10 ブルケンの商人
旅は順調で、予定通り十五日で中間地点のベイグルで二番目に大きな街ブルケンに到着した。石畳に花壇や街路樹があり、石造りの建物が並ぶ綺麗な街だ。俺たち五人は早速、宿屋を探す。ベッド数七床、暖炉と沐浴場付のコンドミニアム形式の宿が五人で一泊銀貨二枚だというので、ここを借りることにした。三泊の滞在の予定だ。
「じゃ、一人銀貨二枚づつ徴収です。残りの四枚で三日間の食費にします」
ここは、俺が会計を引き受け前金で銀貨六枚をオーナーに支払う。
「調理道具や食器は揃ってますよね」
「はい、布団も五人分用意しております。食材と調味料は自分持ちでお願いします。薪は、備え付けのものを使ってください。
部屋に入ってみる。綺麗だ。うん、気に入った。って、俺はこの世界では兵舎と牢屋しか知らないけど・・・
「やれやれ、やっとベッドで眠れる」と亜湖さん。
「旅の間、ずっと俺が土魔法でベッドを作ってあげたじゃないですか」
「砂場じゃないか」
「俺が焼いてやったから、暖かくて気持ち良かったろう?」と柿沼さんが笑う。
俺たちは、旅の間そうやって砂の上に寝具を敷いて眠っていた。ベイグルの夜は冷えるのだ。
「このキッチンは使い勝手が良さそうですね。夕食は任せて下さい」
と池宮さんが、張り切っている。
「じゃ、僕は池宮さんを手伝いながら、調べ物をしているよ」
海野さんは、王都で買ってきた本を取り出してソファーに腰掛けた。
「じゃ、俺たちは沐浴してから街に出かけるか」
亜湖さんと柿沼さんがタオルと着替えを持って出て行く。きっとまた、ムフフなお店に行くんだろう。
「池宮さん、何か買って来て欲しい調味料とかありますか?」
「そうだね、塩と柑橘系の果物を数個、後パンと玉子を三日分欲しいかな」
「じゃ、ひとっ走り行ってきますね」
街に買い物に出たのは自分で店に持ち込んで売ってみたいものがあったからだ。ブルケンまでの道中に俺は綺麗な石を拾っては袋に入れて持ち歩き、野営の時に魔法を使って柔らかくして形を整え、亜鉛で縁取りしてブレスレットやペンダントを作っていた。緑の石で葉っぱの形にしたものや、違う色の石を組み合わせてテントウムシに見立てたものなど、結構自分では上手に出来たと思う。そう、こういう工作は子供の時から大好きなのだ、だから釣り具メーカーに入って釣り具を自分で作ってみたいと思った。
石畳の道を歩いていくと、宝飾屋を見つけた。買取もやっているかどうかは知らないけど、商人の目で自分が作ったものを見てもらい率直な意見を聞きたいと思っていたので、中に入る。
「いらっしゃい」
年の頃二十歳前だろうか、ポニーテールの綺麗な女の子が店番をしている。俺はついそのおっぱいを凝視してしまった、でかいのだ……むちゃくちゃでかいのだ。思わず生唾を呑んでしまう。
「なに? 私のおっぱいは売り物じゃないんだけど?」
俺の視線に気づいた彼女は、ジト目で俺を見て言った。
「すっ、すまない。軍隊生活で見慣れてなかったものだから」
慌てて俺は視線を逸らす。
「ははは、別にいいわよ。慣れてるし。それより貴方、すごい剣をお持ちね」
「あぁ、これは自分で作ったんだ」
「作ったって⁈」
「あぁ、ちょっと器用でね」
「見せてくれる?」
「いいけど、今日はこっちを見てもらいたくて来たんだ」
俺は、革袋から十個ほどの作った装飾品を取り出す。
「えっ?これも作ったの?」
「うん、旅の途中で夜は暇だったからね」
「どうやって作るの? こんな石に石をはめ込んだような細工のもの、それにこの縁取り、その剣の鞘と同じね、亜鉛かしら?これが銀や金なら、献上出来るわよ」
「そうね、全部で金貨一枚でどう?」
「そんなに貰えるのか?」
「うちの専属契約結んでくれたら、後、金貨二枚出すわよ」
「今から戦争に行くから、それはちょっと無理だな」
「そうなの? じゃぁ、戻ってきたら一度顔を出してよ。私はパルージャ商会のステラ・パルージャよ」
「俺は、ユウスケ・カワハラだ」
「ユースケね。死んじゃ駄目よ、待ってるから」
ステラから両手を差し出され、握手したらハグされた。
あー、おっぱいが・・・死んでもいいかも。