〜異世界冒険記〜守りを固めてみた
いつもの日課を終わらせたワタルは少し村の様子を見て回ろうと考えて、そこで村の守りが甘いと感じたので、何か対策をしようと考えていた。
「温泉は無事に完成したけど、後は何か作ってみるものはあるかな?」
僕は少し悩んでいた。
エルから貰った箱はその人が頭の中に思い描いた物を作れるらしい。
実際に温泉も作ることが出来た。
一応箱は僕とマリが1つずつ持っているけど、どうやら僕達2人にしか使えないらしい。
試しにシャルに何か作ってもらおうとしてみたけど無理だった。
「まあ、エルから貰うときに僕達専用みたいな事を言っていたから分かってはいたんだけどね…」
たまに、エルはやらかすのでもしかしたら僕とマリ以外にも使えるようになっているかもしれない。
と少しエルを疑っていたので確認はしっかりしておこうと思って、シャルには手伝ってもらった。
ちなみに失くす心配はいらないようで、使わないときは自動でどこかに収納されているようで、使おうと意識すると自然に手のひらの上に現れる。
「確かに便利ではあるんだけど使い方を間違えると恐ろしいものが出来そうで怖くもあるんだよね…」
だから僕は悩んでいた。
何か作って今の生活を楽にしたいんだけど、作ろうとするものはほとんどがこの世界に無いものなのでそれをめぐって戦争なんか起こったら大変だし、今のこのほのぼのとした生活を続けられなくなってしまう。
「まあしばらくは使わないようしよう。」
僕は、そう決意していつもの日課をマリと一緒にしていった。
「さてと、いつもの日課も終わったしこれから何をしようかな?」
ちなみに、マリにはシャルの手伝いをしてもらっている。
あまり細かい事が得意ではないが、家の掃除や重たい物を移動させたりと力や体力を使う仕事なら僕よりも出来るので
(男として情けないが、もう慣れた…)
元気な時はシャルの手伝いを頼んでいた。
まぁ、元気じゃない時を見たことがないので1回元気のない様子を見てみたくもあり、そんな様子を見ると僕が平常心を保っていられそうにないから見たくないという2つの気持ちがある。
「まぁ、家には今はシャルとトモコさんが居るから、もし体調を崩しても平気だろうけどね。」
シャルとトモコさんは、本当に面倒見がいいのでマリもよく懐いていて、割と前ほどは僕にくっついてこなくなった。
それが少し寂しくもあるが、ちゃんと人間らしくなっていて嬉しくもある。
「僕もやれることをやっておこう。」
と少し村の周りを調べようと村の外に出た。
「やっぱりこの村って柵があんまりないから外からモンスターみたいなのが来たらおしまいだよね…」
村の周りを一周して確認してみたが、柵らしいものがなく、割と自由に入れてしまうことを再確認していた。
僕としてはもう少し柵をつけたほうが良いように思っているが、この村で生活していてモンスター等の危険な生物は見たことがなく、村の人達も付けようとはしていなかった。
でも、
「やっぱり何かこの村を守るものを作っておこう。この村に何かあったら僕は下手をしたらこの世界を破壊しかねない何かを創造してしまいそうだし…」
僕自身こんな考えをする様になるとは思っていなかった。
アニメや漫画の世界だと本当に守りたいものが出来た主人公なんかは割と世界を敵に回してでも守ろうとしていたが、僕も何となくその主人公達の気持ちが分かった気がした。だから、
「とりあえず村の周りを何かで囲おう!もし村の人に要らないと言われたらその時は消しちゃえば良いんだし。」
と作るものは決まった。
一応作ったものは簡単に消せる仕組みになっていて、作ったものに触れながら、
「消去!」
と声を出すと消える仕組みとなっていた。
ちなみに声の大きさに決まりはなく、小声でも消えるのでその点は良かった。
あまり大きな声で言うのも恥ずかしいからね。
