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〜異世界冒険記〜魔王に頼まれた1

ある日、聖都の牢屋の中に女性が居た。

毎日の奴隷の様な生活に次第に生気も薄れ、

瞳からは光がなくなる中、1人の声が聞こえた。

(この地獄を誰か終わらせてくれないかな…)


私は牢屋の中でそう願っていた。


ここは聖都の地下深くにある奴隷市場で、私はそこで売られていた。


周りにも牢屋がたくさんあり、そこにはたくさんの若い女性ばかり居る。それも獣人しか居ない。


私も猫の獣人であり、昔は周りからもキレイと言われるぐらい、容姿には自信があった。


毛並みもよく、耳や尻尾はキレイな黒色で身長も周りより高く、将来はキレイなお嫁さんになれるとまで言われていた。


 しかし、そんな将来はやってこなかった。

突然、私達の村が人間達によって襲われて、この聖都に連れてこられた。


大人たちや男は全て年齢に関係なく殺され、女性は若い子達を残して全てが殺された。


残された私達は、聖都で奴隷として働かされた。

もちろん、お金は貰えずに寝床は今閉じ込められているこの牢屋だ。


まだ、それだけ何とか耐えることは出来たのだが、次第に仕事をたくさん増やされ、出来ないと殴られたり蹴られたり、酷いときはムチで打たれた。


そんな毎日を私達は過ごしていた。おかげで、キレイだった毛並みは見る影もなく、顔や身体には傷やアザだらけでいっぱいになった…


一応、最低限の食事は貰えてはいたが、そんなものでは全く足りなくて、みんないつもお腹を空かせていた。


そんな毎日を過ごしていたので、みんな次第に瞳からは光が消えていった。


私は、捕まえられている中では1番年長ではあったので、


(最期まで諦めるものか!)


そう思っていたが、次第にエスカレートしていく体罰に心も廃れ、諦めていった。


元気な内は脱走も考え、実行した子も居たが結局は見つかった。


見つかった子達はその後、姿を見ることが無かった…

 多分、処刑されて殺されたのだろう。


そんな生活を続けていたので、私も次第に瞳からは光が失われていき、最近は、


(いっそ、殺されるために脱走でもしようかな…)


なんて考えが浮かぶようにまで追い詰められていた。



 「今日にでも脱走しようかな…」


と、私は呟いていた。


周りでは今日もたくさんの仕事をした村の仲間達が眠っていた。


「えっと、この子の名前は…」


思い出そうとしたが分からなかったので、


「流石に自分の名前は忘れてないよね…確か…」


と自分の名前を思い出そうとした。


「あれ?思い出せない…」


 しかし、分からなかった。 


「あ〜あ、とうとう自分の名前も思い出せないぐらい追い詰められたか…」


と自分に呆れていた。


(ここまでだね…もう諦めて、脱走して殺されようかな…)


そこまで考えて牢屋の鍵に手をかけた。

この牢屋は中から自由に開けられるようになっているので、牢屋から出るのは簡単だった。


(外まで出ることは出来ないだろうけど、途中で会う何人かは道連れにしてやる!)


と心に決め、牢屋の鍵を開けようとした。


「その脱走、もう少し待ってくれないかな?」


と頭の中に若い男のような声が聞こえた。


声を出すのは危険だと思い、頭の中で、


「誰?」


と声を出すようにして聞いてみた。


「そうだね。今のところは君の敵ではない事は言えるかな?後は、そこを脱出した後から話すことにするよ。」


と脱走が簡単に出来るような口ぶりだったので、


「どうやって脱走するって言うの?」


と聞いてみた。


「もうちょっとで完成するから待っててよ〜。

よし、出来た!」


男がそう言うと、魔法陣が足元に現れた。


「これに乗れば良いの?」


私が聞くと、


「そうだね。ちなみに早く乗ったほうが良いよ、もうすぐ監視の人が来るから〜。」


と軽く言うので、


「気楽に言わないで欲しいんだけど…」


と言いながら、魔法陣の上に乗った。


すると、


「にゃあ〜。」


という鳴き声が牢屋から聞こえた。


(え?私、今どうなってるの?)


