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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第四章 湖の家
152/294

152 淡水鰹

 裕介とセフィアは、サバレスカ諸島のビスタルクとグィネヴィアの住む島、ペルテ島に家を建てて住み始めた。ステラは、島に住むと不便だと言って、相変わらずのホテル暮らしだが、近隣の国スレブとネプルに進出して、イスロン進出を狙うのに良い機会だと忙しく動き回っている。


 裕介とセフィアはビスタルクの力を借り、魔法の修行と称して石ではなく、丸太を利用したログハウスを建てた。

 セフィアはカレンが使っていた木魔法を教わり、木の育成、乾燥、丸太や炭作りが出来るようになった。

 裕介はビスタルクが言った、空間魔法を使う。空間魔法とは、亜湖の属性だった闇魔法の一種だ。闇魔法は陰と陽があるのだと、ビスタルクが教えてくれる。

 闇を作ったり姿を消すのが陰、重力を操作したり空間を操作するのが陽なのだそうだ。

 普段はセフィア頼みだった浮遊魔法で、セフィアが作った丸太を浮かばせ組み立てた。


 裕介達に教えたがっていたとおり、ビスタルクは多弁に魔法について教えてくれている。意外に教え上手で、裕介とセフィアはお腹の子供が育つのと変わらない勢いで、新しい魔法を覚えた。

 ビスタルクは、時々調子に乗るが、ちゃんと釘を挿すと直ぐに改心してすまんと謝る。まぁ、近所の癖の強い物知り爺ちゃんって感じだ。


 ビスタルクやグィネヴィアに言わせれば、裕介達は大魔法使い的には教えたくなる人材なのだそうで、黒龍譲りの裕介の魔力は実は、ビスタルクより強く多いらしい。まぁ、体格の良い青年を親方が、相撲の世界に、ボクシングのトレーナーが街の不良をボクシングの世界に誘うようなものなのかも知れない。


 ビスタルクの口癖は、「ワシを超えて行け」だから、益々、その感が強くなる。もっとも、技術面では裕介はビスタルクには、全くおよびもつかない。


 家を建てるにあたって、裕介はガラスとアルミでサッシと雨戸を作った。グィネヴィアが羨ましがり、老夫婦の家にも取り付けてあげた。


 セフィアは、サッシの中の陽当たりの良い場所で揺り椅子に揺られながら、大きくなってきたお腹にせっせと魔力を注いでいる。時々裕介も、傍でひざまずいて魔力を注ぐが、裕介の魔力はお腹の子には強すぎると叱られる。

 ギルドに頼んで、ペルテ島にも転送箱を設置してもらった。街まで行かなくても宅配で物が買えるようになり、ビスタルク夫妻は便利になったと喜んでいる。まぁ、水の上は歩けるし、その気になれば空も自由に飛翔出来るらしいが、手間が省けたらしい。


 裕介やセフィアは、ミリムやエスパールに手紙を送り、ベイグルからは沢山のお祝いの品が届いた。エスパール伯が産まれたら孫の顔を見に行くと言って聞かないらしい。


 ビスタルクの講義や訓練の成果もあって、裕介はちゃんとした気化魔法と一部の錬金魔法も使えるようになり、一応土魔法は極めたそうだ。

 今は、闇魔法を教わっている。


 セフィアは、大事をとって妊娠してからは釣りは控えているが、裕介はセフィアに飛びっきりの魚料理が食べたいとせがまれ、ビスタルクと二人でスレーブル湖に釣りに行っている。

 実のところは、黙っていると裕介はセフィアに遠慮して釣りに行かなくなると思えたために、セフィアが魚を食べたいとせがんだのだった。


 裕介が面白い魚を釣ってきた。

 淡水鰹だ。海にしかいないと思えたカツオが、淡水のスレーブル湖には生息しているのだ。他にもイルカやエイ、ホッケやニシンのような魚もいる。

 裕介は、このカツオで鰹節を作ってみようと思いつく。池宮に手紙を送って、鰹節の作り方を教わり、ビスタルク夫妻と一緒に作り始めた。


 釣ってきたカツオを煮て、骨を裕介得意の土魔法で空気と入れ替えて骨抜きをし、燻して乾燥を二週間繰り返した。本当の鰹節は、ここからカビ付けと言う作業に入るが、麹カビが手に入らないので、カビ付けは諦め荒節で完了とした。

 カツオ節はそれなりに出来たようで、池宮に教わったレシピでうどんを作った。


「これは旨い! 百年生きて初めて食べる食べ物じゃ」

 カンゾウさんは、きっとうどんは作れただろうが、鰹節が作れなかったので味噌煮込みうどんとか、そんなものなら作ったかも知れない。

 裕介は白身魚をすり潰して蒸し、今回はカマボコも作った。


「美味しいです。お腹の子が喜んでます!」

 最近セフィアは、事あるごとに『お腹の子が』を多用する。それだけ、セフィアには裕介との繋がりの形である子供が嬉しかったし、段々と大きくなる自分のお腹と、時折蹴ったり動いたりする、自分の中に宿している生命が愛おしくてたまらなかった。


「あんなカチカチになった魚が、こんな美味しいものに役立つなんて、エルフの秘術にもないわ。ホントに美味しいわ」

 正当鰹出汁の手打ちうどんは、グィネヴィアをも満足させたようだ。ここまでの付き合いで、エルフは結構味にうるさい。と言うか鮮度にうるさい。それは野菜でさえ採って三日もすると、古いと言って食べないのだ。エルフの食事は人間とは何か別のものに意味があるのかも知れない。


 だから、グィネヴィアにとって鰹節のような釣ってから二週間以上も置いた食品は、ありえないものなのだそうだ。本当は未だこれにカビを付けると言ったら、ありえないと言う顔をしていた。


 鰹節を作る以前に、もちろんカツオのタタキは必須である。稲藁を燃やして炙り、お手製のポン酢で食べる。旨い! これはビスタルク夫妻もお気に入り大好評だった。池宮さんの手紙で、カツオのタタキにマヨネーズもイケると言うことだったので、マヨネーズも作ってみる。日本では、賛否両論分かれるところだが、セフィアは気に入ったようだ。

 「お腹の子が」を連発して、しばらくマヨラーになったが、これは裕介に諭されて普通食に戻った。


 こうして二人は、ペルテ島で順調に生活をしている。

お待たせしました。やっと十五話ほどストックが出来ましたので、今日から四章を始めます。

土曜日は二話投稿するつもりですが、書くのに手間取っていますので、しばらく連日投稿はちょっと無理です。隔日とかそんな連載となります。

土曜日の二話目以外は、朝六時の投稿は同じです。

ですので、六時の投稿が無ければ、その日はお休みです。

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