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〜異世界冒険記〜聖女がやってきた

とある事情から聖都から聖女がやってきた。しかしそれはエルのとある小さいことから始まった悲劇のせいであった……

 手伝い(ほとんど仕事と変わらないが)を始めてからそれなりに経った。

 最初は辛くて、その後は何もすることが出来ないほど疲れていたが、今ではそれほど時間もかからなくなり、朝に始めて、昼前には終わるぐらいになっていた。

 まあそれも半分以上がマリのおかげではあるのだが…

 

 ちなみに、バケツの水汲みという仕事を僕たちが奪う形となってしまい、マサさんはやることがなくなってしまったらしい。

(どうやら村長には、若いからという理由で強制的にされられていたと聞いた)

 しかしマサさんは、

「この村には若い連中が居ないのは知ってるだろ?それは皆、旅に出ていくからなのさ!

 俺もホントは行きたかったけど、みんなに置いていかれて、無理矢理この村に住まわされていたのさ!」

と元気よく言った。

「それならこの村の村長は誰がやるんですか?」

僕が尋ねると、

「もちろん、君だよ!」

にこやかに言ってきた。

「大丈夫だって。村長といっても肩書だけだし、やることは今まで通り水汲みだけで良いから。

ちなみに、村の人にはもう言ってあるから!」


逃げ道を奪われてしまった…

 そう思っていると、

「それじゃあ、あとのことは任せたからね〜!行ってきます!」

 事前に準備をしていたのであろう、大きなカバンを背負い外に待たせていた馬に乗って、マサさんは村から出ていった。

 いつの間にか横に来て、話を聞いていたマリに、

「どうしようっか?」

と聞いてみるが、

「別に良いんじゃない?

やることはこれまでと変わらないんでしょう?なら頑張ろうよ!」

 僕の肩に手を載せながらそう言った。

(逃げ道を潰されているし、大人しく村長という肩書を受け入れるか…)

 僕は、そうして1つ大人のやり方というものを学んだ。


 そうして季節は変わり、夏がやってきた。

 気温は日本の時と同じく暑くなってきて、畑や稲作をしている人達は春の頃とは違い、麦わら帽子を被って作業をするようになっていた。

「もう〜最近は暑すぎる!」

 そう言いながら、マリは扇風機の前で涼んでいた。

 ちなみに、こちらの世界にはエアコンはないらしくみんな扇風機で夏を過ごすらしいが、この日は30℃を越していて、陰で休んでいても汗をかくほどだ。

 補足ではあるがこの扇風機は、聖都から運ばれてきたものだ。

 毎週決まった曜日に行商人がやってきて、こちらからは野菜や果物を。

 聖都側は日常生活に必要な物を貰うという、いわゆる物々交換をしていた。

 そうしてこの村は生計を立てているらしい。 

少し不便な感じだが、村の人達は慣れているらしく、僕達も少しずつだが慣れていっている。

 少ししてトモコさんが、

「こっちの夏は、日本の夏とは違うのかい?」

と聞いてきた。


 エルから隠しておくようには言われなかったので、トモコさんには僕らが日本という異世界から来たことは伝えてある。

 伝えるまでには少し躊躇いもあったが、マリが、

「これからもお世話になるんだし、隠し事はしないほうがいいと思うよ?」

 そう提案してくれたので、思い切ってトモコさんに伝えてみた。

 返事が少し怖かったが、

「そうなんだねぇ〜、まあそれならこの世界について色々と教えなきゃね。」

あっさり受け入れてくれた。


 理由を聞いてみると、

「何となくこの世界の住人ではないことは気づいてはいたんだよ。

 だからいつか話してくれる日を待ってたんだけど、ようやく話してくれて嬉しいよ。」

 本当にこの世界でお世話になっているのがトモコさんで良かったと僕とマリは思った。

 日本から来たことを伝えたその日から、僕達はこの世界について色々トモコさんから聞いて勉強していった。

 聖都との物々交換も勉強の中で知った。 


 そうして僕が物思いにふけっていると、

「日本では暑かったら、エアコンで冷房をつけていたので家の中は涼しかったですね。

散歩をしている時はとても暑かったですが。」

と笑いながら答えていた。

「エアコン?冷房?何だか分からないけど、便利な世界だったんだねぇ〜。」

トモコさんがそう言った。

(便利なものが多かったけど、そのせいで問題も多かったんだけどね…)

僕は心の中でそう思った。


 確かにエアコンは便利だが、それに慣れてしまうと暑さに弱くなってバテやすくなってしまい、体調を崩したりする人も多かった。

 しかしこっちの世界ではエアコンのような便利なものはないが、対策をきちんとして仕事をしているため、老人でも基礎体力ならあちらの若者にも負けないだろう。

(発展して便利なものを作るのは良いのだが、それに甘えた生活をするといけないんだな…)