「とりあえず作るものは決まったけど後は大きさと、どういう仕組みにするかだけど…」
と少し考えてみた。
柵と言っても色々あり、木の柵だと耐久力的に不安だし、かといってコンクリートみたいに固いもので囲えば耐久力的には良いけど景観を壊してしまうのでそれはあまりしたくなかった。
僕的には将来的にこの村の中に花でも植えようかと思っていて、その花を植えた先にコンクリの壁があると想像してみて、やっぱり何か違うと思ってしまった。
「それか、僕の見たこともないような物質を想像してみようかな。例えば、アニメなんかでは絶対に壊れない剣とかよくあるし。」
と日本で見ていたアニメを思い出していた。
確かにアニメなんかでは、見た目的に絶対に簡単に折れるだろうと思っている剣なんかでも特別な力で絶対に折れないから、とか神様から言われていた。
実際に本当に折れなくて当時の僕は、
「絶対におかしいよ!」
と思っていた。
その時はまだ小さくてよく考えずに物を言っていたが、少し成長した今なら、
「アニメはフィクションだからね…何でも有りなんだよ。」
と納得出来ていた。
しかし、ここはアニメみたいなフィクションっぽい世界であっても現実の世界である。
アニメみたいな事は普通は起こらないだろう。
でも、
「一応、これって女神のエルから貰ったからね。不思議パワーみたいなのがあるかもしれないし…」
これを貰ったのが普通の人ならこんな事は考えるだけ無駄なのだが、貰ったのが女神のエルなので、もしかしたら不思議パワーがあるかもしれない。
僕はそう思っていた。
「ハハッ、朝にあまり使わないようにしようと決意したばかりなのに僕って意志が弱いな〜。」
と自分の意志の弱さに少し呆れていた。
だが、まぁ守りを固めておかないと心配なので、結局は周りを囲むのだが。
「一応この世界、いやもしかしたら全く知らない未知の物質で作ることになるかもしれないから、エルすら知らないものが出来るかもしれないから自分の体調には気をつけていこう。」
と決意した。
この前の温泉はこの世界には無いけれど日本にはあった。
なので体調には変化がなかった。
でも、これから作るのは僕も知らない未知の物質だ、なので自分の身に何か起こっても不思議ではない。
少し緊張感が僕を襲った。
「まぁ作ってみないことには分からないから作ってみよう。」
とりあえず考えるのはやめて作り始めていった。
「まずは広さを決めようか。」
と、まずは広さを決めてみた。
僕の中ではドーム状みたいにして結界の様な感じをイメージしていった。
これなら上から攻撃されても防ぐことが出来るので良いと思った。
ただ、
「上を普通に覆うと中が暗くなって不便だしなぁ。
ガラスみたいにしても少しは見えちゃうし。
ならいっそ本当に見えないようにしてみようか。
試しにっと!」
とイメージを強くして、実際に作ってみた。
一応僕のイメージ的には野球場のドームをイメージして作ってみたのだが、
「本当に見えないけど出来てるのかな?」
少し不安になってしまった。
だって本当に見えなかったので、成功したか失敗したか分からなかったのだ。
ちなみに、作ったと思われる場所に触れてみても何も感触がなかった。
なので、
「なら、追加でこんな付与をしてみよう。」
そう思って、さっき作った結界に(もう壁ではなく結界に近かったので結界ということにした)新しく、
【敵意のあるものを中にいれない】
という付与をイメージしてつけてみた。
これが成功していれば、中からは自由に出ることが出来て、外からは敵意をもった人や攻撃なんかを中に通さないという、完璧な結界が完成したという事になる。
一応もしかしたら僕のイメージが足りないかもしれないので、
「とりあえずは、近くの石でも拾って村に投げてみようか。」
と石を拾おうとした。
