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01 プロローグ

ノリと勢いで書いてる推しを幸せにしたい!(願望)物語。

よろしくお願いいたします~!

それは、いつでも読めるアルバムのようだった。


狭い空、舗装された灰色の地面、赤黄色青に光る灯り。

馬車よりも早い鉄の塊、平民にも平等に教育がされる学校。


それは前世の記憶だった。



感情の付随する情報。


あまりにも自然に脳内にあった情報に、前世の『私』と今世の「私」の境界線が分からなくなる。


前世の私と今の私は別人なのだろうか?


それにイエスと答えるには、私の人格は完成され過ぎていた。



ああ、遅くなった。


まずは私の前世の話をしよう。


私の名前は三條 美奈子。

乙女ゲームが好きな20代のOLだ。

高校生の時は毎日のように乙女ゲームをして、友達と推しについて盛り上がったものだ。


死んだのは大人になって貢げるようになった頃から少し先だ。

乙女ゲー業界が衰退の一途を辿り、残ったコアなファン向けのバットエンドが凝った作品が多数を占めている時代だった。

ほのぼの学園ものが大好きな私にはとてもつらい事であった。

勿論需要があるのはわかる。とてもわかる。

しかしメンタルにくるのでちょっとずつしかやれない。

そんな時期に一本のゲームが発売された。

新設の無名の会社が発売した、魔法学園を舞台にした乙女ゲームである。


『トラヴィス物語』というなんともタイトルの宣伝力のなさが慣れてない新鋭の会社らしい。

私は明るい学園ものだと飛びついた。


そして出会ったのだ。

もしこのキャラクターが現実に居て、告白されたら思わずOKしてしまうだろうな、と思えるほどの、人生の推しに。


しばらくは推しの事しか考えられなかった。

そして彼がメインヒーローではないことに悔しくて歯ぎしりした。

もしアニメや漫画の一本道のストーリーならば、彼は確実に選ばれない。

逆ハーレムパターンもあれど、やはりそれではいけないのだ。

彼は手を差し伸べられなければ、決して幸せにはなれないだろうキャラクターなのだ。

なのに、メインヒーローでもセカンドヒーローでもないのだ。

あくまでも攻略対象の1人なのだ。

公式からの扱いもそんなによくない。

これが現実なら彼は……うっ。

神様が選ばないなら私が選ぶ!!!私が幸せにする!!!と酔った勢いで号泣しながら友人に語った。


その帰り道だ。

『では選ばせて差し上げましょう。』

その声と共に、視界が真っ白に変わる。


そして気付いた頃には、私は幼女になっていた。








一般的に物心がついたであろう年齢になって徐々に、前世と陸続きな己は思考を開始した。

何故? どう言うこと?


記憶をもって転生した理由が分からない。

『選ばせて差し上げましょう』とは?

分からないままぼんやりと過ごして、分かった事は自分が貴族の御令嬢……。

伯爵家メークイン家の長女・ブランカであること。

トラヴィス王国という国の王都に住んでるということ。

へー、ゲームのタイトルと同じじゃんと、国の歴史を勉強しながら思ったものだ。


そんな私は7歳になって事態を把握した。

王妃様主催の、貴族の子供達を集めたお茶会は、王子様達の側近と婚約者を選別するためのものらしい。

親に失礼のないようにと何度も念押しされ、会場に入る。

そうして、王子様達の姿を見てはっとする。

第一王子ロミオ=ラ=トラヴィス。

第二王子アーサー=ラ=トラヴィス。

トラヴィス物語のメインヒーローとセカンドヒーローの 二人である。


周囲に名前の確認をすればばっちり名前一致。

頭を抱える。


ゲームの世界……だと?


言い訳ではあるが、気付かなかったのも無理はないのではなかろうか。

本作品のヒロインの名前はクラリス=シュガー。

公爵家の娘であり、王子達の幼馴染。

今も王子達と話しているあのピンクブラウンの髪の女の子が主人公。

私の名前は聞いたことがない。

あれだ、モブというやつに違いない。

モブかー。モブかー……。

そしてぐるぐるとエラーをはいてるうちに閃いた。

この会場に推しもいるのでは?と。


この身体になっても押しを忘れたことなどなかった。

推しの台詞、推しの声が身近にない環境が辛すぎて絵を描いて壁に貼った。

イマジナリーフレンドなのかと使用人達が心配そうな目で見てきたので泣く泣く箱に閉まったけれど。


王子に気に入られようと集まる女の子達の群れから外れ、推しを探す。


推し……推し……推し……。

愛しいミルクティー色の髪、灰色の瞳。

室内にいることが多いが故に白い日焼けしていない肌。

にんまりと、笑顔を作る上品な口。

主人公を気遣う優しい声。

ゲーム画面越しの推しを思い出す。


近頃のゲームは背景もキャラも動いて凄いんだよな……とどうでもいい情報まで思い出したところで、幼い声が耳に届いた。


「やだ!」


声に振り替えると、入口で親の後ろに隠れて出てこない子供が居た。

ミルクティー色の髪をしている。


「ハルト、我が儘を言わないの。」


優しそうな母親が子供を押し出す。

子供は不安そうな顔で会場へ入ってきた。

きょろきょろと周囲を見渡し、輪から外れている私をちらりと見て、すぐに視線を外した。


ハルト。

ハルト=イグナーツ。

10歳で両親を亡くし当主となる男の子。

いつもにこにこと笑ってる愛想の良い攻略対象。

その幼少期が……。

甘えたで人見知りする男の子だとう!?

聞いてないぞ公式!!公式!!!

もしかしてファンディスク情報ですか!?


混乱の状態異常でふらふらしながら考える。


『では、選ばせて差し上げましょう。』


昨日の事のように思い出せる、誰かの声。

ああ、そういうことですか。

押しの幸せは自分では作りなさいと。


しかしてモブでどうやって近付けと言うんですか積んでませんかー!!!??



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