここは魔素が濃いので、ひょっとすると他の人でも飛ばせるかも知れません」


 定員オーバーの六人を乗せた船は、十メートルの高さまで浮かぶと、東側の魔力だまりを目指して飛び始めた。最奥までは三十キロはある。ゆっくりと安全確認と観察をしながら進む。


「動いている特別大きな魔力も無いので、いきなり食われるような生物はいなさそうですね」

「そうだにゃ、スライムと虫と鳥くらいしかいないみたいだにゃ。動物は強い魔力が怖くて入ってこないのかも知れにゃいにゃ」


「鉱脈が壁にはっきりと出ている。ここは、宝の山だの」

「荒らしちゃ嫌よ!」

「さっき、このまま置いておきたいと言ったろうが、近くは掘ってもこの空間置いておくわい」

「あら、アンタ、話しが分かるドアーフじゃない」

「グィネヴィア、他の男に色目を使わんでくれ!」

「ははは、心配するな爺さん。エルフ相手に、それも人妻を相手にするほど、わしゃ不自由はしとらん」

「ふん! やっぱりドアーフね!」


「しかし、この船は凄いですな。奥さんが魔方陣を描かれたと?」

「ええ、セフィアは魔方陣に詳しいんです」

「ひょっとして、セフィア・エスパール様ですかな?」

「えっ?! フリーマン教授、セフィアをご存知なんですか?」

「いえ、お目にかかった事はありませんが、魔方陣の権威ですから、お名前くらいは知っておりますぞ」


「えっええ?! セフィアが権威?!」

 それを聞いて、裕介は初めてセフィアに会った時にアリサが言った事を思い出した。そう言えば、魔方陣に関しては、この世界のトップクラスだとか、そんな事を言っていた。知ってる人は知っているんだなぁ〜。

「今は、スレーブル湖のペルテ島で娘の面倒をみてくれています」

「そうですか、是非、一度お会いしたいものですな」

「トンネル工事が終わったら、遊びに来て下さい」

「よろしいのですか?」

「ええ、彼女も魔方陣の使い道に苦労しているので、喜ぶと思います」

 裕介はセフィアノートの残念魔方陣の数々を思い出していた。

「あたしも遊びに行っていいかにゃ?」

「ミケネス教授も是非どうぞ」

 なんだか、ペルテ島がアカデミックな感じになりそうだ。


 徐々に、キノコとシダが薄れて地肌の岩盤が見え始めた。

 身の毛がよだちそうな強い魔力を感じる。長くいると精神に異常をきたしそうだ。


 最奥の壁際まで来た。中をミセスセフィアで通り抜け出来そうな大きな肋骨が幾つも転がっている。長い首だったと思われる化石化した骨、その先に横たわる大きな頭蓋骨、裕介が十分中で立てそうなほど大きな眼球が入っていたであろう頭蓋に空いた穴。鋭い牙と爪。龍の化石だ、しかも何頭分もある。


「龍の墓場だな」

「ダメだ、ここには長くはいられないよ。気がおかしくなりそうだ」

「フー!! 全身の毛が逆立ってるにゃ!」

 全員が同じ意見だ。

「でも、せっかくだからちょっとだけ、持って帰ろう」

「ヨシ、下ろしてくれ、ワシが取って来てやる」

 船を降下させるとミルトが飛び降り、持っていたツルハシで、化石を砕き頭陀袋に入れると一目散に戻って来た。

「急いで離れよう」

挿絵(By みてみん)

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