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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
172/294

172 国交事前交渉

 裕介は、柿沼を伴ってアペリスコのアルバス王宮にやってきた。


「おぉ、ユースケ、しばらく見なかったのう。ヘラは順調に釣れておるぞ、王宮でも人気じゃ」

「ロン王、今日はお願いがあって参りました」

「なんじゃ、改まって、余とそちの間柄ではないか」

「いえ、今日はベイグルの使者として参ったのです」

「ベイグルかぁ、ではその供のものはベイグルの者じゃな?」

「そうです。私と一緒にこの世界に転生させられた柿沼と申します。今はベイグルの大統領首席補佐官を務めております」


「そうか、他ならぬユースケの頼みとあれば聞かぬわけにもいかぬのぅ。発言を許そう」

「はっ、ご寛大なるお言葉、恐悦至極に存じます。ただいま紹介に与りました、ベイグル大統領首席補佐官の柿沼と申します」

「ええい、ユースケの紹介なのだから堅苦しいのは抜きじゃ、あれだろ? ベイグルがアルバスと国交を持ちたいって話しだろ? しかし、直接に行き来のないベイグルと国交を持つ意味が何かあるのか?」

「はい、そこが今回の交渉の肝です。率直に申し上げます、ベイグルから中央山脈を抜けスレブに至る国境トンネルを掘り、鉄道なるもので行き来をする計画です」

「なんと! 大陸を縦断するトンネルを掘ると申すか?」

「いかにも」


「本来ならば、スレブとの間ですので、スレブが了承すればトンネル工事は可能となり、スレブとの国交は問題なく行えます。しかしながら、ベイグルが本当に付き合いたい国はその先にある、このアルバスであり、アルバスとの国交無くしてこの工事はあり得ません」

「しかし、こちらにとっては脅威ではあるぞ。スレブはアルバス以外と面していない場所に閉じ込めているからこそ、安心して国交が出来ているのだ、それを別の国が国境を持つとなるとそうもいかなくなる」

「しかし、こうも考えられませんか? このアルバスの肥沃な大地で作られる余剰作物を、大量に欲する国が現れるのだと。そしてその国からは、最先端の工業製品がもたらされます。ベイグル、アルバスがガッチリタッグを組んでさえいれば、スレブはいかに藻掻こうと、やはり袋小路の国でしかないと」


「ふむ、そういう考え方もあるな」

「しかも、ベイグルとアルバスが手を組めば、間のオスタールと、スレブはこの二国と手を組む以外に生きる道はなく、結果イスロンに対抗できる西側同盟というこの中央大陸における巨大勢力が出来ます。これがたった一本のトンネルで可能になるのです」

「ふうむ、物は言いようだの。まっ、現在のところそういう脅威はまだ存在していないが、中央大陸のバランスとしては悪くない。ただ…」

「ただ… なんでしょうか?」

「そこまでベイグルという国が信用できるかどうかだな。聞けばベイグルは前政権では長くフレーブに侵攻しようとして阻まれていたそうではないか? そんな、野蛮な国を信じて友好を結ぶというのは、危険であろうとアルバスの者なら誰もが考えるぞ」


「それについては信じていただく以外にありません。新政権はおっしゃった野蛮な前政権に反旗を翻し、革命を成功させた者たちで構成されており、大統領をはじめ首脳は全てこの裕介と親交の厚い者たちです。既にフレーブとは国交を開き、友好条約を結んでおります」

「ユウスケの仲間か… ふむ、話はわかった。ユースケ自身はどう思っているのだ?」


「うーん、正直な話し、トンネルを掘るのは私なので、出来ればこの話しは無くならないかなと思ってます。でも、アルバスもスレブもベイグルも、みんなが徳をする計画なので仕方ないかなと承知しました」

「わははは! トンネル工事はユースケ、そちがやるのか?! どのくらいかかるのだ?」

「一応、二百日を予定していますが、休みを入れると、ざっと一年でしょうね」

「一年で中央山脈を抜くトンネルを掘ると申すか? それは、国交云々以前に見てみたいものじゃな」

「いや、楽しまないでくださいよ。私はやりたくないんですから」


「それで、その鉄道と言うものは乗り物なのか? ベイグルまでどのくらいで移動できるのじゃ?」

「そうです。私の作った魔動モーターで鉄の線路の上を動く乗り物です。アペリスコからベイグルのゲルトまでだと、ざっと一日でしょうね」

「一日?! たった一日で、スレブを通り抜け、中央山脈を突き抜け、ゲルトに至るというのか?」

「我々の転移前の世界には、もっと速い乗り物があったんですよ」

「それは、是非とも乗ってみたいものじゃの」


「この計画が実現出来れば、是非、ゲルトにお越しください」

「ベイグルの冬は寒いらしいのう」

「その通りです。冬季はベイグルは雪と氷に閉ざされる為に、鉄道の運行は無理でしょう。しかしトンネル内での運行は可能です。お互いにトンネル入り口付近に大きな倉庫を作っておいて、その倉庫でお互いの貿易を行うと言うことになります」


「従って、私が行うのはトンネル掘りとその中の鉄道敷設工事までです。アペリスコとスレブ間は、やりませんからね」

「冷たいのう、兄弟」

「この間って二万ペクトくらいあるじゃないですか。そんな工事を引き受けたら何年かかるか分かりませんよ」

「わはは、確かに、もっともじゃ。では、そっちは鉄道を見てから、国家事業で考えよう」


「ってことは、ロン王はこの計画に賛成していただけると?」

「おう、ユースケの頼みだし借りもあるでのう。ただ、余の一存では皆が納得せぬ、議会の決定を待ってもらうことになるがの」

「ありがとうございます!」

「では折角来たのじゃ、余のヘラ釣りの腕を見て行け」


「そうだ、この柿沼はですね。転移前の日本のヘラ釣り師なんですよ」

「なんと! 本場のヘラ釣り師だと?!」

「本場のって言われると、恐縮致しますがヘラ池があるのであれば、是非!」

「それでは、相手にとって不足無し! 本場のヘラ釣り師とヘラ釣り勝負じゃ!」

「えぇぇ〜!!」

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