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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
147/294

147 セフィアノート

「うふふ、やっと出来ました!」

 オスタールにいる時から、ずーっと暇を見つけて何かを作っていたセフィアが、裕介に告げた。

「やっと何を作っていたか、教えてもらえるのか?」

「えへへ、少し早いのですが、結婚三周年のプレゼントです」

 裕介は、しまった! と思った。自分は何も用意していない。


「すまない。俺は何も用意していないよ」

「いいんですよ。私が作りたくて作ったのですから、あなたからは普段に色んなものを頂いていますから」

「ほんと、すまない」

「いいんですってば! 開けてみてください!」


 包みを開けると、もの凄い紙の束だった。これは本と言っていいだろう。中をひらいてみる。ページ一枚一枚に一つづつ魔方陣が焼き付けてあり、説明書きが書いてある。魔方陣図鑑だった。


「凄いな、こんなに魔方陣ってあるのか?」

「いえ、本当はもっとありますよ。家の塀にオシッコさせない魔方陣とか、投げるとゴミが必ずゴミ箱に入る魔方陣とか。でもあまり役に立ちそうにない魔方陣は省きました」

「わからないぞ? 魔動モータだってセフィアは皿回しの魔方陣だって思っていたじゃないか」

「それは、忘れてください!」


「ここに書いた魔方陣はエレベーター魔方陣のように、ほとんどが、あなたの魔力でないと動かないような、沢山の魔力量が必要な魔方陣ばかりです」

「ってことは、俺用の魔方陣図鑑なのか?」

「そうです。愛のてんこ盛りセフィアノートと読んでください」

「いや、愛のてんこ盛りはいらないだろ? 普通にセフィアノートでいいんじゃないか?」


「ブー!」

 セフィアは、膨れっ面をしてブーイングしている。

「ははは、どれどれ?」

「すっげぇ〜! 強そうな魔方陣があるぞ。鋼の肉体ってなんだ?」

「文字通り、矢をも通さない鋼鉄のような身体になるんです。でも重くて動けません。防御に徹する時用ですね」


「貝の口は?」

「喋らないと決めたら、死んでも口を開きません」

「そいつは凄いな。スパイみたいじゃん」

「でも、熱に弱くて炙られると直ぐに口を開きます」

「…  セフィアノートって、残念魔方陣大全なのか?」


「そんな事は無いですよ。あなたが使う時のために、私が弱点をお教えしているだけですよ」

「弱点があるわけだな?」

「なんでも、攻略法は用意してあるものです」

「なんだか、ヘビーゲーマーの台詞だな」


「俺向きのがあるじゃないか! 岩石爆弾って!」

「それは凄いですよ。岩が大爆発するんです」

「やってみよう!」

「やめておいた方がいいですよ」

「なんで?」

「無指向性の爆発なので、自分も巻き添えになるんです」

「いや、それ怖くて使えないだろ?」


 裕介は、なんだか、コントをやっている気分になってきた。セフィアノートはコントのネタ帳なのか?

「使えそうなものって、ないのかな?」

「使えそうなら、私がとっくに使っていますよ。でもあなたなら、こんな欠陥のある魔方陣でも、上手な使い方を発明してもらえそうで、そう言う、私では使い方を思い付かないものを集めたんです」


「なるほどな、確かに教えてもらわないと、そんな魔方陣がある事もわからないものな」

「そうですよ。あなたの愛でなんとかなりませんか?」

「いや、愛のてんこ盛りって、俺の愛かーい!」


 それでも裕介は嬉しかった。確かにこの三年の結婚生活は、セフィアと裕介の知識の二人三脚で次々と新しいモノを作り出してきた三年だった。

 裕介一人でも、セフィア一人でも出来なかった製品がサファイアライン、魔動モーター、ホバークラフトと次々と実を結んできた。裕介とセフィアの夫婦の最大の共通点は、お互いにモノを作り出す過程を楽しむところにあったのだ。


 それは、ピルボ村での新婚の時から何も変わっていない。お互いをリスペクトし合い、相談し、研究し作り出してきたモノ達だ。

 その基本原理を作り出しているのが、セフィアの魔方陣であり、それをまとめたものを、この結婚三周年のプレゼントとしてセフィアが裕介にくれた事が、二人が夫婦生活で大切にして来たモノの証であるかのようで、嬉しかったのだ。


「ありがとう。今直ぐには何も思い付かないけど、思いついたら教えるよ」

「ええ、楽しみです」

 裕介とセフィアは軽くキスを交わす。


「あっ! 色んな魔方陣を整理しながら描いていて思い付いたのですけど、あなたのアイテムボックスと私のを繋いではどうでしょうかね?」

「そんな事が出来るのか?」

「ええ、転送箱と同じ理屈なので、あなたに秘密が無ければ、分けておく必要も無いと思います。どちらからでも取り出せて、便利だと思うのですが」

「無い無い無い! 秘密なんて、何も無い!」


「じゃぁ、そうしましょうか? アイテムボックスを貸してもらえますか?」

「どうぞ」

 セフィアは、杖を使って、自分のものと、裕介のものに新たな魔方陣を焼き付けた。早速見てみる。

 確かにセフィアのアイテムボックスに入っているハズのミセスセフィアが、裕介のアイテムボックスから取り出せそうだ。


「こんな簡単に出来るものだったんだな」

「もっと早く思いついていれば良かったですね」

「いや、今でも遅くは無いさ。便利になったな」

 これで、どちらからでも、バイクも船も食料品や寝具も取り出せるようになった。言うなれば、二人の家のようになった。

 確かに秘密のものは入れて置けないが、今のところ裕介とセフィアの間では、本当に何も秘密は無かった。

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