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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
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163 魔力探知

「この水瓶の水の上に魔力を乗せるように張ってみよ」

 裕介とセフィアの魔力探知の修行が始まった。


「先に言っておくが、お前さん達の娘は未だ目が見えないかわりに、もう魔力探知を使っておるのじゃ。だからわしらにこの娘の魔力が届く。魔力でお前さんらを両親として認識しておるのじゃろう」

「えっ、生まれて三日だぞ?」

「そうじゃ、だからこの娘はとてつもないと言っておるのじゃ」

 裕介とセフィアがこれまで会った人の中で、魔力探知をしているような人は、ビスタルクとグィネヴィア以外にはいない。だから、裕介もセフィアもこんな魔法の技術があることも知らなかった。

 それよりも、どちらかと言えば、ビスタルクとグィネヴィアに感じ取れる、娘リーズの魔力を両親である自分達が感じていないことが悔しかった。娘のことは何でも知っておきたいのだ。


 水の上に魔力を張るというイメージがピンと来ない。薄く霧のように出しているつもりでも、心のちょっとした揺れで霧散してしまう。

「なかなか難しいな」

「頭で張ろうとするからじゃよ」

「と言われても、魔法って頭で考えるイメージじゃないか」

「そうじゃのう。フーム、これは魔法だと思う概念を捨てることじゃ。自分の中の魔力の壺から魔力があふれ出て、自然に回りを満たしているって感じかのう?」


 壺? 魔力の壺?

 裕介は、自分の中に壺をイメージした。その壺を魔力で一杯にする。壺が爆発した!

 途端にリーズが泣き始める。

「あぁ、びっくりしたぁ。ユースケ、爆発させてはいかんではないか。魔力の池に大石を投げ込むようなもんじゃ、そりゃリーズもびっくりするのう」

 イメージだけで、ビスタルクもリーズも俺の魔力の動きが分かるのか? と裕介は驚く。


「そうじゃ、そうじゃ。セフィアさんの方は出来たようじゃの」

「えっ、セフィア、出来たの?」

「ええ、なんとなくですけど、この部屋のみんなの魔力を感じます。確かに、あなたとリーズの魔力はすごいです!」

「どうやったんだ?」

「ビスタルクさんの言う通り、魔力の壺から魔力が溢れている感じです。すると霧が這うように魔力の静かな海が出来るんです。そこに、別の魔力が映るって感じです」


「おう、そうじゃ完璧じゃ」

「良く分からんな。魔力の静かな海?」

 裕介は、再び壺をイメージしてみる。魔力で壺を満たすところまでは出来る。でも溢れさそうとすると壺が壊れてしまう。

「きゃぁ!」

 今度はセフィアが驚きの声を上げ、またリーズが泣き始める。家族の中で自分だけが出来ないとは。

 裕介はパパになって初めての挫折を味わう。


「あなた、イメージする壺が小さすぎるのじゃ無いでしょうか? 魔力量が多いから、壊れてしまうのでは?」

「なるほど! そうかも知れない」

 裕介は、壺ではなく風呂桶をイメージしてみる。そこに魔力の泉が沸き立つイメージで、桶から溢れ出す感じ。

 ダメだ、洪水になってしまった。もっと大きな池みたいなものが必要だ。


 結局、城に作ったヘラ池と同じくらいのイメージでやっと出来た。

「凄いのぅ、泉が大きければそれだけ探索出来る範囲も大きくなる。お前さんのは、ワシにも分からんほど、かなり広いぞ」


 やっと、パパの面目躍如だ。修行と言うほどではでなかった。裕介の感覚的には、良く写真で見た水を張ったウユニ塩湖の水面の様な感じだ。見渡す限り何も無い塩湖の上に立つ人や車がポツンポツンと見えるように、人の魔力の影が揺らぎの様に感じる。

 近くの小さいのが、セフィアとビスタルク、大きいのがリーズ、少し離れているのがグィネヴィアなんだろう。もっと小さいのは、グィネヴィアが飼う牛や野生の鹿やウサギかな?。あまりにも探索範囲が広くて、小さな魔力には気付かないかも知れない。確かに、誰が大体どこにいるかは感知できる。


「なるほど、こんな風に感じていたのか」

「ここからが修行じゃの。これをいつも別の事をしながら出来るように、探索範囲もそれほど広いものは不要じゃでの、狭めて感度を上げるように努力せねば使い物にはならぬ」

 裕介とセフィアは、ビスタルクに教わって魔力の探索方法を習得した。


 リーズやセフィアが、何処にいるか分かるようになったのは便利だ。何をしているかまでは分からないが、安心して釣りにもいける。

 魔力探知は、セフィアが作った魔物レーダーでも出来たが、この探索技術は大体の位置が分かることが優れている。但し地上や水面での平面上のみ有効な方法だった。

 裕介とセフィアが空からこの島に来ていたら、ビスタルクたちは気づかなかっただろう。


「空か… 地面を這うようなイメージだから、そうなるんだよな。魔力なんだから重力ってのは基本関係ないハズだし、壁も通り抜けるんだからきっとイメージでどうにでもなるんだろうな」

 裕介は、ビスタルクに言われた修行の方向と全く違う方向を模索しはじめていた。魔法の理屈は分かっていないが、レーダーや魚探の理屈ならわかる。


「セフィア、今回習った魔力探知と以前セフィアが作った魔物レーダーとは何が違うんだろうな?」

「そうですね。似ていますが、魔力探知は薄く張った自分の魔力に介入した別の魔力の揺らぎを感じるのだと思います。魔物レーダーは魔力の跳ね返りで色を変化させるものです」

「んと、魔力探知は蜘蛛の網のような感じで、魔物レーダーは魔力を発信させて反射があれば光るって感じかな」

「そうです。そんな感じです」


 確かに魔物レーダーは魔方陣に描かれた機械的な動きのようだ。ただし魔物レーダーは水中の魚も探知出来るのだから、全方位をカバーしているのだろう。この両者を一体化させられれば全方位を探知可能な魔力探知器が出来る。そしてそれは、魚探やソナーに劣らない強力な探知器になるはずだ。魔力に関しては地底探査だって出来てしまいそうだ。


 裕介は兎に角、この世界で魚探が出来るかもしれないと言う発想が捨てられなくなった。

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