〜異世界冒険記5 森騒動解決編〜 振り下ろした結果……
「ーーふむ、まぁこんなものか」
ガラットはそう言って振り下ろした斧についた血を振り払いつつ肩に担いでいた。肩に担ぎながらふと
(…そういえばこいつ、何故かは知らないがずっと何かに祈っていた奴だったな)
そんな事が頭をよぎったので
「そういえばお前は先程まで何にーー」
祈っていたのだ、そう尋ねようとしたが既に粛清が完了している女には返事をする事が出来ないのを思い出し
「ふっ、まぁ気にするだけ無駄か」
そう言ってガラットは女から目を外していき、そして周りに居る魔族の方へと目を向けてみた。すると側近から短く
「不穏因子の粛清、お疲れ様でした」
そうひと言話しかけてきたのでこちらも
「うむ」
そうひと言短く返しつつ、辺りを見渡しながら
「片付けは完了しているか?」
そう尋ねるとその側近は頷きながら
「ええ、いつでも出発出来ますよ。ーー号令を」
そう言っていた。なので俺は周りの魔族達を向き
「出発するぞ!!」
そう号令をかけた。周りの部下達はそれぞれ片手を振り上げつつ
「「「お〜!!!」」」
そう気合を入れていた。その様子を見ながら俺は
(ふむ、気合は十分な様だな)
と考えた後に
「よし、俺に付いて来い!!」
そう言って周りの部下を従えつつ、ミナが逃げた村へと向かって行った。
そんな魔族達を草むらから隠れて見ていた僕とマオウ。僕は草むらに隠れつつ
「…女性相手にも、容赦しないんだね」
そう言って倒れている女性を見ながら、拳を握りしめていた。隣ではマオウが補足として
「一応話しておくけどあんな事をするのは新魔族と言われている連中だけであって、僕やマオみたいな旧魔族達は絶対にあんな事はしないからね?そこだけは勘違いしないように!」
そう強くそう念を押されてしまったので僕は
「ははっ、了解了解」
そんな感じに笑いながら返事をしていた。
「ーーで、ここからどうするのマオウ?予定だとここで初接触する筈ではあったけど、そんな事を目の前で繰り広げられちゃって…しかも出られなかったし」
僕は村の方へと目線を向けつつそう話しかけていた。どことなく僕の視線は冷たいものとなっている、そんな自覚が僕にはあった。だけどマオウはそんな僕には気にせず
「まぁ良いから見ててよ」
そう言って倒れている女性へと歩み寄って行った。
実を言うとさっきの悲劇の時に僕達も近くの草むらに隠れていたんだ。で、僕は当然あの女性を助けようとしたんだけど隣に居たマオウから
『僕に考えがあるから、このまま見届けてくれないかな?』
と言って助けようとするのを止められてしまっていた。なのでさっきの冷たい視線の正体についてはそんな理由からなのだ。
(……はあ、思い出しただけでも自分にイライラしちゃうよ。いくらマオウの指示とは言っても助けられた人、いや魔族を助けられなかったしーー)
ここに至るまでの流れを頭の中で整理していたけど不意に
(ーーあれ?そういえばこの世界の魔族の『死の概念』ってどんなものなんだろう?というより魔族の成り立ちすら全く知らないし…)
そんな初歩的な事すら知らなかったなと思ったので、一番魔族にもついて詳しそうなマオウに質問するチャンスかなと思ったので
「そういえば魔族ってーー」
とマオウへ質問をしようとしたがタイミング良く
「終わったよ〜ってどうかしたワタル?」
マオウのやっていた事が終わったようでそんな声が聞こえてきたので
「あぁいや、魔族についてほとんど何も知らなかったから、この機会にマオウから色々聞こうかなと思ってね」
そう言いながらマオウの方へと振り向いていた。
するとそこには
「あぁ知らなかったんだ〜」
という納得した〜みたいな感じのマオウと
「ーーどうもはじめまして」
そう言って緊張した感じの先程斧で切られていた女性が居たのだった……