と変化に戸惑っていたが、


「早く、その窓から出てきて。」


と男の声が再び、頭の中に響いたので、


(もう、悩んでいる時間もないわね…)


と思い、窓に向かって走っていき、壁を登り外へ出た。




 (本当に外へ出れた…)


と、私は驚いていたが頭の中に、


「そのまま、歩いて聖都の正面の門まで来てくれないかな?」


という声が響いていたのでその指示に従い、聖都の正面の門まで歩いて行った。


門までたどり着くと、


「やぁ、お疲れ様〜。」


と私を出迎える1人の青年を見つけた。


声を聞く限り、先ほど頭の中に聞こえた声と同じだったのでこの人が助けてくれたのだろう。


ちなみにここへ来るまでに、誰にも見られることなく来ることが出来た。


「アナタが助けてくれたの?」


と私は聞いてみた。


まあ猫になっているので、


「にゃあ〜!」


としか声が出なかったが…


「とりあえず、もう少しここから離れてから戻すから、ちょっと待っててね〜。

よいしょっと!」


と、その青年は私を抱き上げた。


「うにゃあ〜!」


と私は少し抵抗したが、


「まあしばらくは寝ていても大丈夫だよ。


まあ歩いているから揺れるとはおもうけどね。」


と男は抱き上げながらそう言った。


私は少し迷ったが、日頃の疲れが溜まっていたので、男の中でおとなしく眠った。




 「よし、到着〜!」


と男がしゃべる声で目が覚めた。


辺りを見渡してみても明かりがある事しか分からなくて、


「にゃあ〜?」


と少し疑問系で声を出してみた。


すると、


「まあよく分からないよね?とりあえず今から元に戻すよ。」


と男は私を降ろし、その後口元で何かを呟くように唱えていった。


唱え終わると私の足元が光り、私は猫から元の人間の姿に戻ることが出来た。


「戻れた?」


と私は確認するように自分の姿を確認していった。


「安心してよ。ちゃんと元の姿に戻れているから。」


と男が言ったので男の方を振り向き、姿を確認してみた。


身長は170の後半といった感じで、すらっとしていて、髪は黒のロングヘアーだった。


「まずはお礼を言いますね?助けていただき、ありがとうございます。」


と私はお辞儀をしてお礼を言った。


男は、


「うん。どういたしまして。」


と答えた。


私は、


「助けてもらっておいて失礼なんだけど、アナタはいったい誰なの?」


と先ほどの質問をもういちどしてみた。


「そうだったね。後で説明すると言ったんだったね。なら僕の説明をしようか。」


と男は言いながら続けて、


「僕の名前はマオウ。名前の通り、この世界の魔王だよ。」


と簡単すぎる自己紹介をした。


「いやいや、流石に簡単すぎない?もっとアタシを助けた理由とかないの?」


と聞いてみた。


「そうだね、一応理由はあるけど…

本当に聞きたい?」


と先ほどまでの雰囲気とは変わり、少し暗い感じの声色になったが、


「教えて!」


と私は言った。


「それじゃあ言うけど、君を助けたのは僕の気まぐれさ!」


と言った。


「気まぐれ?」


と私が聞き返すと、


「そうだよ、気まぐれだよ。別に君だったから助けた訳じゃない。だから勘違いはしないでほしい。」


とあっけらかんに言うので、


「そう…なのね…」


と私は少し落ち込んだ。


そこでマオウは、


「あ、でも助けたのが君で良かったとは思ったよ?」


と続けたので、


「何で?」


と私は聞き返した。


「だって、他の牢屋にいた子達、君を含めて全員、瞳の中の光がなかったし…

でも、君は少し希望を与えたら瞳に少し光が戻ったからね。

だから、助けたのが君で良かったと僕は思うよ。」


とマオウが言った。


(まあ、理由はひどいけど助けて貰ったからには何かを返さないといけないだろうし…

多分、あの人まだ何か隠してる…)


と私は思ったので、


「助けようと思った目的は何?」


と少し口調を強くして言ってみた。


マオウは、


「目的と言う程ではないけど、僕はこの世界の困っている人を助けてあげたいんだ〜。

さっき、君だから助けた訳じゃないと言ったのは

そのためさ。

そして、その困らせている原因の人達をこの世界から消し去る、それが僕の目的さ!」


私は少し背筋が凍りそうになった。

消し去る、ということはその人を殺すと言うことだろう…。


こんなにも笑顔で、人を殺すと発言できる人は怖いと心から思ってしまった。


そんな感情が顔に出ていたようで、


「あ、ちなみに、消す、と言っても殺しはしないよ?

確かに僕は魔王で人間の敵かもしれないけど、

基本的には仲良くしたいと思ってるし…」


と言ってくれたので、私は一安心していた。


しかし、


「でも、流石に今回の奴隷については僕も我慢が出来なくてね、介入させてもらったよ。

本当は全員助けたかったんだけど、流石に君だけで限界だったんだ…」


と言ってくれた。続けて、


「君たちの村が襲われたことも、もちろん知っている。

その時も介入しようとは思っていたけど、魔王という立場上、少し忙しくてね…

着いた時には全てが終わっていたよ。

すまない…」


と本当に申し訳なさそうに言うので、


「アナタって本当に魔王何なの?

