〜異世界冒険記〜魔王に頼まれた2
ある日、ワタルのスマホに一件のメールが届く。
メールを見ると、それは魔王からだった。
マオウが女性を助けた日の朝の出来事である。
僕は、いつもの日課を終えて家でくつろいでいた。
すると、
「あれ?何かスマホにメールがきてるな。」
と久しぶりにスマホを手にしながらメールを確認してみた。
「いきなりでごめんね。僕はマオウ。
名前の通り、この世界の魔王さ!
少し話がしたいから1人で村の入り口に来てくれないかな?」
そこには上の内容が書かれていた。
「魔王ね……まあ、メールの内容的に敵意がありそうな感じもしないし、行ってみるか。」
と立ち上がりながら村の入り口へ行ってみた。
「やぁ、朝早くからごめんね?」
村の入り口へ行ってみると、そこには青年の様な姿をした黒髪の男が立っていた。
「いや、大丈夫ですよ。僕は、朝は割と早く起きて日課を済ませるので。」
と僕は答えた。
「いや〜、それは良かったよ。
もし連絡を見てくれなかったら、どうやって気付いてもらおうか困ったからね?」
と青年が言うので、
「普通に中に入れば良いのでは?」
と言いながら村の中へ誘導してみた。
(これで入れなかったら、この青年は村に敵意を持っていることになる…
持っていなければ普通に入ることが出来るが…)
そう僕は思っていた。
すると、
「中に入っていいのかい?なら遠慮なく。」
と言って村の結界がある位置を過ぎて村の中へ入ってきた。
僕は、
「ようこそ、始まりの村へ。
ちなみに、今通ったところには結界があり、村に敵意を持っている人は入れない仕組みとなっています。
まあ、知ってはいるでしょうけどね…」
と少し安心しながら話した。
すると、青年は、
「さっきも連絡したようにただ僕は君と話がしたくて村に来たんだ。
だから村に敵意なんか持たないよ。」
と軽い感じで言うので、
「となると、貴方は本当に魔王のマオウなんですね?」
と僕は確認してみた。
「そうだよ〜僕が魔王のマオウ。
ってややこしいから普通に名前の方のマオウだけで良いよ。」
と答えた。
「確認なんですけど、魔王ってこの世界では人間の敵何ですよね?なら、この世界を滅ぼすのが目的なのでは?」
と僕が聞いてみると、
「ん?違うよ。僕は反対に人間が大好きさ、だから滅ぼすことはしないよ?
ほとんど。」
とマオウは言った。
最後に怖いことが聞こえたが、マオウは本心らしく、
「僕が生まれたのって君がこの世界に来たからなんだけど。
君って正規の勇者じゃないでしょ?
だから僕も正規の魔王じゃなくて魔王(仮)なんだ。
だから、歴代の魔王とは違って僕は優しい人間の味方に当たるのかな?」
と補足をしてくれた。
(優しい人間の味方ね…つまりは。)
と僕がそこまで考えていると、
「そうだよ、君が考えているように優しくない人間には敵意を向けるよ?
まあ殺しはしないけどね?」
と少しお茶目に言った。
(まあ殺しはしないけど、殺されたほうがマシだって思うような事はするんだろうな〜。)
と僕は心の中で思っていた。
そして話を聞いていて思い出したので、
「僕がこの世界に来たから生まれたって事は、僕は本当は貴方を倒す必要があるの?」
と聞いてみた。
僕はエルから勇者(仮)ではあるけど魔王を倒すために召喚されたわけだ。
なので、本来なら倒さなくてはいけないんだけど…
そんな僕の心境を悟ったのか、
「いや、別に倒す必要はないよ?僕達はそれぞれ(仮)だからね、正規の勇者と魔王じゃないんだよ。
だから、そんな使命は存在しない。
というか存在しても守らないけどね、ハハッ!」
と笑いながら答えた。
(話していて思ったけど、何となく僕と似ているかな…)
とそんなことを感じた。
まあ、僕だってエルから受けた使命を守らずにここで呑気に暮らしているから同じだろう。
そう思っていると、
「あ、でも実は女神が新しく正規の勇者を召喚したんだ。
モンスターが村を襲っているから助けて欲しいって感じだったかな?
そのせいで新しく正規の魔王も誕生しちゃったんだ。」
と軽くいったので、
「へぇ〜、新しい勇者に魔王ね。」
と僕も軽く答えた。
「ちなみに、世界にいるモンスターは僕が呼んだわけじゃなくて勝手に湧いたからね?
