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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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179 探検隊

「一体何を発見したというのじゃ?」

 ビスタルク夫妻とアルバス、スレブから派遣された考古学者、生物学者、そして鉱物学の専門家としてのミルトの一同が集まったのは、それから十日後のことだった。

 裕介は自分が魔力探知で感じたものを説明する。


「魔力探知? その様な技術があるのですか?」

 そう驚いているのは、アルバスの考古学者のフリーマンだ。彼はネプル砂漠の古代遺跡を発掘したアルバス王立大学の教授らしい。エスパールみたいな髭を生やした気難しそうな紳士だ。


「あるにゃ。あたし達、生物学者には当たり前の技術だにゃ、でもこのユースケさんの様な空間把握の魔力探知は初めて聞いたにゃ」

 そう答えたのは、スレブのメスカリ教大学の生物学者ミケネス教授だ。裕介は獣人を初めて見た。別の大陸にいる民族らしく何故スレブにいるのかは知らないが、「ネコ耳娘、キター!」などと裕介はちょっと嬉しくなった。ただ、ミケネスは娘とは言えない年齢なのが少し残念だ。


「空間把握の魔力探知は、ユースケが開発した技術だからね」

 グィネヴィアがそう答える。

「すごいにゃ、土の勇者はそんなことも出来るんだにゃ」


「わしらには、三国からトンネル内の採掘権が与えられておるから、鉱物が出ればその所有権を主張させてもらうが、良いかの?」

 その場の全員が、ミルトの発言にムッとする。

「それはおかしいわね。採掘権は認められているけれど、所有権は聞いていないわよ」

「ふん! エルフの詭弁は、聞く耳を持たんわ」

「ドアーフって、どうしてそんなにセコイの? 遺跡や新種の生物が出る可能性があるから、学者さんに来てもらったんでしょ? 穴を掘ったユースケがその権利を主張するのなら分かるけど、まだ、あなた達は全く穴を掘っていない状況で、何の権利を主張しているのよ?!」


 エルフとドアーフが犬猿の仲だというのは、裕介も日本にいる時に読んだ小説で知ってはいたが、本当なんだなと思う。普段はこんな状況で権利をどうのこうのいう親方ではないのだが、グィネヴィアが出てきた途端に権利を主張し始めた。

「穴を掘ったユースケの持ち物になるのなら、ワシは何も言わん。しかし、他の者が権利を主張するのなら、ワシらは、ユースケの次に権利があるハズだと言わせて貰っておるだけじゃ」


「まぁ良いではないか、結局二人とも何かが出てきたらユースケのものじゃと言うておるんじゃろ? それで良いではないか」

 ビスタルクが場を収める。

「で、何が出そうなのじゃ? 迂闊に立ち入って大丈夫そうな場所なのかの?」

「先ず魔素の濃い場所で人間は平気なんだろうか?」

「うん、それは多分問題ないぞ。但し、魔力が漲って、お前さんが言っていたすっぽんを食べた時のようになるかも知れんが、ここにいるお前さん以外の年よりなら問題ないじゃろうて」


「陸地には、かなり全面にびっしりと何かの植物が生い茂っているんだと思います」

「ユースケさん、穴を明けた時に奥がぼんやり光ってたと言ったにゃ、多分、発光植物が生えているんだと思うにゃ。洞窟だから、きっとキノコにゃ。トモシビダケやヤコウダケの仲間にゃら、数が集まれば歩くのに困らにゃいほど光るにゃ」

「それらは無害なんですか?」

「伝説では龍の好物だと言われているにゃ。人が食べると腹を壊すにゃが、死ぬほどの毒ではにゃいにゃ」


「光る鉱物ってのもあるぞ。魔力を通すと光る石っていうのがあるだろ? あれは、その石が含まれた石に魔法陣を描いて増幅させて作るんだが、それの鉱脈ってのが稀に見つかる。あれは明るいぞ、龍が好むと聞いたことがある」

「光る石の鉱脈かぁ、あれだけ広い空間だから色んな鉱脈が出てるかも知れないな」

「うれしいことを言うじゃねえか! 掘りがいがあるってもんだ」


「古代遺跡の中には、半永久に動く動力を供給する石というのがありましてな。もの凄い魔力が封じ込められた石なので、我々は龍石と呼んでいるのですが、太古の龍本体や龍の糞が化石化したものだろうと言われています。動かない魔力だまりとなると、そういうものの可能性もありますな」

「龍石? そういうものがあるんですか?」

「エルフの里にも大きな龍石があったわ。世界樹の魔力の源になっているの」


「専門家三人の話しに共通するのは、龍じゃの」

「そうだな。あの地底空間は何か龍に関係している可能性が高いって事か」

「そう言う事じゃ、龍の棲家じゃったか、龍の墓場じゃったか」

「生きているって事は無いですよね」

「それは先ず無いと思うわ。私の知るエルフ七千年の歴史でも、生きた龍の目撃談は無いから」


「でも以前、ベイグル現大統領である賢者の海野さんが、龍を召喚する事も可能だって言ったことがあるんですが」

「うーん、賢者の召喚が現実に存在している生物を転位させているとは思えないにゃ。噂ではゴーレムを召喚させたというにゃ、でもゴーレムなんて現実には何処にもいないにゃ」

「架空の生物を賢者は召喚しているのだと?」

「たぶんにゃ」


「じゃあ、龍の化石、龍石があるってのが濃厚ですかね?」

「そうだな。ユースケの感じた魔力や魔素の濃さからして、そう思うのが妥当じゃろうて。えらいものが出たのう」

「もしそうなら、悪い事は言わないから、平和のためにユースケの所有物だと主張しておけ、でないと三国とドアーフまで入れた取り合いになるぞ」

「そうだにゃ。一抱えの龍石が国の宝になるほどの価値があるにゃ」

「拳大で人間一生分の魔力が封じられていると言いますからな」


「それって、めちゃめちゃ貴重なものじゃん」

「そうだぞい。今作っている鉄道なんか、動力には一生困らないって事だの」

 面倒な事になった。裕介はこのままあの空間を埋めてしまいたい衝動に駆られた。

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