魔王というのは人間を滅ぼすことが目的だとばかり思っていたわ。」


と私は思わず聞いてしまった。


聞いていた限り、魔王と言うよりは聖人に近い考え方をしていたからなのだが。


「え?僕以外の魔王なら、殺されるよ?

僕は人間が好きだから助けるけど、普通は助けずに殺されるよ?

だから、僕以外の魔王には気をつけてね?」


少し寒気がしたが、話を聞いていて気になった点があったのできいてみた。


「え?魔王って1人じゃないの?」


と私は聞いた。


「うん、実は今この世界には2人の勇者が居るんだ。

だから、魔王も2人になっちゃった。

ちなみに1人目の勇者がこの世界に来て僕が生まれたんだけど、

1人目の勇者って実は本当の勇者じゃないんだ。

適正がほとんど無いから、勇者(仮)なんだ。」

とのこと。

続けて、


「だから、その時に生まれた僕も魔王というより、魔王(仮)だからね。

考え方もこれまでの魔王と少し変わったんだ。」


「なるほどね。」

と私が納得すると、


「それと、言い忘れてたんだけど勇者って異世界から来た「人間」なんだ。」


マオウがそう言った。


私は自分でも表情が暗くなるのが分かった。

確かに村を襲ってきたのは「人間」だった。

しかし、


「村を襲ったのは騎士達だったわ。

だから、私は騎士は嫌いだけど、普通の人間なら平気だわ!」


と少し強がってみた。


内心は、人間にもまだ恐怖心はあるけれどこれからは、人間にも会う機会も減るだろう、

と少し気を抜いてしまったので、


「あれ?力が入らない…」


といってその場に倒れてしまった。


どうやら、気を張っていたのでこれまでは平気だったようだが、気が抜けてしまった事で力が入らなくなったようだ。



「もう身体に力が入らないみたいだわ…せっかく助けてもらったけれど、私はもうダメみたいね…」


と乾いた笑いをした。


聖都での暴行は酷かったけれど、

 (なんとかなる!)

という強い気持ちを持っていたので表面上は何とか耐えていた。


しかし、気が抜けたことにより身体の中の異常が出てきたらしく、力が入らなかった。




マオウは、


「確かに、毎日あれだけ暴力を振るわれていれば身体の中は大変な事になってるかもしれないしね。

むしろ、ここまで生きていた方が不思議でもあるけど、獣人だから普通の人間とは違って頑丈なのかな?」


と呑気に話していたので、少しイラッとして、


「助けてもらっておいてあれだけど、もう見捨ててもらっても構わないよ?

私はあの牢屋で死ぬのだけは勘弁だったけど、ここで死ねるなら、本望だよ!」


とまたしても強がってみせた。

内心では、死ぬのはとても怖いしまだあの牢屋にいる子達を助けたいとも思っている。


しかし、マオウは


「助かる方法あるけど要らないの?」


と少しキョドっていた。


(いや、あるなら早く言ってほしいね!)


と先ほどの覚悟は消え去り、


「教えてくれ!」


とマオウに頼んだ。


「了解〜。」


と軽い返事をして頭に人差し指と中指を当てながら、念じているかのようなポーズをとり、


「あ、ワタル?いきなりで悪いんだけど村の外に来てくれない?

え?何、もう近くに居るの?

というか後ろを振り返れ?

あ…居た!」


と言い、マオウが振り返った。


私も何とか目線を変え、マオウが見ている方を向いた。


「どうも、こんばんは。」


とのんびりした感じの声が聞こえた。


周りには他に2人居て、1人は私と同じく獣人でもう1人は普通の人のようだったが、服装からしてどうやら聖都で見たことのあった聖女に似ていたので、聖女かなと思った。


私が何か喋ろうとしたが、


「あ、今は喋らなくてもいいよ。

必ず助けるから、安心して寝てていいよ?」


と優しく言ってくれ、マオウも、


「そうだよ〜。ワタルに任せれば安心だから、ゆっくり寝てて〜。」


とのんびりした声を最後に私は眠りに落ちた。

今回は、割とシリアスをメインに書いてみました。題名を見てわかるように1と書いたので続きます。というか、分からないことが多いと思うので次で説明します。どうかよろしくです!

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