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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
146/294

146 スッシー

「やっぱりリーダーは必要だな」

 一番細い0.5号のルビーラインを天井からぶら下げて、錘を乗せていく、サファイアラインのリーダーなしでは七キロで切れた。急激な荷重では五キロで切れてしまう。

 ところがFGノットという結束方法で、リーダーをつけてゆっくり荷重をかけると十キロにも耐えたのだ。急激な荷重では十キロ手前で切れた。


「これがリーダーだ、こうやって先端の部分だけ、ニ〜三メートルを伸びのあるサファイアラインにする事で、耐衝撃力や、根ズレと言う底の石なんかに触れたときの損傷を防ぐんだ。PEラインの欠陥であるルアーの結び目の強度低下も防ぐことが出来る」


「で、この結び方がこれがFGノット。他にも色んな結び方があるけどね」

「難しいものですね」

 裕介はセフィアにルビーラインとサファイアラインの結束方法を教えている。

「単純に結んだだけだと、強度の半分以下の力で抜けたり切れたりするんだ」


「まるで編み物のようです」

「うん、編み込みって言うな。結ぶと言うより締め込みという方が正しい。締め込んだ糸同士の摩擦力で抜けなくする結び方だな。これだと八十パーセントくらいの強度が出るらしい」

「それでも八十パーセントに落ちちゃうんですね」

「リーダー側を焼いてコブを作れば、ほぼ百パーセントって言われているな」


「但し、摩擦力だけだから締め込みが足らないとすっぽ抜けてしまうんだけどな」

 裕介は、結び方を紙に書いてセフィアに説明している。セフィアは一目見れば覚えてしまうので、後日、結んだラインを添えてミリムに送るつもりだ。


 太いラインのテストは、サファイアラインの時とは違い、ラインが強すぎるためにエレベーター魔方陣を使って、浮かべてバケツに入れた水の量で測った。確かに強い、サファイアラインの五倍っていうのは間違いではなさそうだ。アミルは普通に錘を縛って計測したのだろう。


 サファイヤラインのリーダーを結束しての強度は五倍を遥かに上回り、一号ラインで二十五キロもの水バケツを支えた。結局三号以上は十六号以上のサファイヤラインが無いため直結で測った。

 六号で百キロもの荷重に耐えたのだ。これは地球のPEラインのほぼ倍の強度だった。


 サファイアラインの限界を感じていた裕介だったが、今度はラインが強すぎて、ロッドとリールの限界を感じるようになってしまう。このラインならマグロやカジキも釣れる!

 しかもアミルの言う通り、ほぼ伸びはゼロだった。


「強すぎるラインだな、これからはリールのギアが飛んだり、ロッドが折れることがあるかも知れない」

 裕介は、そう言ってテストを終了した。


 ミリムに向けて手紙を書く。


 ミリム、ずいぶん頑張っているじゃないか。こちらは雨季真っ只中で雨ばかりだ。

 またアミル君は凄いラインを開発してくれたものだ。ありがたい。


 大きな注意点は、リーダーの必要性と結束方法についてだ。ラインに伸びが無いためリーダーが無いと、魚が掛かった瞬間の合わせ切れや、キャスト時の高ギレ起こる可能性が高い。売る時には、そこを良く説明して売るように。

 こちらのテストデータと結び方の一例を一緒に送る。アミル君と検証してみてくれ。


 それと、スライムの幼生が樹脂を食べるとの事だったが、そうなるとラインを使った後の、釣り具のクリーンナップは必須になるな。でないと直ぐにラインもルアーも劣化してしまいそうだ。まっ、俺はいつもやっているけどね。


 先日ビレイ湖から送った手紙にも書いたが、アルバスには昔、俺と同じ日本人の転移者がいたらしい。その人が伝えた米や食品が沢山残っていて、俺とセフィアは日本食を堪能出来た。

 面白い事に、その人は釣りと釣り具の製作も伝えていて、それをずっと守って頑張ってきたカレンさんという人と巡り会えた。


 彼女の案内と手解きで、俺たちはパイロン川を降って楽しい釣りや、日本の昔からの釣りを堪能出来て、念願の魚も釣れた。本当に楽しかったぞ。


 そのカレンさんが、俺たちの道具や釣りに感銘を受けて、ミリムのところで修行をしたいと言っている。

 俺たちの恩人でもあり、ベイグルを出て初めての釣友でもある人だ。ミリムもカレンさんの美しい釣り道具作りから学ぶことも多いと思うので、是非よろしく頼む。


追伸 カレンさんは気さくでさっぱりして付き合い易い人だ。セフィアともとても仲が良いぞ。

             裕介、セフィア


 日本でも、PEラインのリーダーの必要性と結束方法については、意見が分かれるところだが、概ねはリーダーは必要だと言う事になっている。

 裕介は、ミリムとアミルがクレームに晒されないように配慮したのだった。


「こう雨ばかりだと、何も出来ませんね」

「そうだな、アルバス流にのんびりやるしかないな」

「いつまで続くのでしょうか?」

「まあ、夏の間はずっとこんな感じらしいぞ。秋になったら、スレーブル湖を通って、スレブに行ってみよう」


「楽しみですねぇ」

「大きな湖らしいからなぁ、ゲルトとサーズカルの間くらいあるらしいぞ」

「歩けば一ヶ月ですよ?!」

「多分この大陸で一番大きな湖だろうな」


「どんな魚がいるんでしょうね」

「魚だといいけど、スッシーとかいるんじゃ無いか?」

「スシですか?」

「寿司じゃ無い、スッシーだよ。地球にネス湖って湖があってな、そこに恐竜みたいなのが住んでるって、目撃証言が頻発したんだ。それで、その恐竜をネッシーって呼んだんだ」

「竜ですか?」


「恐竜って言うぐらいだから、竜っちゃ竜だな。白亜紀って一億年くらい昔の生き物だ」

「それがネス湖にいたのですか?」

「いや、それじゃないかって噂だけだよ。結局、誰も確かめられなかった。それから、池や湖にいる未確認巨大生物をなんとかっシーて言うようになったんだ。だから、スレーブル湖ならスッシーだ」

「なるほど! お寿司美味しかったですねぇ、また作って下さいね」

「ここまで説明させて、そっち?」

ブックマークをありがとうございます。

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