タンマ・ウォッチ
空想科学詩シリーズ三作目
もしもあなたが時を止められたら何をしたい?
なぁに、心配は要らない、少し時計の針を止めるだけ
世界で動けるのはあなただけ
何でもできる、何でもできるんだよ
もしかしたらこの世界のどこかで事故が起きる瞬間に止まっているかもしれない
あなたは一人で怪我人がでないように人々を動かせる
時を戻したらあらま不思議
瞬間移動してましたなんて勘違いするかもしれない
それを見てほっとあなたは胸を撫で下ろす
もしかしたら悪いことだってできるかもしれない
なにせ防犯カメラにもあなたは映らない
ちょっと出来心で万引きをなんてするかもしれない
時を戻したらあらま不思議
いつの間にか商品がきえている!?
警察もお手上げ、完全犯罪の成立だ
時を止めれば何でもできる
あなたが世界で独りだけ
動くことができるのだもの
良いことも悪いことも
やるかどうかはあなた次第
けれども使いすぎには注意だよ
モノはいつか壊れるもの
このタンマ・ウォッチだっていつかは壊れる
もしかしたら時を止めている最中に壊れるかもしれない
そうしたらあなたは二度と世界に戻れない
少しずれた異世界で
あなたはずっと独りだけ
孤独に生きて孤独に死んで
魂もその世界から抜け出せず
永遠の苦しみを感じるかもしれない
だから私はタンマ・ウォッチなんて欲しくない
異世界にも行かず
ただこの世界の毎日を
しっかり生きてしっかり歩んで
みんなと共に笑えたらいいな
孤独な時間なんて要らないんだ
タンマ・ウォッチなんて要らないんだ