結界作りが成功しているなら石は弾かれるはずだ、そう思って石を拾おうとした。
しかし、
「あれ?」
とそこで身体の力が急に抜けるような感覚に襲われた。
(やばいな、流石に無茶をしすぎたな…)
と少し後悔をしながらそのまま意識を失った。
「えっと、ここはどこだろう?」
気がついた僕はまだふらふらする身体を起こしながらそう言った。
すると、
「ワタル!」
と少し涙目のマリが抱きついてきた。
その後ろにはシャルとトモコさんも居て、とても心配そうに僕の事を見ていた。
「シャルの手伝いが終わったから少し村を散歩していたら、村の外でワタルが倒れているのを偶然見つけたから、慌てて家まで運んだんだ!」
とマリが言った。
本当に慌てていたようで、
「本当に心配したんだからね!」
と泣きながらマリは言った。
僕は少し反省をしながら、
「ごめんよ、マリ。
一応この箱の研究をしてみようと少し村の外であるものを作っていたんだ。
その時に少し無茶をしたみたいで倒れちゃったんだ。
シャルとトモコさんも、心配をかけてごめんなさい。」
と3人に謝った。
「いえ、無事なら良かったです。
マリさんが慌てた様子でワタルさんを連れ帰ってきたので、私もかなり心配をしていたのですが、無事に目を覚まされて良かったです。」
「本当にねぇ。
私も心臓が止まるかと思ったよ。
今度からは気をつけてね。」
と2人にもかなり心配をかけてしまったようなので、
「はい、今度からは気をつけます。」
と僕は言った。
「ワタル、もう平気なの?」
とマリがまだ不安そうに聞いてくるので、
「もう平気だよ。
少しふらふらするけどもう少し休んだら動けそうだよ。」
と僕が言うと、
「なら良かったよ。
本当に今度からは気をつけてね!」
止まるかとマリからも注意されてしまった。
マリは割と後先考えずに行動していたが、それは僕も同じだったようだ。
そう思って、
「分かったよ。
今度は少し無茶をしそうなときは1人ではしないことにするから。」
とマリに伝えた。
マリはやっと安心したようでやっと離れてくれて、
「それで、ワタル。
箱の研究で無茶をしたって言ったけど。
何を作ったの?」
とマリが聞いていた。
僕は説明をしたかったがまだ少しふらふらする感じがしていたので、
「ごめん、マリ。
まだちょっとふらふらしてるから後で説明するよ。
今はちょっと寝かせてくれない?みんなにもチャント後で説明するから。」
と3人に伝えた。
「ちゃんと後で教えてね!」
「分かりました。それではゆっくりとお休みください。」
「ちゃんと寝てるんだよ?」
と3人に言われた。
トモコさんからは少し注意をされた感じになってしまったが
(まぁ倒れてしまったので当たり前なのだが)
3人共ホッとしたように部屋を出ていったので、僕は布団を自分にかけてそのまま少し眠った。
「ねぇ、ワタル。村の外に向かってるけど、いったい何を作っていたの?」
とマリが聞いてきた。
ちなみに、僕の体調はすっかり良くなった。先程倒れてしまったのは、どうやら一気に体力を持っていかれてしまって倒れたらしい。
寝て起きてからご飯を食べたらすっかり元気になったので僕の予想は当たっているだろう。
今度からはあまり無茶をしないでおこう、3人にあまり心配をかけたくないし、せっかくマリが僕以外の人にも懐いているのにこれ以上心配をかけると、1日中離れなくなってしまいそうだし。
僕は今度こそはキッチリとこの決意を破らないようにしようと固く自分に誓った。
そして自分に誓い終わってから、さっきのマリの質問に答えていなかったので僕は、
「作っていたのは結界なんだよ。
外からこの村を見ていて、少し無防備すぎるからやっぱり多少は何か守りがあったほうが良いと思ってね。」
と答えておいた。
「さあ、着いたよ!」
と僕が言ってみるが、
「どこにもその結界?
