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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第1章 ミステイク
12/294

12 土木工事

 昨日、海野さんは勇者をアピールしながらサーズカルに行くって言ってたけど、どうしたものかな?

 俺は、追加のブレスレットを作りながら考えていた。一つ作れば型取り出来るから量産は可能だ、勿体ないが買ってもらえることは分かっているので、銀貨を潰して銀で縁取りや部分メッキもしてみた。戦争がなければ、俺はこれでかなり稼げるかも知れない。

「裕介、アクセサリーは出来たか?ステラちゃんの店に行こう」

 柿沼さんと亜湖さんが二人で誘いにくる。


 三人でステラの店に行く。

「こんにちは」

「あら、ユースケ」

「今日も持ってきたよ。それに仲間の二人が是非ステラさんに会わせろってうるさいんだ」

「まぁ、それは光栄ですこと」


「初めまして、火の勇者のダイキ・カキヌマです」

「初めまして、闇の勇者のセイジ・アコです」

 二人が前に出て、代わり替わりにステラの手を握って挨拶している。目はおっぱいに釘付けだ。ステラは苦笑いしながら挨拶している。


「で、今日はどんなものを持って来てくれたの?」

「昨日、縁取りが銀か金だったらって言ってたから、銀で作ってみた」

 ステラの目が厳しくなり商人の目になった。

「昨日って、あれから作ったの?」

「そうだ、俺も土の勇者だから」

 キラリと歯を見せて、二人に負けまいとアピールする。

「勇者って・・・みんな本物の勇者なの?」

「そうだ、嘘だと思ってたのか?」

「勇者を語る偽物は多いものね。で、土の勇者さんはどうやってこれを作っているの?」


「そうだな、その水晶を加工してもいいか?」

「いいわよ」


 俺は、店に置かれていた水晶を手に取って、陶器の底が平らな四角い皿の中に置いた。魔法で水晶を液体にする、固化すると小さな四角形の透明な石英ガラスが出来た。その上に銀貨を一枚載せてまた、液体にする。

銀がガラスの上一面に広がった。固化させ、次に銅貨を載せて同じことをする。

最後に銅貨数枚を粘土状にして紐状に丸め、ガラスの周囲を一周包み固化する。


 簡単な鏡が出来上がった。

 ステラは息を殺して見ていたが、完成した鏡を見て更に言葉を失っていた。

 いきなり裕介に抱きつき、「絶対帰って来て、私と契約して」とキスしそうな勢いで、裕介の耳元で言う。


「オイオイオイ! 石英ガラスかぁ〜 反則だ。ガラスは珪砂、ソーダ灰、石灰で作るもんだろ。それに鏡は銅でなくエナメルで保護するもんだ」

 ふふん、知識だけではこのおっぱいは味わえませんよ亜湖さん。

「あー! コイツ今、ハレンチな事を考えた!」

「やっぱり死刑だ!」

 柿沼さんと亜湖さんに、ステラと引き裂かれる。


「この鏡だけでも、金貨五枚で売れるわ」

「そうか、この世界はガラスが無かったのか!」

 亜湖さんが悔しがる。

「俺の火力なら、石英を溶かすくらい簡単だったのに!」

 柿沼さんも悔しがる。


「じゃぁ、今日は金貨二枚でアクセサリーとこの鏡もいただくわ」

「クッソォ〜女と金を独り占めしやがって…」

「亜湖さん、人聞きの悪い事言わないでください。どこの盗賊ですか?」


「そうだ、ステラ、こんな力があればと思うような、みんなが困っていることは無いだろうか?」

「うーん、そうね。あっ、この街からアブト村に行く道があったんだけどね、数年前の土砂崩れで通れなくなっちゃって、迂回路がすごい遠回りだから、みんな不自由してるわ。でも、もう木が生い茂って大変な事になってるかも」

「任せて下さい、ステラさん。そういう時のためにこの火の勇者ダイキがいるのですよ」

 柿沼さんが前に出て、ステラの手を握っている。

「じゃぁ、裕介を連れてちょっと行ってきます」

「俺は?」亜湖さんの出番はなさそうだ。

「闇の勇者君は女風呂でも覗いてなさい」

 裏切った。この人、あっさりと友情を切り捨てたよ。


---------------------


「こりゃ、確かにすごいことになってるな」


 使われなくなった街道も草ぼうぼう、土砂崩れの現場まで、柿沼さんが焼き払って、俺はその表面を粘土化して固化しアスファルト舗装のような道を作りながら来た。この世界の木って数年でこんなに大きくなるのか? と思うほど、土砂崩れの現場は既に山になって木が生い茂っている。

「とりあえず手前から順番に木を焼いて行くか」

 柿沼さんは、火の勇者だけあって火をコントロールできる。燃やすことも出来れば消すことも出来るそうで、山火事になる心配はない。


「あの、トンネルにすることも出来ますが」

「そんなことをしたら、火の勇者の出番がなくなるだろうが」

 えっ?そっち?

 柿沼さんが崖崩れ現場に生えた木を灰にしていった。

「よーし、いいぞ。裕介、土砂を流しちまえ」

 俺は山の天辺まで登り、上から徐々に液状化して土砂を流していく。そして縦壁になるところは、出来るだけ奥まで一度粘土化して、固化して固める。そうすることで、山肌のコンクリート被覆のような効果が望めるらしい。元建設会社社員の柿沼さんらしい指示だ。

 夕方までかかって、道は開通した。


「じゃぁ、ステラにミステイクが工事をしたと宣伝してもらうよう言っときます」

「いや、俺が自分で言いに行く」

 今回は頑張ったし、柿沼さんに花を持たせてあげよう。

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