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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
167/294

167 初魔法

 やっと解放され、家に戻れた。しばらく見ないうちにリーズはまた大きくなったような気がする。物が掴めるようになった。嬉しくなって自分の指とか、色んなものを握らせて喜ぶ。声を出してキャッキャと笑うようになった。


「えっ?! 私とリーズの像ですか?」

 裕介から、スレブの話しを聞いたセフィアが、ええ〜っと驚く。

「俺には、セフィアとリーズ以外に浮かばなかったからな」

 セフィアにしてみれば、嬉しいような、恥ずかしいような、自分が女神像になったと聞いて変な感じだ。


「まぁ、カワハラ家では、リーズの誕生記念のモニュメントだと言うことにしておきましょうか」

 セフィアは恥ずかしそうに笑いながらそう答えた。

「そうだ。冬になるとスレブのスレーブル湖は人が乗れるくらい氷つくらしいんだ」

「それじゃ、魚も釣れませんね」

「それがなぁ〜、氷に穴を開けて釣る釣りがあるんだ」


「えっ、氷の穴から魚を釣るんですか?」

「そう、ワカサギと言ってね、群れで回遊する魚なんだけど、これのフライがとても美味しいんだ」

「美味しいのですか?!」

 リーズを産んだ後のセフィアは、アフタースポーンのブラックバスのように良く食べる。これで少しも太らないのだから、太らない魔法でも使っているんじゃないかと思うほど食べるのだ。以前からだが、美味しいという言葉には、特に食いつきがいい。


「まぁ、リーズも行けるようになったら行ってみよう」

「そうですね。まだ氷の上で釣りをするなんて、とんでもない話しです」

「早く大きくなって、一緒に釣りに行けるようになって欲しいな」

「うふふ、まだまだ先の話しですよ。そうだ、お父様とお母様がリーズに会いにいらっしゃるそうです」


「ワハハ、お義父さん、とうとう辛抱出来なくなったか!」

 リーズが生まれてからと言うもの、毎週のようにエスパール伯から、プレゼントが届いている。

 どうして遠いアルバスで産んだ? 何故自分は外務長官を辞めれないんだ? 孫の顔見たさに、最近は愚痴半分、泣き言半分の手紙まで入っている。

 セフィアが焼き付けたリーズの写真を何枚も送っているのだが、それがかえって火に油を注いだのかも知れない。


 セフィアがそれを見て、笑い転げながらリーズに

「お爺ちゃんは、あなたに会いたくてしょうがないみたいですよ」

 と話していた。リーズは分かってはいないと思うが、ママが笑っているのが分かるのか、キャッキャと喜んでいる。


 やっと、オスタール、アルバス、スレブの外交を兼ねて出て来れるようになったみたいだ。しかしゲルトからだと五千キロ近くある。馬車でしかも外交をしながらとなると、到着は二ヶ月近く後のことだろう。確かにベイグルの外務長官が公で出てきて、オスタールやアルバスを素通りするわけにもいかないだろう。ご苦労様な事だ。


「リーズ、爺ちゃんと婆ちゃんがお前に会いに来てくれるぞ」

「ダァ〜」

「そうか、リーズも爺ちゃんに会いたいか?」

 これを見たらエスパール伯は、狂喜乱舞するだろうな。などと、裕介は親バカ全開でそう思う。


 数日後、また手紙が届いた。

「えっ! えぇぇ~?!」

「どうしたんですか? あなた!」

「柿沼さんも一緒に来るって」

「えっ、えぇぇ~!」

 セフィアは露骨に嫌そうな顔をする。セフィアと柿沼さんは会った時から、相性が悪い。いわば天敵だ。


「何をしに、いらっしゃるんでしょう?」

「なんだろうな? 嫌な予感がするな。ヒルトンさんと結婚したらしい。子供も生まれたから一緒に連れてくるって。二歳の男の子だって」

「二歳って? 私たちが出発した二年前は、まだご結婚されてませんでしたよね?」

「じゃぁ、できちゃった婚か? 俺たちがエノスデルトにいた頃には、もう子供が生まれてたってことだよな」


「大勢来るんなら、泊まる場所もないからゲストハウスを作っておこうかな」

「そうですね。お付きの人達もいるでしょうから、何軒かあった方がいいでしょう」

「じゃあ、ビスタルクとグィネヴィアに許可をもらってくるよ。場所はどこがいい?」

「この奥の丘が良いでしょう」

「同意見だな。じゃあ、行ってくる」


 ビスタルクとグィネヴィアは気を良く許しをくれ、裕介とセフィアはゲストハウスを建てるために丘の上に来た。

 リーズは百合籠に入れたまま、魔法で運んで連れて来た。ここの湿度が多く温暖な気候には、やはり石よりは木の家の方が過ごしやすいだろうと、ログハウスを建てる事にする。


 先ずはセフィアが木魔法で、木を育て材木にし乾燥させる。木が大きく育ち過ぎた。

「あらあら、失敗しちゃいました」

「いいよ、少しくらい大きくても問題ないさ」

 次に、育った木を切って材木にする。空間魔法で枝を払い、木魔法で皮を剥く。最後に乾燥魔法だ。

「あら、また失敗。少し乾燥しすぎました。しばらく木魔法を使ってなかったので、感覚が鈍ってますかね?」

「まぁ、乾燥し過ぎはノープロブレムだ」


 次は裕介の空間魔法だ。材木を次々と浮かせて組み上げていく。

「ん? なんか変だな? セフィアも魔力を使ってる?」

「いいえ、私はなにも、見てるだけですよ」

「なんだか、少し魔力の介入を感じるんだけど」

「あら、さっきの私もそうでした」

「変だな?」


「だぁ~」

 頭の中でリーズの声が響いた。

「……!」

「あなた!」

 セフィアも同じ声が聞こえたようだ。

「リーズ?! お前か?」

「だぁ~」


「えぇ~?! さっきからの魔力介入はリーズなのか? しかも、これは念話?!」

「リーズ、あなた、お手伝いしていたのですか?」

「だぁ~」

「マジか?」

「リーズは念話も使えるのですか?」

「まっま〜」


 間違いない。リーズが魔法と念話を使っている。

 ビスタルク夫妻が予言していたが、本当にリーズはしゃべり始める前に魔法を使い始めた。しかも、ビスタルク達でさえ出来ない念話も使っている。

 これは、えらい事だ。

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