というものが見えないのですが?」
とシャルが聞いてきた。
まぁ僕が見えないように作ったから当たり前ではあるんだけどね。
「その結界は見えないようにしてあるんだよ。
見えるようにしたら、村のみんなが驚くと思ったからね。
質問されても困るから見えないようにして隠してあるんだ。」
と僕は説明した。
しかしマリは、
「本当にそんなものあるの?見えないから分からないよ…」
と言ってきたので、
「僕も本当に成功したか分からなかったから、近くの石でも投げて確かめようと思ったんだけど、確かめようとして石を拾おうとしたら倒れちゃってね…」
と自分の頬を触りながら言った。
「なら私が確かめてみる!」
と言って石を拾って投げようとしていた。
「ちょっと待って、マリ。
この結界は中から投げてもそのまま通しちゃうんだよ。
だから、結界の外から試してみて欲しいんだ。ちなみに、投げるときにはそこに結界があると思って投げてね。
そしてそれを壊すつもりで投げてほしい。」
とマリを結界の外に連れて行きながら、少し条件をつけていた。
(マリはこの村に敵意を抱くはずがないので、そのまま投げてしまうと多分、結界は発動しないでそのまま石が進んでいってしまうだろう。
なので少し条件をつけさせてもらった。
これなら敵意のある攻撃とみなされて、結界が発動するはず。)
と僕はそうマリに伝えた。
ちなみに、連れて行くと言っても今マリのいる場所から1歩2歩、歩いた程度なのだが。
「多分この辺りに結界があると思うんだ。
成功しているなら石は、その結界の位置で止まってそのまま下に落ちるはずだよ。
失敗してたらそのまま、まっすぐ進んで行っちゃうから2人は少し離れてて。」
とシャルとトモコさんに少し道を開けてもらった。
これでもし結界を作るのが失敗していても誰も怪我はしないだろう。
「それじゃあ、投げるよ?えい!」
とマリが力いっぱい石を投げた。
マリの本気の投擲は本当に早くて目で追うのがやっとだった。
(これが当たったら僕の頭は真っ赤になるだろうな…)
と実験とは関係ないことを考えていた。
なので少し反応が遅れてしまった。
「おお〜凄いや〜!」
とマリの驚く声で我に帰り、石の飛んでいった方を見てみた。
「これは何と表現すれば良いか分からないのですが。」
「ああ、そうだねぇ。これはちょっと表現の仕方が分からないねぇ。」
と少し離れたところで見ている2人も驚いていた。
僕は石の様子を眺めながら、
(よし!ここまでは順調だ。
後はそのまま勢いがなくなって落ちれば成功だ。)
と僕は思っていた。
石は僕がちょうど結界を作った位置で止まっており、勢いはあるが位置は変わっていなかった。
後はその勢いがなくなっていき、そのまま落ちれば結界の作成は成功だ。
(頼む、成功していてくれ!)
と僕は祈っていた。
その祈りが通じたのか、石は次第に勢いがなくなりそのまま地面に落ちていった。
「よっしゃー!」
僕は思わず声を出しガッツポーズをしていた。
マリたちも驚いたようで、
「すごいね〜!ホントに結界みたいに中に入らなかったよ〜。」
「本当に素晴らしいですね。
これがあればもし外から攻撃されても、村は安全ですね!」
「本当にあんたは凄いものを思いつくねぇ〜!」
と3人とも思い思いの感想を口にしていた。
「これで村の守りは心配要らなくなったよ。
これで村で安全に暮らせるね!」
と僕も成功した喜びを味わっていた。
本当なら攻撃手段も作りたかったが、別に戦争をしたいわけでないので今は作らないでおこう。
僕はそう思っていた。
「こんな物を作れるなんてワタルってやっぱりすごいね!」
とマリが褒めてくれたので嬉しくなり、
「ありがとね!」
と照れ隠しでマリを撫でた。
これで結界がちゃんと出来ているかの確認も出来たので僕は満足して、
「これで確認は終了だね。今日は疲れちゃったからみんなで温泉に行こう!」
とこの前作った温泉にみんなで行こうと提案した。
一応疲れは寝たり食べたりしてとれてはいたが、何となく風呂に入りたい気分になっていた。
「行く行く〜!」
「そうですね。私も今日は疲れていて、温泉に行こうと思っていたのでちょうど良かったです。」
「そうだねぇ、私もちょっと今日は精神的に疲れちゃったから久しぶりに大きい温泉の方に行こうかねぇ。」
と3人共来てくれるようだった。そこでちょうど僕のお腹が鳴り、
「その前に晩御飯だね…ハハッ。」
と僕達は笑いながら4人揃って家に帰っていった。
つづく
今回は割とワタルがチートみたいな事をしましたが、次回はほのぼのとした感じを書いていきたいです。今日は少し出かけていてあまりいいネタが思いつかなかったので少しはっちゃけてみました。明日も投稿する予定ですので、明日もお楽しみに〜では!