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異世界モノ作りアングラー  作者: 砂野ちや
第3章 山脈の南
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111 ミリムとアミル

 ベイグル、ゲルトのミリムセイコウ。ミリム宛に小包が届いた。裕介とセフィアからだ。

「これは何?!」

 リュックサックほどもある白い鋸のような物。

「えぇぇ! これは、サメの歯なの?!」

 同封された、写真を見る。

「ピエ〜!!!」


 一枚は、人が水揚げされたサメの上に立っている写真。次が、迫って来る大きな口の写真。鍼のついたボートにサメがアタックした瞬間の写真、最後はそのボートで大きなサメが天に向かって釣り上げられている写真。

「お兄さん、一体何を釣ってるんですか?!」


 ミリム、頑張っているな。ライフジャケットとゴム、ガラス織物をありがとう。ゴムの需要が増えているから気になっていたのだけど、安心したよ。

 ライフジャケットは、最高だ。デザインも良いし、柔らかく撥水性も良く、兎に角軽い。どうやってタイヤに使うゴムを、こんなに柔らかく出来たのかが不思議だ。ありがたく使わせてもらうよ。


 この柔らかさなら、ゴムで作るソフトルアーも作れそうだな。それを使うジグヘッドと言う鍼と、ルアーの絵を同封しておくから、暇な時に作ってみて欲しい。


 ガラス繊維は、マカロン君の言うようにこっちの方が強いはずだ。日本の製品はこっちで作っていたと思う。


 ズールと言う、伝説の怪物を釣った。ヒットさせたのはセフィアだけど、二百メートル釣り上げたのは俺だ。ボートをルアーにしてドライフライのようにトップウオーターで誘った。面白かったぞ〜!

 最初は魔法で退治しようとしたんだが、ズールには魔法が効かなくて、急遽ルアーを作った。上手く食ってくれて良かったよ。


 体長八メートル、体高は二メートルくらいかな?

 冒険者ギルドが解体してくれて、アミザのみんなで食った。少し酸っぱいが、酒と貝を入れて蒸し焼きにしたら最高だった。揚げ物もいけたな。


 ズールの上に乗ってる男がバギラスだ。

 ミリムセイコウ品の取り扱いを頼んできた男だけど、漁具屋の他に奥さんと造船所をやっている。

 いや、造船所をやっている奥さんと最近結婚した。この奥さんの造船所でカワハラギケンの船外機を作っているんだけど、ズール退治の後で俺の船に船外機が付いていたのを見て、発注が一年分来てしまったので、忙しくて当分そちらには行けそうもない。

 余裕が出来たら行くと思うので、その時はよろしく頼む。


 メルトと言う、ミリムも知っているミルト親方の弟が、アミザで鋼材の問屋をやっている。

 この人に新素材の話しをしたら乗り気で、ドアーフの精錬魔法を使って、近々、アルミとステンレスが出来そうだと言っている。

 出来たら、ミリムに連絡するように言ってあるので連絡が行くと思う。


 今はミリムの魔法で、この二つは作っていると思うが、鋼材が出来たら他の土魔法を使う人間なら、リールやミリムレンズのフレームも作れるようになるからミリムも店を離れやすくなるだろう。


 俺たちは、アミザを離れて、オスタールの首都、ファルセックに向かう。ファルセックには、大きな川は無いけど小川やため池で釣れる魚もいるだろう。これから冬だから暖かいファルセックで冬を過ごして、次の国に向かう事にする。


 じゃあ、冬のベイグルは釣りは無理だけど、根を詰めて仕事に頑張り過ぎるなよ。


            裕介、セフィア


「お兄さんは、私がベイグルを離れても良いようにちゃんと考えてくれてるんだ」

 ミリムは、その気持ちが嬉しかった。


「ミリムねーちゃん、何をにやけているんだよ」

 顔を上げると、いつの間にかアミルが立っていた。

「へっ? にやけてなんか無いわよ!」

「いいや、にやけてたって!」

「そうかな? お兄さんの手紙を読んでたのよ」

 ミリムはアミルに裕介の手紙を渡す。

「読んでいいの?」

「うん」


 アミルは裕介の手紙を読み始める。

「違うよ。硬いゴムなんじゃ無くて、タイヤ用はゴムは特別に、炭素とシリカと硫黄を混ぜて硬くしてんだよ。元は柔らかいの!」

 アミルは、手紙に向かって得意そうに話している。


「すっげ! これは化け物じゃ無いか!」

「姉さんの写真、あるわよ」

「えっ! これは、絵なの?!」

「姉さんの記憶したイメージを、紙に焼き付けたものよ。写真って言うんだって」

「こんな事が出来るんだ?!」

「姉さんは、特別よ。特別な記憶力と特別な魔法を持った人にしか出来ないわよ」


「なんで、ミリムねーちゃんが得意そうにしてるんだよ!」

「僕は妹だもの」

「俺も弟か息子にしてくれ無いかなぁ?」

「あんたには、アリサママもベラママも、ドリスパパもいるじゃないの!」

「それが、歯かい? こんなので噛まれたらイチコロだよな」

「うぅ、想像したら身震いするわ」


「で、お兄さんの書いてるルアーって作れそう?」

「ミリムねーちゃんが、型を作ってくれるんなら、簡単だぞ」

「じゃあ、二人で作って、お兄さん達に送ろうっか?」

「うん!」


 ミリムとアミルは、忙しい仕事の合間に二人でルアーを作り始める。

「どう? これ、ゴム製ミョミョル」

「うわ! リアル過ぎて気持ち悪っ! 釣れたら、ゴミョルって名前で売ってあげるわよ」


「ねーちゃん、俺のスラバールをネーミングセンスが無いって言ってたけど、自分も似たようなものじゃないか!」

「スラバールとゴミョルじゃ雲泥の差よ。スラバールだと何処の市場? って思うけど、ゴミョルは、何それ可愛いの? って思うでしょ?」

「思わね〜よ! それで、これが出てきたら詐欺じゃねーか!」


「そうね。じゃ、ミョゴルにする?」

「そっちの方がいいかも」

 二人のネーミングセンスには大差無いのであった。

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