 この世界に来て、知らなかったことをたくさん学べた。

 この世界に送ってくれたエルには、とても感謝している。

 

 そしてそこで思い出した。

「少しエルに伝えることが出来たのでちょっとスマホをとってきます!」

 そう言いながら部屋にあるスマホを取りに行こうとしたら、

「電話をするなら川の近くでしてきたらどう?あっちのほうが少しは涼しいでしょうし。

 マリも一緒に行ってきたらどう?何ならそのまま水浴びでもしてきたら少しはマシになるでしょ。」

そう提案をしてくれた。

 なのでマリに聞くと、

「一緒に行く!でもワタル待ってるもの暑いから先に行って水浴びしてくる〜!」

と言い、走って川へ言ってしまった。

 僕とトモコさんはやれやれといった感じで見送り、僕も部屋にあるスマホをとり、

「行ってきます!」

とトモコさんに言い、マリの後を追った。


マリを追っている途中、

(そういえば、エルってどんな姿だったっけ?)

 初めてあった日に、しっかりと見ていたはずなんだけど、あの時は念願の異世界に行けることにワクワクしていてあまり良く見ていなかった。

(確か、見た目は小学生の低学年ぐらいで髪は黒のショートヘアだったかな。

 服は白色でランドセルを背負わせたらまんま小学生だったな〜。)

 エルが聞いていたら怒りそうな気がしたが、覚えている限り、そんな姿をしていたはずだ。


「あの姿で、「私は女神です。」って言われても普通は信じないだろうなぁ〜。」

と思い出しながら、

「僕は信じちゃったんだよな〜」

 と思い出し笑いをしながら、先に川に着いていたマリに追いついた。

「やっと来た〜!遅いよ〜。」

そう言って、マリは既に水浴びを開始していた。

「お前が早すぎるんだよ…」

 僕は呆れながら、マリが水浴びをしている様子を眺めていた。

(本当に楽しそうだよな〜

もしかしたら、僕よりも楽しんでいるかもな。)

笑いながらそう思った。


 僕の巻き添えで連れてこられてしまったけれど、不満がないなら良かったと、そう思いつつエルに連絡をしようとスマホを出そうとすると、

「ワタル〜、川の上の方から何か流れてきたよ〜。」

 マリが言ったので川の上流辺りを眺めてみた。

 ここは川で言うなら中流ぐらいなので、ちょうど水浴びをしてもあまり怒られない。

 そう思っていると、

「………は?」

見た光景があまりにも信じられなかったので、思わず大きく口を開けてしまった。


 どうやらマリも見えたらしく、

「え〜と、あれってもしかしなくても女性だよね?」

「そう…だよね…」

僕も何とか正気に戻り、返事をした。

 川の幅はそこそこ広く、流れも早くはないがあるため、人が流れることも出来そうではあった。

 しかしとりあえずは、

「このままだと、下流まで流れていっちゃうし、とりあえず助けようか?」

とマリに提案して、その女性を川から出した。

 そうして、

「どうしようっか?」

「私もどうしたら良いか分かんない…」

マリに聞いても、ちょっと戸惑っているようだった。

 僕も流石に平常心ではいられなかった。

そこでちょうどスマホが震え、僕が画面を見ると、どうやらエルからの電話だった。

 タイミング的にはこの状況の説明だろう、そう思いつつ電話に出た。

「もしもし、エルか?」

「そうよ、エルよ。ひさしぶりね、ワタル。」

やはりエルからの電話だった。

 色々聞きたいことはあったがとりあえず、

「電話のタイミング的には、今の状況を見ているんだろう?とりあえず説明をしてくれないか?」

そう聞いた。

 エルは、

「ええ、確かに見ているわ。それじゃ説明を始めましょうか。」

とエルは説明を始めた。


「今助けた女性はシャルロッテ。聖都の教会で聖女をやっていたわ。

 ただ、教会で上司からセクハラにあって少し前に辞めてしまったわ。」

(昔の日本の会社かよ…)

