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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
117/294

117 日本料理

「やっぱりアオリイカだ。しかもデカイし!」

 セフィアに網入れしてもらって、アオリイカを取り込んだ。二キロくらいかな? この世界だと、五キロくらいは超えるのも釣れるかも知れない。

 足元でプシュプシュ言っているアオリイカを締める。アイテムボックスから取り出したドライバーを、イカの眉間に刺して脳を破壊する。足側も閉める。これで美味しく食べれるハズだ。


「フィッシュ オン!」

 キシュリッジと交代して釣っていたイルボンヌが叫ぶ。

「ぬぉぉぉぉ! なんですか?! 重い!」

 物凄く竿がしなっている。

「なんだ? なんだ? 兎に角、強引に巻け〜!」

 不慣れな手つきで、イルボンヌがリールを巻く。兎に角必死に巻く。タモ網を持って構えた裕介の前に現れたのは、ハリスにグデングデンにトグロを巻いて絡まった、大きなウツボだった。


「おぉぉ! よく上げたなぁ〜! キングオブ外道、ウツボじゃないか! ワハハ!」

「イルボ! なんてもの釣るんですか!」

「へっ! ヘビでしょう、それは?! 海ヘビです! 毒があるでしょう!」

「ひえぇ〜! 私だって釣りたくて釣ったわけではありません!」

 イルボンヌが他の二人にボロクソに言われている。コイツら素になると、結構面白いなぁと、裕介は笑った。


「食べられない事も無いんだぞ、骨切りが手間だけどな。日本には、看板メニューにしている店もあったからな」

「食べられるんですか?!」

 セフィアも入れて、四人が口を揃えて聞く。

 出たぁ! この世界の食の冒険者達。というか、ただの食いしん坊だ。食べられると聞いた途端に、ウツボが食材に見えるから不思議だ。


「スタミナ料理だとか言うぞ、魚はグロテスクなものほど美味しいもんだ」

 四人のウツボを見る目が熱い。

「では、食べましょう!」

「じゃ、危ないから頭を落として内臓だけ取っといてくれ」


 カサゴが結構釣れる。ハタも混ざる。なんだかんだで大漁だ。リールも竿も特に問題は無かったので、帰ったら金型の複製と一緒にミリムに送る事にする。

「じゃ、料理するか。今日は食べた事ないだろうけど日本料理だぞ」


 磯に亀の手が生えていたので、取ってきてそれで出汁を取る。亀の手は良い出汁が出るのだ。それに下処理したカサゴと取ったワカメを入れ味噌汁。

 ハタは、煮付けにした。醤油の香りが食欲をそそる。

 ウツボは骨切りして皮が付いたまま、醤油と小麦粉で下味をつけて唐揚げにした。

 カサゴとハタの刺身。アオリイカの卵黄イカ。

 ワカメの佃煮。コメも炊いた。久しぶりの日本食。


「あなた! 美味しいですよ!」

「だろ?! 日本食は無形文化遺産なんだぞ!」

「生の魚は、初めてです。臭く無いのですか?」

「まぁ、食ってみろって!」

 三人娘はセフィアが美味しいと言うまで、食べようとしなかった。ビビっていたのか、主従関係の厳しい躾けをされているのか知らないが、恐る恐る口に運ぶ。


 口に刺身を入れ、しばらく噛んでいた。

「ん〜!!! 美味しい! なんですか、このソースは?!」

「はぁ〜 幸せ。もう世界が終わってもいい」

 卵黄イカを食べた、サリルがウットリしている。

「はうぅ、ウツボ美味しいです」

 イルボンヌもご満悦だ。


 みんなで、煮付けに手が伸びる。

「ふぁぁぁ〜 ここは天国ですか?」

「ほんと、セバスティスよりも美味しいです」

「そりゃぁ、ハタは高級魚だからな」

「コメに乗せて食っても美味いぞ」

「本当です。お汁が染みて美味しい!」


 そして味噌汁。

「ほよぉぉ〜! 口の中に海がやってきました!」

「このスープは! なんて独特な香りなんでしょう!」


 トドメは、ワカメの佃煮を乗せたお茶漬け。オスタールはお茶処なのだ。緑茶、紅茶の他、烏龍茶やプーアル茶のような醗酵茶まで大抵揃っている。無いのはコーヒーくらいのものだ。裕介はお茶漬けでシメにする。

「うーん、たくあん欲しい!」


 日本食は、三人娘の胃袋を鷲掴みにしたようだ。釣りは楽しいし、美味しいものが食べられる。

 夜は、魔物や虫の心配もなく、魔法で作られた最高級の石のベッドで眠れる。ついてきて良かったと思ったようだ。


「美味しかったですねぇ。日本食ってあんなに美味しいものだとは思いませんでした」

「日本食といえば、魚だからな。幸い今日は良い食材が沢山手に入ったしな」

 セフィアも満足したようだ。


 流木を拾い集めて、焚き火を始める。三人娘もロッジから出てきて、火の側に寄ってきた。

「今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

 イルボンヌが礼を言う。

「イヤ、大勢の方が楽しいからな。で、そろそろ誰が俺たちに会いたがっているのか、教えてもらっても良いかな?」

「モモ・タール姫です」

 サリルがあっさり言った。


「サリル、ダメじゃないの!」

「イヤ、どうせ会えば分かる事だから」

「桃太郎?」

「いえ、モモ姫。この国の王女です」

 そう言えば、この三人の名前も始めと終わりだけ取れば、イヌ、サル、キジじゃないか。吉備団子をやるから、鬼退治について来いとか言われるのだろうか?


「私たちは、この国の三騎士なんです」

 キシュリッジが言う。

「姫さまが直接お会いして、お願いしたい事があると仰せで、お二人を探しておりました」

 お願いしたいこと? やっぱり、鬼退治だ。と裕介は思った。

挿絵(By みてみん)

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