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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
121/294

121 ゴブリン

 一週間ほど、裕介とセフィアは船に取り付ける部品を作っていたが、それが完成すると三人娘の案内で、百ペクトの湿地に向かって出発した。

 確かにファルセックからは北に向かってどんどん下っている。と言っても海より低いハズもないのだが、そびえ立つ中央山脈に近づくほど下っているので谷の底に向かっている気分だ。


 麦畑や茶畑の広がった高地から、柑橘系の果樹園に変わり、段々と地面がしっとりとしてくると、バナナや椰子のプランテーションに変わった。

 大臣のカマンベールが言っていた、二千ペクトの道路はこの辺りから始まっているようで、盛り土された土手道に変わった。緩やかに西に向かってカーブしている様だ。


 三つ目の村で宿泊する事にする。道路の建設工事で使った宿舎が結構ある様で、この道路沿いは宿泊施設には困らないらしい。とは言うものの、古いから結構あちこちにガタがきていた。

 食事は村の食堂で、バナナやタロイモの様な物と、何かの肉の蒸し焼き料理だったが、結構美味しかった。


「日本食も良いですが、このあたりの蒸し焼き料理も格別ですね」

 三人娘は、またバカスカ食っている。


 翌日も北北西に向かって移動する。道路の盛り土が段々と高くなってきた。もうこの辺りは雨季には湿原になってしまう場所なのだろう。周りの密林は濃くなり、獣の声が始終響き渡っているが、道路の上は獣達は横切るだけの様だ。


 カピパラの様なネズミ系の獣、何種類もの猿や色鮮やかな鳥など、道路の上からでもちょっとした動物園の様に見つけることが出来る。虫も多い。


「あっ! ゴブリンです!」

 イルボンヌが空かさず弓を放つ。あっと言う間に三体のゴブリンに弓が刺さり、ゴブリン達は蜘蛛の子を散らす様に密林に逃げ込んで行った。

 何という速射だ? これが、ウツボを釣って半べそかいて、くすぐられて悶え、何でも大食らいしていた奴か? と裕介もセフィアも驚く。


「ゴブリンは見つけたら退治しておかないと、道路に穴を掘ったり、馬を襲ったり悪い事ばかりするんですよ」

 キシュリッジがそう説明する。

「軍が、そうされない様に巡回はしてるんですけどね! ゴブリンよりも、ハリキリアリやモグールの方がやばいんですけどね」


 ゴブリンだけでも、十分異世界らしいのだが、ハリキリアリってハキリアリみたいなものかな? モグールってまさかアンデッドでは? と話しに付いていけない裕介は、勝手に想像する。

 詳しいと思ったら、次の村はキシュリッジの里だったらしい。こんなところで生まれ育ったのか? と驚いた。


「ただいま!」

 軍が駐留しているので、多分転送箱が設置してあるのだろう。既にキシュリッジが戻る事が分かっていたようで、家族が村の入口で出迎えていた。

 妹なのだろう、ミニキシュリッジが可愛い。


「では、カワハラ夫妻には、この村を起点に使っていただきます。宿舎にご案内いたします」

 こう言う仕事は、お姉さん格のイルボンヌの仕事だ。

「イルボンヌ、キミの里はどこだい?」

「私はファルセックですよ。サリルは、アルバスの境のターカサキです」

 そうか、サルは高崎山の出身だったか。と裕介は納得した。


「じゃあ、セフィア行って来る」

 セフィアは一緒に来るつもりだったが、軍もいるし道路を魔法で固めるだけだから、村にいるように言って裕介と三人娘だけで工事現場に出かける。

 先日からセフィアもゴソゴソと何か作っているので、自分の時間を作ってやりたかったのだ。何かの研究をしているのかも知れ無い。


 道路は綺麗に盛り土で固めてあり、一番低い場所だからかかなり高い。十メートル以上あるのでは無いだろうか?

「じゃあ、固めますよ〜!」

「お願いします!」

 工事責任者らしい人が頭を下げる。裕介は五十メートル毎くらいに、道路とその基礎を石化していく、厳冬期作戦に比べれば長いだけで、楽なものだ。


「毎年崩れるんなら、部分的にアーチ型に土手をくり抜いたらどうです? 水も通り抜けますし、魔物も通れますよ」

「そんな事が出来るのですか?」

「ええ、くり抜きの線さえ引いてもらえれば、スポンと抜きますよ」

「線を引かせますので是非ともお願いします」


 こうして裕介の提案で、五十メートルに一箇所程度、土手にトンネルを掘る事になった。

 今なら乾季で水も無いし楽なものだ、但し土手の下で作業する必要があるので、三人娘に背後を護ってもらいながらの作業になる。


「もぐ ロッジを作られた時も驚きましたが、土の勇者の魔法って本当に凄いですね! もぐ」

 食事の時に、サリルがそうはしゃぐ。

「褒めてくれるのは嬉しいが、喋るか食べるかどっちかにしろ!」

「もぐ すみません もぐ」


 午後からも順調に作業は進み、二キロほど石化して一日目は終わった。

「ただいま〜」

「お帰りなさい。お疲れ様でした」

「作業は順調に進んだか?」

「あら、あなた。知っていたのですね」

「そりゃそうだ。何か作っているから残したんだ」


「えへ、ありがとうございます。順調ですよ」

「何を作ってるんだ?」

「それは未だ秘密です」

「そうか、じゃあ完成を楽しみにしておくよ」

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