僕は昔、日本にいる母から、働いていた時の様子を聞いたことがあった。

 その頃はセクハラという言葉はなかったが、上司からの今で言う、パワハラに当たるものはあったらしい。

 そんなことを考えながら、エルの話は続き、

「教会の仕事を辞めた後は、家で毎日祈りを捧げていたらしく、その信仰心が私に届いていたのよ。」

とのことだ。


エルが女神なのは疑ってはいなかったのだが、実際に祈りを捧げる人がいるんだなぁと少し驚いていた。

「毎日祈りを捧げていたから、何かお礼をしてあげようということで、神託としてアンタのことを伝えたのよ。

「始まりの村に勇者がいる」ってね。

聖女と勇者ってアニメだと一緒に冒険したりするでしょ?」

エルはそういった。確かにアニメや漫画だとそういうことも多かった。


 だが、

「だったらなんで川から流れてくるんだよ?」

と僕が疑問を口にすると、

「聖都を抜けて、始まりの村にたどり着くためには結構な距離があるのよ。

馬車とかなら1時間で行けるけど、徒歩ってなるとかなりかかるのよ。

 その人、歩いてここまで来たのよ…この暑いのに荷物も持たずに…」

(どれだけ勇者に会いたいんだよ…)

と少し呆れてしまっていた。


 僕は、正確には勇者ではない、勇者ではないが代わりとしては喚ばれたので勇者(仮)ではある。

 なので、

「この女性は僕に会いに来たと?」

「まあ簡単に言うならそういう事。」

(勘弁してほしい…)

女性を見ながらそう思った。


 見た目は、20代後半ぐらいであり身長は160cmぐらいでマリと同じくらい。

 体型的にはマリと同じく、スタイルが良く髪は水色でロングヘアーだった。

 顔を見てみると、可愛くて惚れる男が多いだろうとは思った。

「ちなみに、川で流されていたのは村の近くまでは来たけど、この暑さで熱中症になり川へ落ちてしまったの。

 倒れたときにうつ伏せになっちゃっで、流石に危ないから仰向けに変えといたわ。」


「そんなことが出来るなら、川から出しといてくれよ…」

僕はそう口にした。

 それと同時に少しだけならエルはこの世界に干渉出来ることを知った。

 いずれ使わせてもらうかもしれないからしっかりと覚えておこう。


 そう思っていると、

「川の流れる先にアンタ達2人が居るのが見えたからね。

 アンタ達なら見捨てはしないだろうと思ってそのままにしたのよ。

 一応熱中症ってこともあったから身体を冷やすって意味でも川の中の方が都合が良かったのよ。」

エルの説明を聞いて納得した。


 僕も日本にいた頃に熱中症になったことがあった。

 その時には、身体を冷やすために保冷剤を頭や首に当てて冷やしていた。

 後は塩分摂取のため、スポーツドリンクを飲んでいた。


 そこで、

「身体を冷やすのはけど、塩分はとらせたのか?」

とエルに質問した。

「流石にそこまでは出来なかったから、今すぐ塩分を与えてあげて。」

 いつもの少しおちゃめな雰囲気ではなく少し焦っている感じに聞こえた。

 僕も熱中症の怖さは知っていたので、

「この人を連れて、トモコさんにこの人が熱中症の事を伝えて!」

マリにそう言った。

 マリは僕の気迫に少し戸惑っていたが、

「分かった!」

そう言いつつ、負ぶって家に運んで行った。

「出来るだけ涼しくしてあげてくれよ〜!」

マリに向かって呼びかけ、分かったと言うように片手を上げて走っていった。


「どうせ他にも何かあるんだよね?」

 とりあえず出来ることはしたので少し落ち着いてきたのでエルに再び質問した。

 連絡をするときは緊急時だけと言っていた、確かに今のもかなり危険ではあったけれどエルだけでも対応は出来た筈だ。

 そう思っていると、

「確かにアタシだけでも対応は出来たわ。

『無茶をすれば』だけどね。

 ただどうしてもアンタに伝えとかなきゃいけない事があってね…」

 やはり何かあった、そう思い、

「で、用件は?」

 少し嫌な予感はしていたが、聞かないことには分からないので聞いてみた。

「実は、聖女にはもう1つ役割があってね。それは勇者と結婚して子供を産むって役割もあんのよ…」

「………つまり?」

「アンタにはあの子と結婚して子供を産んで貰うわ。」

 大変なことになってしまった…そこまで深刻な問題だとは思ってなかった。


 僕は川の側でスマホを持ったまま立ちつくしてしまった。

 スマホからはエルの、

「頑張ってね…」

少し申し訳なさそうな声が声が聞こえ、

(これからどうしよう…)

頭が真っ白になっていった。

とりあえず今回の話で流れが少し変わったかと思います。ホントはシリアス展開にしようと考えていたのですがやめました(笑)もし、シリアス展開も欲しいならコメントをお願いします。それでは次回もよろしくです!一応今のところはネタがあるので1日でかけますがなくなるとどうなるかわかりませんのでご理解お願いしますm(_ _)m

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