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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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「もう魔法をのう? しかも木と闇に加え念話までのう?」

 ビスタルクとグィネヴィアは、裕介達の話しを聞いて唸っていた。

「末恐ろしいのう」


 普通、子供の魔法が発源するのは、七〜十歳だ。生まれて三ヶ月の赤ちゃんが魔法を使った、なんて話しは二百五十年生きて来たグィネヴィアですら、聞いた事が無い。

 魔法が使え無くて苦労した、母のセフィアにとっては嬉しい話しである事には違いない。


「それにしても、念話は凄いな」

「ですね。何処にいても聞こえるものなのでしょうか?」

「まぁ、リーズの成長とともに、ゆっくりと検証していけばいいさ。まだ、だあ〜とか、まっまとかだもんな」

「ですね」


------------


 二ヶ月が過ぎ、十月を迎えた。

 釣りは、今が一番楽しい季節だ。


 リーズは、間もなく六ヶ月目を迎えようとしている。寝返りが出来るようになり、人見知りをするようになった。ビスタルクが抱くと、嫌がって泣くので、最近爺さんは元気が無い。


 ビスタルクと真逆に裕介は元気いっぱいだ。

 ベイグルのミリムから、カーボンロッドの試作品が届いたのだ。

「とうとうアミル君が、カーボンロッドを作ってくれたよ!」

 裕介は、手紙を何度も読み返し、届いたばかりのロッド六本を嬉しそうに振っている。ライン負荷のかかっていないロッドは、裕介の一振り一振りに、「さあ釣ってくれ」と言わんばかりにヒュンヒュンと音を立てて応える。


 リーズちゃんは、もうお座りが出来るようになりましたか? きっと、お姉さんに似て美人になるんでしょうね。会いたい。すごく会いたいです。


 アミル君が、お兄さん待望のカーボンロッドを作りました。アミル君からのお祝いだそうです。

 物凄く細い、ルビー樹脂のフィラメントを織った布をカレンさんの魔法で炭化して、それをルビー樹脂で固めたそうです。


 お兄さんが言っていた物と、同じかどうかは分かりませんが、確かに軽くて硬くて、驚くほど強いですね。未だカレンさんの魔法だのみなので量産は無理ですが、今、アミル君が量産の方法を模索中です。


 僕の方でも、このロッドをより強化する方法を模索中ですが、先ず試作品としては合格かなと言うロッド三種類を二本づつ送ります。

 カレンさんも、この竿は良いと絶賛です。

 お姉さんは、今は釣りに行っている場合じゃ無いでしょうが、また感想を聞かせて下さい。


 同じカーボンのシートで、リーズちゃんのガラガラを作りました。軽くて丈夫なので赤ちゃんが持つのには良いかと思います。


 そうそう、アリサさんがご結婚されました。エクレアさんだと思うでしょう? 違います。

 さて、誰でしょう?


 なんと、アコセイサクショのマカロンさんなんです。驚きですよね。いつの間にって感じです。

 今は孤児も減って来て、義務教育制度も出来たので、アリサさんも思い切って結婚する気になったようですが、実のところ、アミル君が二人を結婚させるために、だいぶ暗躍したようです。


 ミリムセイコウは、工場が三箇所、店舗が六箇所に増え、いよいよアミザ出店のために、今、キレト君をシゴキ中です。良く気が回り、覚えが早いので今年の冬にはアミザで店を出せるんじゃ無いでしょうか?


 カレンさんが戻る時に、僕もついて行こうと思ってます。それまでは、アルバスに居て下さいね。


               ミリム


「そうか、アリサがマカロン君となぁ〜」

「えっ? ご結婚されたのですか?」

「そうらしいぞ」

「それは、本当に良かったです」

 セフィアにすれば、少しホッとした部分があった。そうでは無いのだが、アリサから裕介を奪ったという申し訳なさが心の何処かにあったからだ。


「ほーら、リーズ。ミリム姉ちゃんが作ってくれたオモチャだぞ〜」

 カランカランと、カーボン製のガラガラが良い音を立てる、ピンクと白に塗装され、表面にウサギや仔鹿やアザラシに混ざって、ヒラメの絵が描いてある。

 そう言えば二年前の夏、ヒラメ下駄でミリムがヒラメを獲ったなぁと、裕介とセフィアは懐かしく思い出した。


「セフィアさんもタマには、釣りに連れて行ってもらったら? リーズちゃんは私が見ておいてあげるから」

 グィネヴィアが、セフィアにそう言ってくれる。

 もう、一年近くもセフィアは釣りに行けていない。

「じゃあ、甘えちゃって良いですか?」

「良いよ、良いよ。行っておいで!」


「じゃあ、あなた連れて行ってくれますか? 私もその竿を使ってみたいの」

「もちろんだ。じゃあ、スレーブルマスを狙おう」

「何でも良いですよ」

「セフィアの復帰第一釣行だから、デカイヤツを狙おう!」


「じゃあ、グィネヴィアさんお願いします。リーズ、大人しくしてろよ」

「じゃあ、ママ、行ってくるね」

 リーズは未だミルクが主食だが、既に離乳食も始まっている。


 裕介とセフィアは、久しぶりにミセスセフィアに乗り込み、スレーブル湖へと出た。

 最近は、ポツポツと船外機を付けた船が釣りをしている様子を見るようになってきた。裕介は、魔力探知で水中のスレーブルマスらしき魔力を見つけ、その上で船を止める。


「じゃあ、落として良いよ」

 今日は、自分は船長に徹し、セフィアに釣らせる。

「久しぶりだから、上手く出来るかしら」

 セフィアは、メタルジグを沈めると、シャクリ巻きを始める、ある程度巻き上げてフォール。そのフォールで食った。

「フィッシュ オン!」


 久しぶりの感触。

「うー! 楽しい!」

 出て行くドラグに耐えるこの瞬間がたまらない!

 セフィアが、そう思った時だった。

「まっま、まっま」

 頭の中にリーズの念話が聞こえる。裕介にも同様に聞こえた。セフィアの感情の揺れをリーズが感じたのかも知れない。


「うきゃっ〜!」

 喜んでいる。

 それを聞きながら、大物と格闘するセフィア。

「リーズが応援してるなぁ〜!」

「ええ!」

 子を持つ母は強い! 難なく二メートル程のスレーブルマスを釣り上げた。


「おめでとう!」

「うーん! 満足しました! あなた、もう戻りましょう。リーズのおっぱいの時間です」

「ワハハ、声が聞こえたらなぁ〜 落ち着いて釣りも出来ないか! よし、戻ろう」

 時間にして、たった三十分ほどの事だっただろうか。戻る船の中で、裕介もセフィアも家族がいると言う幸せを噛み締めていた。

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