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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
118/294

118 寿司

 オスタールは、初代王オス・タールの建国した国だ。代々タール家が王家を務め現在のコル王で十五代目になるらしい。モモ姫はその娘だ。


「何のお願いだろうな?」

「それは、モモ姫にお会いして直接お聞きください」

「そうです。私たちが先にお話しすると、しばかれます」

「しばくって、そんな野蛮なお姫さまなのか? 会いたくなくなってきたな」

「会って頂かないと、しばかれます!」

「益々会いたく無くなってきた」


 三騎士をしばき倒すって、どんな荒くれもののお姫さまなんだよ。裕介とセフィアはそう話しながら仲良く眠った。

 朝食は昨日の味噌汁と、今釣って来たばかりのアジの塩焼き、そしてアオリイカのイカ焼きだ。醤油を塗って網で焼いていると三人娘が起きて来た。


「おはよう御座います」

「おはよう。良く眠れたか?」

「はい、石のツルツルのベッドが冷たくて気持ち良くて、寝過ぎちゃいました」

「それは良かった。この世界の人は硬いベッドのほうが好きだからな」

「はい、持って帰りたいくらいです」

「持って帰ってもいいぞ」

「重すぎて、無理です!」

「ワハハ」


「めっちゃ良い匂いがしてるんですけど」

「今朝釣ったイカだ。食欲そそるだろ」

「はい〜!」

「縁日の匂いだもんな」

 イヌもサルも朝からご機嫌だ。


「おはようございまひゅ」

 キジはまだ寝ぼけている。どうやら朝は弱いようだ。


「ひょっとして、もう釣って来たのですか?」

「おう! アジとアオリイカを釣って来たぞ。釣り師の朝は早いんだ」

「ひやぅぅ、私はユースケさんのお嫁さんにはなれません」

 キジはまだ寝ぼけている。

「もう、間に合ってるよ。さぁ食べよう」


「申し訳ありません!」

 イヌは恐縮しているが、イカ焼きの匂いには勝てないようだ。

「はぁ〜、昨日の暖かいスープも美味しかったですが、冷たいのも美味しいです」

「今日は冷やし汁だ。出汁が良く出て旨いだろ?」

「このシンプルな魚料理もなかなか!」

「アジは塩焼きに限るよな!」

「でもやっぱり、イカが! あー、もうたまりません!」


 三人娘は再び、胃袋を鷲掴みにされ裕介に完全に服従の態度だ、モモ姫がいなければ、何処までも付いて来そうな感じだ。

「さて、今日は船で出てみるけど、どうする? 付いて来るか?」

「船? 何処にあるんですか?」

「いつも持って歩いてんだ」

 そう言いながら、裕介はアイテムボックスから、あらかじめ魔法でスロープを作った場所に船を出した。


「ひょえぇ〜! そのアイテムボックスは船も入っていたのですか?!」

「うん、ちょっと手狭になって来たけどな」

「そりゃぁそうでしょ、普通は小物しか入らないものです」

「モモ姫様は、良いのをお持ちですけどね」

「それをくれるんなら、お願い聞いても良いけどな。で、どうする?」

「行きます!」


 イルボンヌはウツボを釣ったので、釣りはちょっと怖くなっていたのだが、ミセスセフィアが兎に角カッコいいのだ。乗せてもらえるのなら、乗ってみたいと思うのは、騎士とはいえ年頃の娘だった。


「ひゃー、早い! 気持ち良いです」

 走り出した船の後部座席で、三人娘はキャアキャア言っている。フタコブの島の近くまで走って船を止めた。魚探が無いので深さは分からないが、なんとなく深そうな気がする。

 上潮で島の両側から湾に入り込む流れがぶつかり合って、複雑な潮になっている場所だ。両サイドから、綺麗に潮目が立っている。


「セフィア、こう言う海面の波立ちが変わっている場所を潮目って言うんだ。こう言う場所は餌が豊富で、魚が集まってくるんだ」

「確かにこちらとこちらは、海面の色が変わって見えますね」

「あとは鳥山と言って海鳥が集まっている場所もポイントだな」

「鳥が教えてくれるんですね」

「うん、じゃあ、やってみよう!」


 海に出ればやはり、ベイトリールの方が使いやすい。三人娘も昨日と同じ要領で、三人で一本の竿を使う。

「今日は、タイラバと言うルアーを使う。底まで落として一定の速度でただ巻くだけだ」

 タイラバのスカートとネクタイもミリムに作って送ってもらった。ヘッドは自分で鉛や石で作った。裕介はまだ塗料は詳しくないので、鉛を色付きの石でライニングする方が簡単なのだ。


「フィッシュ オン!」

一番竿は、サリルだった。

「すんごく引きます! 竿は折れませんか?」

「多分、大丈夫だ。折れても気にすんな」

「気になりますよぉ〜」

「タイか? イヤ違うな。青物か?」

「すんごく、走るんですけど!」

「カンパチ? うん、カンパチだ! こいつは美味いぞ!」


 カンパチは、ブリやヒラマサととても良く似た魚だ。口から目を通り背鰭まで黒い帯状の模様があるのが特徴で、斜め上前方から見ると、それが八の字に見える事からカンパチと呼ばれる。日本では、ブリよりも高級魚として扱われている。


「えへへ、美味しそうです!」

「フィッシュ オン!」

 負けじとセフィアが叫ぶ。

 上がって来たのは、七十センチくらいの、おちょぼ口の魚だった。セフィアはこの手の魚に強い。

「なんだコリャ? 多分フエフキダイの一種だな。 食った事が無い」


「食べれますか?」

「食べれるだろう。持って帰って食ってみよう。フエフキダイなら旨いはずだ」

「カンパチも釣れたし、今晩は寿司でも食うか」

「スシですか?」

「うん、日本食の代表だな」


 スシ…! なんと美味しそうな響きだろう。

 日本食は美味しいと、刷り込まれた女子四人の頭の中で、スシと言う甘美な響きがこだまする。

「!!! スシ オン!」

「イルボ違います! フィッシュ オンです!」 

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