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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
120/294

120 二つのアイテムボックス

「わかりました、それで姫の気が済むのなら、王でも大臣でも会うだけは会ってみましょう」

 癪に障るが、それでアイテムボックスと立ち入り許可が貰えるのなら、交渉としては成立している。子供とは言え、流石は王家の姫君だな。裕介は感心した。


「会って頂けるのですね!」

 姫の顔がパァッと明るくなる。

「では、直ぐにお父様にお話ししてきます。少しだけお待ちください!」

 姫は大喜びで出て行った。


「お会いになるんですね?」

「あぁ、金色の魚、ドラドに負けたな」

「急ぐ旅でも無いし、それも良いでは無いですか」

「まぁ、そうだけど、もうあまり環境破壊には手を貸したく無いんだよな」

「道を付けるだけですから」


「戻りました!」

「早っ!」

「お父様が、直ぐにお会いになるそうで、ここに来られます」

 王ってひょっとして暇なのか? と裕介は思う。


「待たせたね、土の勇者カワハラ殿」

 待つほど待っていない、ほとんどノータイムだ。

「大臣も駆けつけて来るそうだ」

 大臣も暇なのか?!

「初めまして、コル王。土の勇者ユースケ・カワハラです。そして妻のセフィアです」

「初めまして」

 セフィアはスカートの裾を摘んで会釈する。


「いや、良く来てくれました。ズール退治の報告を受けて是非お会いしたいと思っていたのです」

 丁度、大臣も駆けつけて来た。

「代表大臣のカマンベールです。ようこそオスタールにおいで下さいました」

 裕介はカマンベールと握手する。


「モモ姫との約束ですので、お話しをお聞かせ願えますか?」

「はい、実は鉱山の位置は特定出来ておりましてな。既に二十年前から道路建設には着工しているのです」

「そんな前から、既に工事をされているのですか?」


「と言っても乾季の間の五ヶ月しか工事は出来ないのですが、全長二千ペクトの道です。ほぼ完成しているのですが、どうして百ペクトの区間が湿地の泥濘で難攻して、埋め立てて道路をつけても雨季になると流されてしまうのです」

「なるほど。百ペクトの区間だけですか?」

 百ペクトと言えば、僅か十キロだ。

「流されているのか、雨季になると何かの魔物が通っているのかはわかりませんが、付けた道路が崩れてしまっているのです」


「今年も完成しているのですが、雨季が来れば同じ事になるのだろうと、そこで土の勇者がいてくれれば、この部分を石に固めてもらえるのにと、話していたところをモモ姫様は聞かれたのでしょうな」

「完成した百ペクトの道路を石化すれば良いのですか?」

「そうです。やっていただけるでしょうか?」


「良いですよ。それなら簡単な話しです。一週間もあれば出来ますよ」

「なんと! そんな短期間で?! 是非、お願いします!」

「分かりました。やりましょう」


「お礼は、なんでもおっしゃって頂ければ、出来る限りの事は致します」

「じゃあ、水源で釣りをさせてください」

「そんな事で良いのですか? しかし、あそこにはどんな魔物が潜んでいるか分かりません。それで立ち入り禁止区域にしているのです。身の安全は保証出来ませんが?」


「大丈夫です。自分の身は自分で守ります。いざとなれば、魔法で魔物を吹き飛ばします」

「おぉぉ、ズールを退治されたのですからな。頼もしい! では、立ち入りを許可しましょう!」

「案内と警護には、例の三騎士をお付けいたします。よろしくお願いします」


「っと言う事で、私からもよろしくお願いする。モモ、カワハラ殿が引き受けて下さったぞ」

 謁見室の入口で聞いていたモモ姫が、タッタッタと満面の笑みで走って入って来る。


「ありがとうございます。では、お約束ですので、このアイテムボックスを下賜いたします」

「ははぁ〜」

 裕介は大袈裟に跪き、首を垂れてモモ姫からアイテムボックスを受け取った。モモ姫に付き合ったのだ。モモ姫は、ご満悦の様子だ。自分が国の為に役に立てた事が嬉しいのであろう、このまま真っ直ぐに育てば良い女王になれるだろうと裕介は思った。


 城を後にした裕介とセフィアは、早速アイテムボックスを確かめてみる。女性用のポーチの格好をしたボックスだ。容量を確認してみると、なんと裕介が持っているものの倍は入る事が分かった。

「これはありがたいな。じゃあ、セフィアが持っていろよ」

「良いのですか?」

「女性用だもんな。俺が持つと不自然だよ、どうせいつも一緒にいるんだから」


 どちらかのアイテムボックスが、壊れても大丈夫な様にバランス良く小分けして入れたら、裕介のボックス内は容量の半分以下になり余裕が出来た。


「アイテムボックスってどう言う仕組みなんだろうな?」

「空間魔法で亜空間にものを置いておくものです。重力も時間の流れも空気も何もない無い空間に、魔方陣で転移させているんです」

「転移魔法なのか?」

「そうです。だから入るハズの無い大きさのものが、口を開いて魔力を通すだけであたかも入った様に転移するのです」


「口を開くと倉庫の中にいる様に見えていると思いますが、それはアイテムボックスのイメージで夢のような物ですから、実際には触れられませんが魔力を流す事で、こちらに転移して取り出す事が出来ます」

「すっごいインターフェースだな」

「インターフェースですか?」

「入出力装置って言うかな? 俺は感覚で使っていたよ」

「それで良いのですよ。魔法ってそんなものです。うふふ」


「確かに。俺の土魔法で石を昇華させると、本当は体積が一千倍になって、大爆発が起こってもおかしくないんだけど、そうはならない。魔法って不思議な事だらけだよな。あんまり深く考えずに、セフィアの言う通り感覚で使うか」

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