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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
130/294

130 ビレイ湖

 翌朝、ドブ釣りのポイントから二十キロほど下ったところで、左に川が分かれている分岐点に来た。

「この左がビレイ湖だ、鮎はこっちから遡って来ている。どっちに行く?」

 カレンがそう聞く。

「ビレイ湖にはどんな魚がいるんだ?」

「そうだな。もう少し鮎が釣りたければ、迷わずビレイ湖だな。ビレイマスと、ビレイ大鯰、ウナギもいるぞ」

「ウナギ! ウナギは食べたいなぁ〜!」

「じゃあ、左だな」


「ウナギと言うのはどんな魚ですか?」

「ウツボみたいな感じだけど、もうちょっと愛嬌があってヌルヌルしてる。うな丼にするとメチャメチャ美味いんだ」

「メチャメチャですか!」

 セフィアの目の光りがハートマークになっている。


 ビレイ湖側の支流に入ってからは、かなり川幅が狭くなった。

「鮎を釣るのなら、次のトロ場がお勧めだ」

「じゃあ、今日は船でドブ釣りをやってみるか」

「船でドブ釣り? 聞いたことがないな」

「昨日釣っていて、思いついたんだ。昨日の毛鉤の仕掛けだけ借りれるかい?」

「いいぞ」


 ポイントについた船を裕介は、川の中央で魔力電池を使いホバリングさせた。ライトタックルをカレンにも渡し、仕掛けをつけて船の真下に落とす。

「こうして、ポイントの真上でホバリングさせて釣ったら釣れないだろうか?」

「どうだろうな? まあ釣れなければ、長竿でやれば良いだろう。なんでも、やってみよう!」

 要するに海の船釣りのサビキ釣りと同じ要領だ。竿が短いので扱いやすい反面、探れる範囲は狭くなる。カレンは初めてリール竿を使うのが、かなり嬉しい。


 三メートルほどの竿で、アウトリガーの外まで竿を出しリフトアンドフォールで流す。ロッドの先端が軽く入る。長竿と同じく、竿の先端を送り込むとグンと入り込んだ。あとは慌てずにリールを巻くだけだ。魚の動きが、手元にビンビン伝わってくるので、これはこれで面白い。しかも手返しが良い。


「これは、楽だな」

「アジを釣ってるみたいだ」

 釣れなくなると、ポイントを移動する。すると、また釣れる。こうして船のまま、川を釣り下っていたらビレイ湖に着いた。


「でっか!」

「ホント、大きな湖ですね!」

 ビレイ湖は、琵琶湖ほどもある大きな湖だった。周りは広大な田園地帯。船で高くまで上ると、遥か東の彼方に山の頂が見える。あれが、ギガンテス孔雀がいる、ネアル山脈だろう。

「あそこまで、ずーっと畑や水田なのか? なんて広いんだ」


「そうだ。このビレイ湖は三段湖でな、中央がバレイ湖、最下流がベレイ湖だ」

「この田畑の水源なんだな?」

「そうだ。ここから用水路と言うよりは、運河で水を確保し、船で運搬している。三湖の東にネアル山脈から海に流れている、比較的短いアルス川という川があって三湖の水はその川からも入って来て、また川の下流に繋がって、海へ流れている」


「アルバスには、川が三つあったのか!」

「そうだ。パイロン川とアルス川の間の海岸は、海水でも育つ魔木の密林になっていて、多くの魚や蟹などの住処になっている」

「マングローブみたいな感じかな?」

「そう、マンジローブだ」

「マンジなの?」

「歩く魔木だ。ヤバいだろ?」


 この世界のマングローブ、いやマンジローブは歩くらしい。裕介は、海岸を彷徨いている木を想像した。確かにヤバい。

「歩くと言っても木が散歩するわけでは無いぞ」

 カレンが裕介の想像を見透かしたように言う。

「海の潮の満ち引きに合わせて、森ごと移動するのだ」

「あっ、そう言うことか。潮が引くように森も引いて、満ちるように森も満ちるって感じだな。結局水際は変化しないってことか」


「でも中にはボーッとしていて、取り残されるヤツもいてな。後から慌ててスタコラ追いかけている。笑えるぞ」

 マンジローブは、早く動く気になれば動けるみたいだ。


 さて、ビレイ湖畔にはちょっとした街がある。今日はロッジは建てずに街の宿で宿泊だ。

「ナマズやウナギを狙うのなら夜釣りだな」

「そうだな。宿でポイントを聞いてみよう」

 夜釣りで夜遅くに戻ってきても問題無いと言う宿を取って、ポイントを聞いてみる。


 夏前で丁度産卵期だから、ナマズは湖北側の一メートルくらいの浅瀬に集まっているらしい。

 ウナギは通って来た川の方が釣れやすいそうだ。

 ただし明日くらいから、雨が降るんじゃ無いかとの返事だった。


「流石に雨の夜釣りは、危険だよな」

「そうだな。雨が上がるまで、この宿で過ごすのが良いだろう」

「景色も綺麗ですし、数日過ごすのも良いでしょう」


「じゃあ、雨の様子を見ながら、ビレイマスでも釣って待つか」

「あくまでも、釣るんだな。本物の釣りバカだな」

「そんなに褒めるな」

「褒めたわけでは無いぞ!」


「じゃ、早速ナマズポイントの下見に行こう!」

「早速か」

「明るいうちに、地形は把握して置いた方がいいだろう? それにカレンはルアーの練習をしといた方がいいぞ」

「おぉ、そうかルアーで釣るのだな!」

「どのルアーを使うのだ?」

「俺は、ナマズはバドと決めている!」


 三人はナマズポイントを下見した後、宿の近くでカレンの特訓を始めた。

「大ナマズと言うくらいだからな、ベイトリールで狙うぞ」

 カレンにベイトタックルを渡す。

「これでルアーを飛ばすのか?」

「そうだ、ちゃんと狙ったところに落とせるように、練習しとかないと、暗い中で引っ掛けたりトラブルで楽しく無くなるぞ」

「どうやるのだ?」


「こうだ」

 ブーン! ベイトリールの糸巻きが音を立てて回り、ラインが出て行く。裕介は狙った場所に着水させた。

「着水の瞬間に、親指でスプールを押さえて空回りを止めるんだ。サミングって言う。これをしないと反動でバックラッシュって糸の噛み込みを起こすんだ」


 裕介がチョイスしたのは、バドワイザーと言うアメリカンルアーだ。トップウォータープラグなのだが、愛くるしい顔の円筒形のルアーで、リップという出っ張りが出ていて、それに水を受けることで、お尻を振りながら動く。

 ご丁寧に、お尻部分に金属製のブレードが付いていて、それが胴体に当たることで、カンカラカンカラと音で魚にアピールする。日本で市販されていたものは缶ビールの柄が描いてあった。だからバドワイザーという。


「こんななめた、おもちゃで本当に釣れるのか?」

「騙されたと思って使ってみろ。ルアーは釣れると信じきる事が大切なんだぞ」

 カレンは苦戦したが、夕方までになんとかベイトリールをキャスト出来るようになった。

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