僕は無関係なんだ。」
と言ったので、
「まあ予想は出来てたよ。もしモンスターを湧かせているのがマオウなら今頃この村は滅びてるだろうしね。ハハッ。」
と僕は笑いながら言ったので、
「だよね〜!ハハッ。」
とつられて、マオウも笑っていた。
「あ、ちなみに正規の魔王も今はあまり人間には興味ないらしくてね。
だから、しばらくは安全だよ。
将来的には分からないけどね?」
と少し怖いことを言っていたが僕はそのまま流した。
「それで、結構話がそれたけどここに来た目的を教えて欲しいかな?
ただこうして話をするためだけじゃないだよね?」
とマオウに聞いてみた。
「察しが良くて助かるよ〜。」
と言いそのまま話を続けていった。
「実は、今聖都には奴隷が売られているんだ。
もちろん王様が認めているわけじゃなくて地下でこっそりとだけどね。
しかも、売られているのは若い獣人の女の子ばかりなんだ。
だから僕はその子達を助けようと思ってるんだ。
君にはその手伝いをして欲しいと思ってね。
相談に来たのさ!」
と話した。
(奴隷ね…アニメや漫画でも読んだことがあるけれど、やっぱりここにもあるのか…)
と少し怖い顔になりつつそう思っていた。
「ちなみに、他の国ではきちんと禁止されてるよ?だけど、聖都の王様って割と緩くてね、奴隷のことは正式には禁止にはしてないんだよね〜。」
とマオウが続けたので、
「僕にも聖都へ向かい、助ける手伝いをすれば良いのか?」
と僕は、今にも飛びだして行きそうな感じだったので
「いや、助けるのは今回は1人だけにするよ。流石に人数も多いしね。
まあ、奴隷たちは日雇いみたいな感じだから、固まってくれているのは都合が良くて助かるけどね。
それに、色々と暴行なんかもされてるみたいだし…」
と後半を話すときにはだいぶ声が暗くなっていた。
「本当に人間が好きなんだな。」
と僕は声に出して言ってみた。
ここまで、優しい人間 (魔王なんだけど)は、他に居ないだろう。
「まあ、優しい人間限定だけどね。自分でも変わっていると自覚はあるよ。ハハッ。」
と笑いながら言ったので、
「それで、僕はいったい何をすれば良いんだ?」
と話を戻して聞いてみた。
「とりあえず、僕が今日の夜に1人この村に連れて来るからその子を治療して欲しい。
多分、全身キズやアザでいっぱいにだろうからね…」
と暗い顔で言ったので、
「分かったよ。準備しておく。」
と僕は引き締まった顔でそう答えた。
「僕の方も色々と準備があるからね。
これから聖都に行ってくるよ。」
と言いつつ離れようとしたので、
「何時頃を予定にしてるんだ?」
と慌てて僕は聞いておいた。
「う〜ん、今から準備するとしても、かなりの時間がかかるから多分深夜の1時ぐらいかな?」
とマオウは言った。
「なるほどね。」
とスマホを見ながらタイマーをセットしておいた。
ちらりと今の時間を見ると朝の9時頃だった。
幸いにもまだ時間は少しある。
「分かったよ。それまでにこっちも準備を終わらせておくよ。」
とマオウに伝えた。
「了解〜。こっちも助け終わってからすぐにこの村に向かうんだけど…
連絡するのに多くの体力を使うから、君のスマホのマップで確認して欲しい。
とりあえず、マップを今開いて欲しい。」
とマオウが言うのでマップを開いてみた。
「この星マークが僕だからね。」
と言いながらマップに表示されているマークを指した。
「了解。」
と言いながら僕はスマホをしまいつつ、
「時間になったらどのあたりで待っていれば良いのかな?」
とマオウに確認してみるが、
「まあ、そのへんは適当にしておいて。
こっちは多分あまり体力も残らなくてそこまで気が回らないかも…」
とのこと。
「はぁ…了解。」
と僕はため息をつきながら言って、
「それじゃあ、よろしく!」
と言ってマオウは聖都に向かっていった。
今回は、少し公開を早くします。
理由として、今回書いた内容まで昨日の時に公開したかったのですが、あまりにも長くなってしまったので、 (もっと長い回もありますが…)
自重しました…
今日は仕事もないので、夜にもう一つ公開予定です!
それでは、今回もよろしくですm(_ _)m